今、世界は二つの大きな潮流がせめぎあっています。軍事の力と平和の力です。
「軍事の力」派の中心は、際限のない軍事的挑発を繰り返しているアメリカと北朝鮮です。そして残念なことに被爆国日本の安倍政権はこの片割れとなっています。
「平和の力」派の中心は、今年7月7日、国連で採択された核兵器禁止条約であり、これに賛成した国連加盟国193カ国中の122カ国であり、その推進力となった国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)であり、そしてこの力の源泉は被爆地であり、被爆者のみなさんの事実にもとづく叫びだったのです。今や、この平和の運動が世界を動かすもう一つの潮流となっていることを示したのが10月6日のICANへのノーベル平和賞授与だったのではないでしょうか。
[1、軍事の力]
日本では、安倍首相の「北朝鮮の挑発」「世界中で圧力を」「国難突破」などの叫び声だけが大きく聞こえてきます。明日にも北朝鮮のミサイルが飛んできそうです。声高なスピーカーに惑わされて世界の潮流を見失ってはなりません。
アメリカ・トランプ政権も北朝鮮への圧力強化に躍起です。政治的、経済的、軍事的な圧力強化。とりわけ危険なのは軍事的圧力強化であり、偶発的な核戦争さえ引き起こしかねない状況になっています。
この危機を増幅させているのが北朝鮮の核とミサイルの開発ですが、同時に、アメリカの軍事的脅迫も凄まじいものがあります。韓国聨合ニュースによれば、16日から20日までの予定で韓米両国の合同軍事演習が始まったと報道されています。
これには、米原子力空母など約40隻の軍艦が参加し、戦闘攻撃機、攻撃ヘリ・アパッチ、高機能偵察機ジョイントスターズなど、最新鋭の軍事力が投入されるという。「原子力潜水艦には有事の際に敵の首脳部を排除するいわゆる『斬首作戦』を遂行する米特殊部隊の要員らも搭乗しているとされる」(聨合ニュース)。
[2、人間の常識]
私には理解できないことがあります。
それは、北朝鮮の核開発をこれほどまでに激しく糾弾しているアメリカ・トランプ政権や日本の安倍首相が自国の膨大な核兵器や「核のカサ」を「縮小しよう」と言わないことです。
122カ国の賛成で採択された国連の核兵器禁止条約にすら賛同しないことです。
「お前は核を持つな!」「開発するな!」「いつでも斬首できるんだぞ!」と強大な軍事力で脅す、なのに自分の核兵器は増強を続けている⁉
率直に言って、これはヤクザの論理ではないでしょうか?
両国の軍事力の威嚇競争、この結果の偶発的な戦争、核戦争の危機すら目の前に迫っています。
その結果は、北朝鮮をアメリカが支配するのかどうかにかかわらず、2500万もの北朝鮮民衆とそれに匹敵するだろう韓国民衆の惨禍です。
私たちは絶対に、この無謀で愚かな戦争を許してはなりません。
まして、日本がこの戦争に手を貸すことがあってはならないのです。
[3、平和の力]
平和のための努力は世界中に広がりつつあります。
平和のために私たちができることは無数にあるのです。
「認識不能なまでに黒ずみ、膨らみ、溶けた肉体の塊となり、死が苦しみから解放してくれるまでの間、消え入る声で水を求めていた、4歳のおいの姿が脳裏によみがえる」。
これは今年3月の核禁条約交渉会議で、広島の被爆者でカナダ在住のサーロー節子さんが英語で証言したものだそうです。(朝日新聞2017年10月8日版より)
こうした非人道的な核の本質をまなび、広げることは大きな力となることでしょう。
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が昨春から始めた「ヒバクシャ国際署名」の運動は、今年の9月末までに515万の署名に達したそうです。2020年までに世界で数億人まで増やすのが目標だそうです。
福島などの「3.11ヒバクシャ」の間でも、交流・支援・連帯の運動が始まりつつあると聞いています。
1946年の設立以来、戦争や内乱、テロの激増の下で、世界中の難民の子どもたちを救済し続けているユニセフ(国連児童基金)の活動も広く支持されているのではないでしょうか。
これら一つひとつの活動が、「軍事の力」に対抗する「平和の力」として世界の潮流となりつつある、これは私たちに大きな勇気をあたえてくれるものです。
まずは、被爆国日本こそが「軍事の力」から「平和の力」に目覚め、核兵器禁止条約を積極的に担うように努力していきたいものです。
(この稿 完、20171018)