教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

数式の限界

2009-12-25 00:00:45 | 科学
わたしは中学のころから理系科目だけ得意で、文系科目は目もあてられないほどダメダメだった。
そういうわたしはそのまま大学で理系の学部に進み、いまは技術屋としてやっている。

そういうことを言うと、よく文系の人からは
「数式とか計算とか得意なんでしょ?」
みたいなことを言われる。

ところがこれが得意でも何でもない。

計算方法を考えるのは得意だと思う。
だが、算数みたいなただの計算は大の苦手だ。
計算だけだったら公文ならっている小学生のほうがうまいかもしれない。
わたしが自分で計算をやると高頻度にどっかで間違うから、常日頃から計算そのものは文明の利器(エクセルとか)を使うようにしている。

数式も得意とは言いがたい。
数式を使わないと表現できないからしかたなく道具として数式を使っているだけで、本来的に数式が得意というわけではない。

これはわたしだけが特別なわけではない。
技術屋に一般的にあてはまる性質だと思う。
数式とか計算とかが得意な人が技術屋なわけではなくて、現象を見たときにその仕組みを理論だてて頭の中でイメージするのが得意な人が技術屋なわけだ。



それはさておき。

世間の技術書を開いてみると、そこかしこに数式が書いてあって開いただけで頭痛くなってくるような本が多い。
特に大学の先生が講義で使うために書いた本とかはそんなのが多い。

その手の本では
「この○○と××の関係は以下の式で表される」
みたいな表現を使って、それで文章による解説を省略している本がかなりある。

こういう本はダメな本だ。
技術屋は数式は得意ではない。
だから、数式を眺めて変数の位置をたしかめて、それから物理イメージを逆算して頭のなかでシミュレートして考え、その数式が出てきた根拠となる原理を探ろうとする。
数式を見てそこまでできなければ、技術屋がその本を読んでも理解できない。
仮に理解できたとしても、そこまで回りくどいことをしなければならないために、解りにくくて著者に対してイライラする。

世の中にはそうではない本もある。
数式がたくさんのっていても読みやすい本もある。
例えば「高速信号ボードの設計」(※1)などがそうだろう。

この本は数式がたくさん出てくるが、基礎学力がある者ならちゃんと読めばちゃんと解る。
構造がどうなっていて、そこでどういう現象がおきていて、だからどういう結果がおきているか、そこまでを文章でみっちり説明してある。
だからちゃんと読めばその後に出てくる数式が必然的に出てきたことを理解できる。

本来、技術書とはこうあるべきだと思う。
数式だけ書いて
「数式を見れば理解できるはずだ!」
的なノリで文章による解説を放棄する著者は、人様にカネ出して技術書を買ってもらう資格はない。



また、この事実はある種のことを意味するかもしれない。
すなわち、数式による表現の限界というものに。

数式だけでは物理イメージを理解しにくいこと甚だしい。
かといって文章だけでは厳密な表現にはならないし、計算としての道具にもなり得ない。

ひょっとしたらUML(※2)の表記法をマネて数式に代わる表現を創ることができるかもしれない。
しかし仮にできたとしても、数式1行分が紙1枚くらいの場所を占領することになりそうなことは明白だ。
これはこれで単体では使いにくい気がする。

なにか数式表記によるデメリットを克服するような新しい表記方法がないものかと常々思うのだが。



【※1 高速信号ボードの設計】

ハワード・ジョンソン
丸善株式会社
各々8000円

高速信号ボードの設計 基礎編
ISBN978-4-621-07862-4

高速信号ボードの設計 応用編
ISBN978-4-621-07863-1



【※2 UML】

下記サイトなど参照のこと
http://www.asahi-net.or.jp/~DP8T-ASM/java/uml/index.html