DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

謎(10)

2014-03-16 00:43:03 | ButsuButsu


暗闇の中で女は椅子に腰かけていた。

静かに語っている。

「この世の中が数値の世界になり、多くのことが忘れられてきた」

デジタルがアナログにとって代わり、コンピューターが支配する世界になった。

そのことによって穴あきだらけの空疎な世界となった。

簡単にフェイクを作れるようになったし、誰れもが現実を大事にしなくなった。

本当の世界は、決してデジタルではない。

デジタルは一つの表現方法だが、決して完ぺきではない。

にもかかわらず、みな便利なデジタルの世界に浸る。

そのほうが制御しやすいからだ。

「彼らは、自分たちで世界を変えようとしている」

そんなことできもしないのだが、できると思い込んでいる。

予測はあくまで予測で、真実ではない。

知りたいのは真実だ。

正しいかどうかではない。

おかしな話だ。

自分たちが作った規則や約束にがんじがらめになり、真実を見逃していく。

何べんも説明したが、だれも受け入れてくれなかった。

「何が起こっているのかを知る必要があるのです」

多くの事実を積み重ねて、やっと真実の入口に立てる。

真実を知るのは簡単なことだ。

隔てている壁を壊せばよい。

ただ権威で身を飾りたてた人々は、壁を壊すことができない。

壁があるから自分が守れ、利益を享受できる。

壁がなくなると、ただの人になる。

「愚かなことだ」

女は立ち上がり、部屋から出ていく。

湖では、男が奮闘している。

大切なことは、真実を知るという行為だ。
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3月14日(金)のつぶやき

2014-03-15 05:22:35 | 物語
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謎(9)

2014-03-14 17:20:08 | ButsuButsu


春には冬の重しが取れて、湖面には華やいだ風が吹く。

何か頑張って仕事をしたくなる季節だ。

そんな季節を、男は好んでいる。

2010年4月25日から28日にかけて、再び琵琶湖の湖底に潜る。

昨年よりベビーベントの数が増えている気がする。

注意深く観察する。

時として魚による巻き上げと間違うことがあるからだ。

まっすぐ進んで魚がいなことを確認する。

7.6㎞ほど進んで、ベントらしいものを7個発見した。

視界はあまりよくない。

底泥の巻き上げで、水が濁っているのだ。

男は最近読んだ論文を思い起こした。

琵琶湖の沈み込みはなぜ起こるのか。

2003年のKudoらの論文だ。



濃尾平野と琵琶湖に、大きな負の重力異常が存在する。

彼の説によると、東南海トラフで潜り込んだフィリッピン海プレートが琵琶湖の下で沈降し、その時に地殻を引きずり込むのだそうだ。

ただ、それだとなぜ濃尾平野と琵琶湖の2か所で負の重力異常が発生するのかが説明できない。

そのこととベントとは直接関係ないかもしれない。

しかし完全に否定もできない。

もしプレートの沈み込みの場所に琵琶湖ができているとするのならば、420万年前には古琵琶湖があったと言われる伊賀上野で沈み込んでいたということなのだろうか。

そう考えるより、沈み込みの場所は現在位置と同じだが、地殻が押されて伊賀上野の場所まで移動したと考える方が理にかなっているのではないか。

こう考えることとの不都合はあるのだろうか。

男の潜水は続く。

春のけだるさの中で、意識もかすんでいく。

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3月13日(木)のつぶやき

2014-03-14 05:20:56 | 物語
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謎(8)

2014-03-13 18:17:37 | ButsuButsu


「ホモ面って知ってる」

女が聞いた。

「モホロビチッチ不連続面」

と男が答える。

「地震波速度の境界面だ」

「そうね。地殻とマントルの境界面で、この面の上と下とでは地震波の伝搬速度が異なる。この性質を利用して、地殻の厚さを知ることができる」

女が、ウィキペディア的に説明した。

それによると、琵琶湖の地殻は少々厚いらしい。

この部分が陥没しているのだ。

上層の密度が2.6g/cm3ほどで、下層の密度が3.1g/cm3程度である。

琵琶湖の地殻の厚さは40kmほどで、周辺が32kmである。

つまり約8kmにわたる陥没がある。

この結果、琵琶湖の重力は小さい。

いわゆる負の重力異常地帯だ。

なぜこのような不連続な陥没ができているのかというと、フィリッピンプレートの潜り込みが原因らしい。

そうすると、古琵琶湖の移動も説明できそうだ。

「琵琶湖は水平的な応力が大きな場所で、歪みを受けやすいのでは」

女はそう話すと、何かを考えるそぶりをした。

「そもそもなぜこの場所でプレートが潜り込むのか」

「湖は結果であって、原因ではない」

男はそう言った。

「このことと湖底で見つけたベントと何か関係があると思わない」

女の質問に男は答えた。

「これだけではわからない。もう少し調べないと。ただ面白い話だ」

二人は膨大な文献を検索し、情報の収集を開始した。

こうして2009年は終わり、2010年の春を迎えた。
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夢(64)

2014-03-12 23:56:34 | ButsuButsu


2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって、福島第一原発が被災した。

当初、多くの原子力の専門家がメルトダウンはしていないだろうと述べていた。

しかし、現実には1号機から3号機までがメルトダウンし、3年たった現在でも深刻な放射能汚染が発生している。

厄介なことに、溶融した炉心近くの状況は不明で、何が正しい情報なのかさえ把握しがたいのが現状だ。

専門家が完全にはあてにならない顕著な事例だ。

その後、日本各地で反原発運動が起こり原発の再稼働停止と再生可能エネルギーへの転換を求める活動が続いている。

最近では、小泉元首相が脱原発を熱心に提唱している。

確かに、人類が完全には制御できない原子力発電に依存せざるを得ない社会構造そのものに欠陥がある。

一方で、再生可能エネルギーへの転換も容易ではない。

例えば、太陽光パネルを作る際にかかる経費や使用するエネルギーは決して小さいものではないし、仮に稼働できたとしても賄える総エネルギーは、我が国で必要な電力の10%程度に過ぎないだろう。

さらに問題なのは、地球温暖化の深刻化である。

海面水温の上昇は大規模低気圧の発生を加速させており、気候の不安定化を深刻にしている。

大陸の加熱はボディブローのように自然環境を変えてきている。

例えば、シベリアにある永久凍土の溶解は大量の溶存有機物の流出をもたらし、日本海の水質を変えつつある。

また、地殻の膨張や縮小が大規模地震を誘発している可能性も指摘されている。

琵琶湖も例外ではない。

琵琶湖北湖に注がれる太陽の年間全天日射量は、約6.8×1014 Kcalである。

これは,電力量に直すと約7.9×1011 kWhとなり、滋賀県で年間に使用する電力量1.25×1010 kWh(2002年実績)の約60倍に値する。

また、日本における全発電力量の78%にも達する。

驚くほど多くのエネルギーが、太陽から琵琶湖に注がれていることになる。

こうして琵琶湖に取り込まれた太陽エネルギーのほとんどは,湖水を温めるために使われる。

大気から湖水に入る年間の熱エネルギーは3.05×1014 Kcalで、湖水から大気へ出る年間の熱エネルギーは3.03×1014 Kcalである。

したがって,琵琶湖に注がれる全天日射量の約45%が正味の水温上昇として使われることになる。

加熱と冷却の間に少し差があるのは、湖が少しずつ暖まってきていることを示している。

実際、琵琶湖内に蓄積した熱量は5.5×1013 Kcalであり、その結果、水温は約2.0℃上昇している。

これは過去25年間における滋賀県の平均気温上昇とほとんど同じであり、琵琶湖の水温変化が地球温暖化傾向と同調していることを裏づけている。

琵琶湖に存在するエネルギーで利用が可能なのは、位置エネルギーと運動エネルギーである。

夏になると、水面近くが暖まるが、湖底は冷たい。

この温度差を利用して発電する方法がある。

一方、水平の圧力勾配と地球自転の偏向力(コリオリ力)がバランスして回転する環流も存在する。

これは水中の台風のようなもので、一番大きな環流(第一環流)は時計と逆回りに回転している。

このような流れを地衡流と呼んでおり、これを用いて発電しようというアイデアもある。

何しろ、原発数基分のエネルギーを蓄えているのだから魅力的な話だ。

原発や化石燃料の利用を可能な限り軽減させ自然のエネルギーを利用するとしたら、太陽エネルギーが集約される自然現象を活用する方がよい。

私はこれを自然エネルギーレンズと呼んでいる。

そしてこのような発電をGeostrophic Power Stationと呼ぶ。

直径10㎞ほどの人口湖を用いた発電所が世界中にあっても悪くないだろう。

何しろ100%自然のエネルギーを使うのだから。

もっと進めば、台風からエネルギーを取り出すことも想定できる。

こうした地球規模の技術が実現した時初めて、原発に依存しない社会を作ることが可能になる。
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3月11日(火)のつぶやき

2014-03-12 04:50:07 | 物語
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夢(63)

2014-03-11 17:40:36 | ButsuButsu


STAP細胞が揺れている。

理化学研究所は論文の取り下げを検討し始めたらしい。

大変まずい話だ。

小保方晴子さんの将来にかかわることであるので、慎重に対処してほしい。

一般に、自然科学の学術論文には以下の三点が重要だ。

(1)Originarity(独創性)

(2)Repeatability(再現性)

(3)Consistency(一貫性)

この(2)と(3)が疑われているようだ。

この種のユニークな研究には、多くの邪魔が入る要素が高い。

特に、医薬関連は、あえてつぶしに来る可能性もある。

海外のメジャーからの圧力は相当なものだろう。

その意味で、理化学研究所がきちんとディフェンスを張れないところに問題がある。

論文をwithdrawして再度挑戦するには、あまりにもリスクが大きい。

研究の中身については門外漢だが、小保方さんのチームに自信があるのなら、とことん争ったほうがよい。

それに勝てないとしたら、後があるとは思えないからだ。

有能な若い研究者をつぶしてほしくないと思うのは私だけではないだろう。

この種の議論は、共同研究者間で、投稿前にきちんと行ったはずではないのか。
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3月10日(月)のつぶやき

2014-03-11 05:32:21 | 物語
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夢(62)

2014-03-10 11:06:18 | ButsuButsu


東北に巨大な防潮堤ができる。

本当に必要なのか。

そんな議論がワイドショーで高まっている。

***

宮城県の村井知事の見解

私は宮城県民の命を100年後も200年後も守らなければいけない立場の人間だということです。

今ここにおられる人や反対する人たちもおられますけれども、皆さん方にお聞きしたいのは、逆に「造ってくれという人は本当にいないのですか」ということです。

私のところには「そういう(造るなという)声に負けないでぜひ造ってください」という声も多数寄せられていますよ。

マスコミの皆さんはそういう声を拾わないのですよ。

ぜひ(マスコミの皆さまには)その声を拾ってもらいたいのですよね。

***

そうだろうか。

作ってほしいという声の中に、巨大な公共工事費に期待している部分がどれくらいあるのだろうか。

総工費は、一体いくらなのだろう。

その費用を津波警報体制の整備に回した方が、よほど効果的な気がする。

完成すれば、この警報システムは世界に売れる。

2011年5月、私は南三陸町を訪れた。

その時、三陸海岸の海洋資源の豊かさを実感した。

多様な魚種が、広範囲に広がる三陸海岸。

陸と海を分断することは、漁を営む人々にとって死を意味するのだろう。

これは、水を恐れる農耕民族と、水を友とする海洋民族との争いでもある。

漁業者は、船板一枚下は地獄の世界で、一獲千金を夢見て漁をする。

それ自体がギャンブルだ。

津波を恐れていては生きていけないのだ。

農民は、昔から水害を恐れていた。

巨大な防潮堤で守られた世界で、安全に農業をしたい。

同じような話は、日本各地で見られる。

アジア人種の多くは、農耕民族で水を恐れる。

巨大防潮堤の話は、欧米では決して受け入れられない。

それは彼らの多くが海洋民族だからだ。

自然とともに生き、自然の恵みを受け、自然を克服することに生きがいを持っている人々だ。

中国人や日本人は違う。

そこに村井知事の煩悶もある。

ただ、本当に高さ10mの防潮堤が解決するのか。

止めた方がよい。

それでも完全ではないのだから。

完璧な警報システムと、避難体制を構築する方が、後世への役に立つ。

土木の力で自然に立ち向かおうとすること自体が陳腐なのだ。

どう逆らっても自然のエネルギーの暴走を止めることはできないのだから。

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3月9日(日)のつぶやき

2014-03-10 09:55:23 | 物語
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謎(7)

2014-03-09 15:29:41 | ButsuButsu


男は夢を見ていた。

必死になって目覚めようと思うのだけれども、金縛りにあったように体が動かなかった。

昨日見た湖底の様子が、フラッシュバックしていく。

古い記憶を整理しながら、何が起こっているのかを確認していった。

1994年から調べ始めた湖底の状態は、何か兆候を示していたのだろうか。

どうも湖底が沈んでいる気がしてきたのはこの頃だった。

ただ測定の精度に確信がなかった。

琵琶湖が沈んでいるということが記事になったこともあった。

もう一つ気になっていたことがあった。

湖底の泥が、固くなったり、柔らかくなったりしていたことだ。

なぜそんなことが起こったのだろうか。

もう少しきちんと記録をしておけばよかった。

漠然とした記憶は、その辺で止まった。

「起きて」

女が声をかけてきた。

また働くのか。

そう思うと、気が滅入ってきた。

ゆっくりと手足を延ばし、活動モードに入る。

琵琶湖。

そこは日本列島で最も負の重力異常が大きな場所でもある。

スカスカの地底。

不思議な場所だ。

ここを監視することが、男のミッションであった。

「さて、行くか」

そう自分を鼓舞して、男は起き上がった。

女は、それを見て微笑んだ。
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3月8日(土)のつぶやき

2014-03-09 09:30:02 | 物語
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謎(6)

2014-03-08 21:53:51 | ButsuButsu


職場に帰った女は、男が湖底で見たという不思議な現象をネットで調べ始めた。

あれはハイドロサーマルプルームなのだろうか。

深海で発見されているものだ。

日本語では熱水鉱床といわれてる。

「湖 プルーム 湖底」で検索する。

バイカル湖、タンガニーカ湖、タウポ湖が引っかかった。

タウポ湖は火山湖だから、プルームがあるのは理解できる。

琵琶湖と同じ構造湖なのは、バイカル湖とタンガニーカ湖だ。

低温水ベントと呼ばれているようだ。

温水と同時に気泡も出ている。

周辺にはバクテリアのマットが広がり、淡水スポンジやガンマルスなどが見られる。

「もっとよく調べなきゃ」

湖面で見たバブルを写真に撮っていた。

おそらくメタンガスだろう。

その発生規模や量が最近多くなっているようだ。



今日は多くのことがあった。

ふと、とても疲れていることに気が付いた。

あとは明日やろう。
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3月7日(金)のつぶやき

2014-03-08 09:22:27 | 物語
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