教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

空中戦の空気感

2009-08-16 00:01:34 | オタネタ全般
はるかな過去の時代、1960年代ごろからだろうか。
アニメには空中戦や宇宙戦が多く取り扱われてきた。
それは戦時下においての航空戦力や制空権の重要さから考えれば、現代や近未来の戦場を描こうとしたとき、空中戦や宇宙戦を取り扱うものが多いのは半ば当然といってもいい感がある。

ところがどっこい、空中戦や宇宙戦をイイ感じに描くのは意外に難しい。

なにが難しいかっていうとだ・・・。
空気感を出すのが意外に難儀するのだ。

陸戦や海戦では、キホン的には2次元平面上で戦うことになる。
だから水平面上の部隊展開だけを考えれば良い。
潜水艦ならば少しだけ縦方向の移動もありうるが、それでも深さ数100mに対してヨコ方向はその100倍くらいの作戦域が描かれているので、さほど平面上で戦うのと変わりはない。

ところが!

空中戦や宇宙戦はそうではない。

航空戦にしても、インメルマンターンやひねりこみなどの縦方向の技があることからも、パイロットは3次元空間上での戦いを頭に入れておくのは当然だ。
宇宙戦にいたってはタテとヨコの区別すらない。
3次元空間上を縦横無尽に機動して戦う姿を描く必要があるのだ。

ところがそうでもない作品もある。
ある、というか、むしろそっちのほうが多い気がする。

名前は出さないが、宇宙空間での艦隊と艦隊の戦いにもかかわらず、なぜか両方ともヨコ方向にしか部隊が展開しないような作品もある。
仮に前方投影面積を最小にして敵弾に当たりにくくするならば、奥行き方向へ線状に1列に並ぶべきだ。
仮に前方投影面積を最大にして全火力を一斉放火できるようにするならば、タテもヨコも使って面状に並ぶべきだ。
だから、ヨコ方向にしか部隊が展開しないというのは陣形としてあまりにもムダが多い。

その手の作品は海戦のイメージをそのまま宇宙空間に持ってきただけなので、どうやったってイマイチ空気感が出ない。
そう、空の広さや宇宙空間の広大さを感じられないのだ。



宇宙空間での艦隊の陣形にはどのようなものが考えられるだろうか?

宇宙戦艦の構造が上半分と下半分で全然違う構造になっていたとして考えてみる。
たとえば多くの作品のように、下半分は居住区になっていて武装がほとんどなく、上半分は大口径の砲台がたくさんついていて装甲も厚い、そんなのを想定しよう。
そうすると、少なくとも一方からの攻撃に極端に弱くなるような平面的な陣形はよろしくないのは明白だ。

どうするのが良いのかには議論の余地があるが・・・
たとえば円筒状に配置して、内側に居住区を向けて外側に砲台を向けるという陣形も十分アリだと思う。
少なくとも平面的な陣形よりは防御に強い。
だが当然ながら3次元空間での立体的な配置を強いられてしまう。

話が脱線しそうなので、これはこれでここまでにしとく。



この問題は、描き手のアタマのなかがどうなっているかに強く依存する。
人間には、アタマのなかで3次元空間で考えられる人と、2次元平面でしか考えられない人の2種類に分かれる。
2次元平面でしか考えられない人は、3次元の座標でしか表せないような物体の軌跡をアタマで描けないように見える。

たとえば。
ドーナツに円錐を刺したとき、円錐が刺さっているドーナツの面がどんな形をしているかを何となくだいたいアタマで思い描ける人ならば、恐らく3次元空間の把握力は比較的高い。
逆に、ドーナツを中央を通らないどっかの面で縦方向にスライスしたときの断面を思い描けないようであれば、恐らく3次元空間の把握力の訓練が足らん。

これは技術屋にとっては重要な能力だ。
たとえば流体を流したとき、ハコの中でどんなふうに流体が動いて冷えていくかを考えなければならないとしたら、どうやったって3次元空間でモノを考えざるを得ない。
そうでなければ、教科書的なカンタンに平面に図示できるような構造でしか立案できはしないのだ。

そんなのを考えるのがイヤな人は工学部にはそうそう入ってこないだろうから、工学系の職業の人はたぶん3次元空間の把握力がある人の率が高いだろう。
だが、これは別に理系に特化した能力ではない。
美術系の彫刻やっている人たちならば、きっとこの能力は極めて高いに違いない。
そういう人たちが空戦を考えたならば、3次元空間で機動的に動くドッグファイトをイメージできるに違いない。
ところがそういう作品はたくさんあるとは言いがたいのも事実だ。



もちろん世の中には、3次元空間の把握力がある人がラフスケッチを書いたと思われる作品もある。

GONZOのストライクウィッチーズやラストエグザイルやサムライ7はそういう面で非常に良くできていた。
世の中には、がんばって3DCGで宇宙戦艦を描いたのに戦闘は2次元平面上でしか行われないような、そんなガッカリ作品もあるというのに、それと比べたらGONZOには遥かに腕前がたつヤツが入っていたに違いない。
さっきのヤツらにストライクウィッチーズの戦闘シーンの空気感を見せてやりたいくらいである。

こういった把握能力は生まれつきの差もあるのかもしれない。
だが訓練による改善度合いはかなり大きいと思う。
学校に通ったことがないひとならば2ケタの足し算を暗算で解くことはできないが、訓練すればそれくらいなら誰でもできるようになる。
それと同じことだ。