児童文学において、那須正幹の「ズッコケ三人組」シリーズで、一面的で平板なキャラクター性が前川かずおのマンガ的な挿絵により図像化されて、マンガ的キャラクター小説を確立したとしています。
キャラクター小説とは、大塚英志が提唱した「まんが・アニメ的リアリズム」(マンガやアニメなどの虚構を写生することで喚起され、現実を写生する近代小説のリアリズムとは位相を異にしています)によって書かれている小説をさします
そして、最近の児童文庫では、さらに表紙に「アニメ塗り」を採用して、ライトノベル、アニメ、ゲーム、カードなどとの親和性の高い作品が多く読まれていることを豊富な実例とデータを用いて検証しています。
この変化は、2004年ごろに始まり、従来のマンガ的キャラクター小説にとって代わっているようです(くしくも「ズッコケ三人組」シリーズは2004年に終了し、私の友人の児童向けエンターテインメント作家によるとオーソドックスなラブコメはパタッと売れなくなったそうです)。
キャラクターがストーリーから自立することによって、「ストーリーを構成するエピソードの因果関係が弱体化し、キャラによって束ねられたエピソードの束が物語の対象となるのである」としています。
これは、小説の読書体験というよりは、「ポケモン」や「遊戯王」といったキャラクターを描いたトレーディングカードゲームを遊ぶ体験に近いのではないでしょうか。
また、キャラクターを読者が創造し応募する仕組みもシリーズによっては取り入れられており、双方向の読者参加型のエンターテインメントになっているようです。
こうした、アニメ、ゲーム、マンガ、カードなどのマルチメディアの中での「キャラクター小説を読む」意義は、どういった点にあるのでしょうか。
一つの可能性としては、自分自身でキャラクターを使った物語世界で遊ぶ際の、一種のモデルとしての働きをしているのかもしれません。
また、別の可能性としては、様々なメディアで同じ「平面的」キャラクターに接することで、通常の意味とは違った新しい「立体的」なキャラクターを自分の内部に作り上げている可能性もあります。
日本児童文学学会の研究大会で、作者とも少し話をしましたが、このあたりの研究はまだこれからの課題のようです。
日本児童文学 2010年 08月号 [雑誌] | |
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