これを氏が書いたのは1982年だから、今から40年も前。
ちっとも古くなっていないことに驚くばかりです
この小説の中で、戦争とは何かが語られる。さまざまの役回りそれぞれに主人公らしき登場人物がいて、その財界側代表のような人物の伍代財閥総帥伍代由介が、戦後に戦争を振り返って次のように語る。戦争を推進した張本人の一人だった彼が
「アメリカもどうせ勝てるものを、馬鹿なことをしましたね。原爆を使うまでは、殺人者は枢軸国だと言えぬこともなかった。原爆2発落として、強力無比な武器を持っていると威張ってみて、何になります。彼らは、新しい殺人方法を試してみたくて、何十万という人間を一瞬にして殺した殺人鬼ですよ。これで、ファシズム打倒の大義名分が、値打が半分以下になりました。なに、殺人鬼同士の殺し合いですよ。戦争てのは、結局そうなるんですね。はじめは正義と邪悪の対立が確かにあった。だが、終りには邪悪同士の殺し合いに過ぎません。こういう手合が押しつけてくる民主主義とやらは、どんなものでしょうかね、お嬢さん・・・」