Tさんは十一月生まれの 年女で八十四歳になる。小柄でおしゃれ薄っすらと化粧されて七十台に見える。頭もしっかりされており、自力で通ってこられる。若い時は電話の交換手をしていたと言う。もうね、自動になったから仕事ないのね。昔の職場は機械ばかりになって入れてくれないと駅前の窓の少ないNTTビルの話をされる。電話交換手はほとんどが女性、仲の良い仲間がたくさんいたようで懐かしそうに話をされる。在の人なのだが、父親がお前は映画が好きだから町の仕事が良いと電話局に勤めたらしい。その頃は女性の仕事としては働きやすい良い職場だったらしい。
十歳ばかり若い私は電話交換手といっても、国際電話などの時に話したくらいでお世話になった記憶はあまりないが、通話の接続や切り替えをしていたのだろう。今度受診の際に聞いてみよう。
しかしまあ、電話の通話接続などはそれこそコンピュータで自動化しやすい仕事で真っ先に自動化が進んだ分野だろうと思う。おそらくかなりの数の交換手が仕事を失っただろうと思うのだが、さほど話題になった記憶がない。うまく配置転換されたり雇用を止めたりして処理されたのだろう?。今は窓の少ないNTTビルの中では数人の監視員が画面を見て機器の管理しているのだろうと想像する。重さや形のない通信と違うけれども分配は同様の論理回路で可能なのでアマゾンなどの通販の分野も人海戦術でなく、ロボットによる自動分配が導入されている。日本は自動化が遅れているようでまだ外国人労働者による人海戦術のところも多いらしい。残念ながら半世紀前の電話交換手と違い楽しい職場ではないようだ。
気が付かないうちに色々な仕事が自動化機械化され、人間の出番が減っている。街中の医療は機械化しにくい仕事も多いのでさほど厳しいとは感じていないが、それでもキーボードが打てなくては仕事ができなくなっている。最先端の病院ではずいぶん変わっているのだろうと思う。一番遅れているのは政治の分野だろう。しかしこの分野ではそれが人間的で懐かしく良いこととは言えない感じがする。