鎌田実医師のエッセイの中で
「Sフロイトは、愛する者と仕事があれば、どんな困難も乗り越えられると言った。
東日本の被災者は、まさに、この両方を失っている」という一説があり、心に残った。
フロイトは晩年、「正常な人間がよくなすべきことは何だと思いますか?」と問われて
そっけなく答えた。「愛することと、働くことだ。」
フロイト理論の継承者E・H・エリクソンの解釈は、ライフワークバランスを示唆している。
「彼が愛することと 働くことと言ったのは、人間が性器的な生き物であり、
かつ人を愛する存在であるという権利もしくは能力を失うほどに
一般的な仕事の生産性が個人を占有してはならないことを意味したのである。」
( E.H.エリクソン著、仁科弥生訳『幼児期と社会Ⅰ』 1977 より引用)
私の勝手な解釈は、鎌田先生の解釈に近い。
愛する者がいるということは、
男女の愛 親子愛 師弟愛 隣人愛 愛国心 その他の愛の対象との交流が期待できること。
仕事があるということは、そこに自分の活動の場があるということで
存在を肯定し認められる達成感が期待できること。
家事を通した役立ち感かもしれないし、現金収入や昇進や、
歴史に名を残す名誉や賞賛の言葉かもしれない。
謙虚な人の、誰も知ることのない自己満足の達成感かもしれない。
精神の病気の有無に関わらず、人はこういうものに明日の希望を重ねるんじゃないかと思う。