教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

アイマスXENOGLOSSIA 課長の時計

2009-08-22 00:08:19 | オタネタ全般
かの悪名高いアイドルマスターXENOGLOSSIA。
とりあえずその作品の是非についてはここでは語るまい。

本日ここで注目したいのはその中で出てくるとある小物について。
第2話でジョセフ真月の持っていた懐中時計についてである。

いったいなぜ、わざわざそんな小物に注目するのか?

なぜなら、その時計はかなり高額なシロモノと見たからである。



まず例の懐中時計、1秒に1回くらいづつ針が動くしくみになっている。
そこいらにフツーにある水晶振動子とステップモーターを使ったクォーツ式の時計ではそれがあたりまえだ。
これは、あまり頻繁に針を駆動しているとステップモーターでエネルギーを消費しすぎてしまい電池交換サイクルが長くなるから、とりあえず1秒に1回という仕様で作られていることに由来する。

ところが!

音を聞いてほしい。
よくよく聞いてみると、1秒に4回くらい、
「チッタッチッタッ・・・」
と音が聞こえてくるのがわかる。
これは典型的な機械式時計(たとえばクラブツース脱進機)の音に他ならない。

クラブツース脱進機などの機械式時計では、入ヅメと出ヅメが交互にガンギ歯車にかみ合い、そして針が1ノッチづつ進む。
入ヅメの当たる音と出ヅメの当たる音は聞いてみるとビミョーに違う。
それが
「チッタッチッタッ・・・」
という音の違いに現れる。

逆にクォーツ式の時計の時計ではステップモーターを回す音だけが聞こえるため
「チッ   チッ   チッ   チッ   」
という音として現れる。
このことから、課長の時計はクォーツ式ではないことは明らかだ。

では、いったいなぜ1秒に1回づつ針が動く仕組みになっていたのだろうか?

これはジャンピングセコンドと呼ばれる複雑時計の技法の一種だと推測される。
中でギヤが数ピッチ進むと突然動くような仕掛けが追加されている。
こういった構造はかなり珍しいし、もし持っていたら時計オタに自慢できるレベルのマニアックさだ。



それからもう1つ言うことがある。

時計の文字板を見てほしい。
何だかわからんような○が動きそうな感じになっている。
これはムーンフェイズという典型的な複雑時計の技法の一種である。

ムーンフェイズとは月齢をモニタするための機能の一種である。
ふつうの人には特に必要ない機能で、あえて言えば天文観測が趣味の人とか釣りが趣味の人とかくらいにしか関係ないのだが、この機能は機能がある時計を身につけることそのものを目的として埋め込まれるケースが多い。

ちなみに安い中国製の機械式時計にもムーンフェイズがついているものも多数あるが、ほとんどは単に24時間で1周するだけで昼か夜かがわかるだけの、なんちゃってムーンフェイズなだけでしかない。
しかし課長の時計はきっかり24時になってもムーンフェイズは真正面に来ていない。
このことから、課長の時計はマジメに作られたムーンフェイズであると推測される。



昨今は趣味的な意味で機械式時計がもてはやされている。
わたしもけっこう好きなほうだ。

しかし、そんな中でも腕時計がほとんどであり、懐中時計はほとんどない。
なおかつ複雑技巧を施した懐中時計なぞ極めて少ない。

ということは、課長の時計は19世紀か20世紀初頭の懐中時計全盛期のころに作られた、アンティークとして価値のある部類に入る時計ではなかろうかと推測される。
ちなみに我が家にも1910年頃に製造されたスイス製の懐中時計があるが、とても課長の時計のような複雑時計の足元にも及ばない、ただの単機能の時計でしかない。

20世紀に入ると時計も大量生産の時代を迎える。
だが、それ以前は時計職人が歯車から何からすべて手作りで作っていた。
20世紀以降のものは文字板にメーカー名が入るのがフツーだが、それ以前のものはメーカー名など表には出ず、フタを開けて分解掃除したとき初めて時計職人の名前が拝めるというものが一般的である。

なお、現在でもスイスの時計職人に時計を1からオーダーすることは可能である。
しかし最低でも400万円はかかる。
場合によっては1000万円以上の値段がつく。
腕利きの職人を何ヶ月も拘束して世界で1つしかないものを作らせるのだから、ある意味べらぼうに高額なのはしかたがないかもしれん。
(ちなみに、日本で腕利きの技術屋を時間割で借りてくるとなると、1時間あたり1万円くらい請求される。)

そして課長の時計にも文字板にメーカー名は入っていない。
これが何を意味するかはお分かりいただけるだろう。