スピーカーを買い換えた。以前試聴会で接してからずっと気になっていた、英国KEF社のLS50だ。別にそれまで使っていたB&W社の685の音が嫌いになったというわけでもない。しかし店頭で聴いた印象では、買い換えたくなるだけの魅力がLS50にはあったことは確か。また理由として、当機はKEF社創立50周年を記念して作られており、ほぼ一年間だけの限定生産であったことも大きい。
使用ユニットは13cm口径の一発だけ。振動板は低音用と高音用の2つが重ね合わされている、いわゆる同軸形式の2ウェイだ。元々はニアフィールドで使われる業務用モニター機器として開発されているためか、サランネットはない。黒い筐体に赤銅色のユニットが埋め込まれているエクステリアはなかなかインパクトがある。
振動板の材質はアルミとマグネシウム。全体のサイズは前に使っていた685よりも一回り小さいが、逆に重量は大きい。それもそのはずで、厚い補強板が内部で十の字に交わっており、それがドライバーのマグネットやフレームに直結されている。そのためにボティの堅牢度はかなりのもので、叩いても無駄に響いた音が出ず、まるで岩のように固い。

実際に音を出してみると、まず聴感上での歪みの少なさには感心させられる。中高域がうるさくないのだ。前の685も比較的フラットでクセの少ないスピーカーだと思っていたが、演奏中にリスニングルーム内で話をしようとすると、再生音が耳障りに感じて演奏を中断することが多かった。しかしLS50の音は(大音量時は別にして)会話を妨げることがない。数年前に国内ハイエンドのスピーカーメーカーG.T.Soundの製品を試聴した際、そこの社長が“良いスピーカーは低歪率であることが必須条件。鳴っている時に側で話をしても邪魔にならないくらいのクリアな音出しが望ましい”みたいなことを言っていたが、LS50はそれに通じるパフォーマンスを見せてくれる。
ネット上ではこのスピーカーに対しての“音がこもっている”というインプレッションがけっこうあるらしいが、事実、導入して最初に音を出したときは私もそう思った。しかし、そういう傾向があることは店頭での試聴で織り込み済みだ。このモデルは“寝起きの悪い製品”なのであろう。ある程度アンプが温まらないと万全な状態にならない。
おそらくはその“寝起きの悪さ”はエージング(鳴らし込み)にも言えることで、前に使っていた同社のiQ3のエージングもかなりの日数を必要としたが、LS50も同様だろう。とはいえ、導入から一週間経って随分と“こもり”も取れてきたように思う。

本機はモニター用ながら、音色自体は明るくウォームな傾向にある。刺々しいところは見当たらない。ハイファイ度を強調するような高域のケレン味はないので所謂“ドンシャリ好き”なリスナーには合わないが、その分中域はとても充実していて、ヴォーカルには血が通う。
同軸型ユニットを採用しているためか、音像の定位は確かなものがある。音場はスピーカーの前と後ろに立体的に展開する。美音とも思えるような暖色系ながら、音楽ソフトのクォリティ(出来不出来)をしっかりと表現しているところはモニター機器としての役割もこなしていると言えるだろう。それに鳴らすジャンルはまったく選ばず、聴き疲れもしない。
LS50はB&Wの685とは定価ベースで2万円しか違わない。しかし質感は大きく上回っている。私はあまり機器の外観を気にするタイプではないのだが、ピアノ鏡面仕上げの筐体はやはり高級感があり、買って良かったと思う。
なお、このスピーカーはセッティングなどの“使いこなし”が大きくモノを言う製品でもある。購入してからあまり時間が経っていないのでまだ十分な“使いこなし”には取り掛かっていないが、次のアーティクルではその“途中経過”をリポートしたい。
(この項つづく)
使用ユニットは13cm口径の一発だけ。振動板は低音用と高音用の2つが重ね合わされている、いわゆる同軸形式の2ウェイだ。元々はニアフィールドで使われる業務用モニター機器として開発されているためか、サランネットはない。黒い筐体に赤銅色のユニットが埋め込まれているエクステリアはなかなかインパクトがある。
振動板の材質はアルミとマグネシウム。全体のサイズは前に使っていた685よりも一回り小さいが、逆に重量は大きい。それもそのはずで、厚い補強板が内部で十の字に交わっており、それがドライバーのマグネットやフレームに直結されている。そのためにボティの堅牢度はかなりのもので、叩いても無駄に響いた音が出ず、まるで岩のように固い。

実際に音を出してみると、まず聴感上での歪みの少なさには感心させられる。中高域がうるさくないのだ。前の685も比較的フラットでクセの少ないスピーカーだと思っていたが、演奏中にリスニングルーム内で話をしようとすると、再生音が耳障りに感じて演奏を中断することが多かった。しかしLS50の音は(大音量時は別にして)会話を妨げることがない。数年前に国内ハイエンドのスピーカーメーカーG.T.Soundの製品を試聴した際、そこの社長が“良いスピーカーは低歪率であることが必須条件。鳴っている時に側で話をしても邪魔にならないくらいのクリアな音出しが望ましい”みたいなことを言っていたが、LS50はそれに通じるパフォーマンスを見せてくれる。
ネット上ではこのスピーカーに対しての“音がこもっている”というインプレッションがけっこうあるらしいが、事実、導入して最初に音を出したときは私もそう思った。しかし、そういう傾向があることは店頭での試聴で織り込み済みだ。このモデルは“寝起きの悪い製品”なのであろう。ある程度アンプが温まらないと万全な状態にならない。
おそらくはその“寝起きの悪さ”はエージング(鳴らし込み)にも言えることで、前に使っていた同社のiQ3のエージングもかなりの日数を必要としたが、LS50も同様だろう。とはいえ、導入から一週間経って随分と“こもり”も取れてきたように思う。

本機はモニター用ながら、音色自体は明るくウォームな傾向にある。刺々しいところは見当たらない。ハイファイ度を強調するような高域のケレン味はないので所謂“ドンシャリ好き”なリスナーには合わないが、その分中域はとても充実していて、ヴォーカルには血が通う。
同軸型ユニットを採用しているためか、音像の定位は確かなものがある。音場はスピーカーの前と後ろに立体的に展開する。美音とも思えるような暖色系ながら、音楽ソフトのクォリティ(出来不出来)をしっかりと表現しているところはモニター機器としての役割もこなしていると言えるだろう。それに鳴らすジャンルはまったく選ばず、聴き疲れもしない。
LS50はB&Wの685とは定価ベースで2万円しか違わない。しかし質感は大きく上回っている。私はあまり機器の外観を気にするタイプではないのだが、ピアノ鏡面仕上げの筐体はやはり高級感があり、買って良かったと思う。
なお、このスピーカーはセッティングなどの“使いこなし”が大きくモノを言う製品でもある。購入してからあまり時間が経っていないのでまだ十分な“使いこなし”には取り掛かっていないが、次のアーティクルではその“途中経過”をリポートしたい。
(この項つづく)