風が吹き、湖面に波が出始めた。
もうそろそろ帰港する時間だ。
作業を支援してくれている漁船が大きく揺れ始めた。
あまり長く待つことはできない。
しかし男はまだ浮上してこない。
女はコーヒーカップを置いて、ソナーを用いて湖底を探査し始めた。
「何、これ?」
今まで見たことがないような画像だ。
湖底から大量のガスが噴き出ている。
メタンガスなのだろうか。
もう少しきちんと調べる必要がある。
そう思いながら、好奇心が湧き上がってくるのを感じた。
確かにこの湖は面白い。
この場所に湖ができてから40万年を経た、という歴史の長さを感じさせる。
「男が浮上した」
船長から連絡が入った。
「OK、今行く」
そう応えて、キャビンから甲板にでた。
水面にぽっかりと頭を出して、男が手を振っていた。
今日の作業は終わりだ。
そう決断して、女は男のためにはしごを下した。