DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

夢(69)

2014-03-21 16:56:15 | ButsuButsu


J.D.SalingerのFranny and Zooeyという本を読んだ。

村上春樹の翻訳だということで、期待していた。

フラニーのほうは、思ったほどうまい訳ではなかった。

少々がっかり。

大体、サリンジャーの英語は難しい。

途中に挿し込まれる文章が多い。

訳しにくいのだろう。

ズーイの訳の方はずっとましだった。

つまり文学的という意味でだが。

さて、フラニー(女性)とレーン(男性)という恋人同士の話。

***

「君の大学の英文科にはなにしろ、この国でもっとも優れた二人の教師がいる。マンリアスとエスポジートだ。連中がここにいてくれたらなと思うよ。まったくさ。少なくとも彼らは詩人なんだ。何といっても」

「彼らは詩人なんかじゃない」とフラニーは言った。

「それがめげちゃうことのひとつなのよ。私が言いたいのは、本物の詩人じゃないってこと。彼らは詩を書いているし、あちこちに掲載されたり、アンソロジーに収められたりしている。でも彼らは詩人とは違う」

彼女はふと我に返ったように、そこで話をやめ、煙草を消した。

彼女の顔からだんだん血の気が引いているようだった。

(中略)

「もちろん喜んでこんな話はやめるさ。それこそまさに望むところだよ。でもよかったら、その前にひとつ教えてくれないか。本物の詩人ってどんなものなのか。僕はそいつが知りたいんだ。とても」

フラニーの額の上の方に微かに汗が光った。

ただ単に部屋の温度が高かったからかもしれない。

あるいは胃の具合が悪くなっていたからかもしれない。

あるいはマティーニがいささか強すぎたのかもしれない。

いずれにせよ、レーンはどうやらそこまで気がまわらなかったようだ。

「本物の詩人が何かなんて、私は知らない。この話はもうやめましょう、レーン。お願いよ。気分がすごく悪くて、おかしな感じなの。私はとても―」

「わかった、わかった。もういいよ。リラックスするんだ」

とレーンは言った。

「僕としてはただ―」

「私にわかってるのは、ただこれだけ」

とフラニーは言った。

「もしあなたが詩人であれば、あなたは何か美しいことをしなくちゃならない。それを書き終えた時点で、あなたは何か美しいものを残していかなくちゃならない。そういうこと。でもあなたがさっき名前をあげた人たちは、そういう美しいものを何ひとつ、かけらも残してはいかない。彼らよりいくらかましな人たちなら、あなたの頭の中に入り込んで、そこに何かを残していくかもしれない。でも彼らがそうするからといって、何かの残し方を心得ているからといって、だからそれが詩であるとはかぎらない。それはただの、見事によくできた文法的垂れ流しかもしれない。表現がひどくてごめんなさい。でもマンリアスとエスポジートも、気の毒だけどみんなその類いよ」

***

わかりにくいのだが、本物の詩人とは、詩を書く人間とは限らない。

そう言いたいのか。

サリンジャーらしい表現だ。

できることならば、私も本物の科学者として生を終えたいと願っている。
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3月20日(木)のつぶやき

2014-03-21 05:21:35 | 物語
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