会場で展示されていた独ELAC社のスピーカー、FS407とBS403は2012年にリリースされた同社の新作だ。サウンドだが、このメーカーらしいスクエアーで俊敏な音像展開が印象付けられる。ただし、良くまとまっているのはフロアスタンディング型のFS407ではなく、コンパクト型のBS403の方だ。小型モデルの優位性はELACの他のシリーズでも同様で、改めて同社の特徴を認識できた。
しかし、音よりも驚いたのが、その仕様である。このシリーズはそれまで同社が採用していたバイワイヤリング接続を搭載していない。バイワイヤリング接続というのはスピーカーに高域用と低域用とを独立させた端子を設け、それぞれにケーブルを接続させるという方式で、それぞれのネットワーク回路間の有害な干渉を防ぐメリットがあると言われてきた。
しかし、スタッフの話によると、実際にケーブルを2本使った(本式の)バイワイヤリング接続を実行しているユーザーの割合はとても少ないのだという。同社が独自におこなった調査によれば、バイワイヤリング接続対応のスピーカーを使っている世界中のオーディオファンのうち、バイワイヤリング接続の実行者は何とわずか7%らしい。その結果を受けてELACでは新製品のバイワイヤリング接続仕様を見送ったとのことだ。
正直言って、私はこのバイワイヤリング接続というのは嫌いである。単純に考えてもケーブル代が2倍になるし(笑)、そもそも高域用と低域用それぞれに繋ぐケーブルを同一にした方が良いとは限らないのだ。もちろん、同じケーブルにした方が“無難”ではある。しかし、厳密に言えば“高音の再現力に優れるケーブル”と“低音の制動力に特徴のあるケーブル”とを別々にチョイスするのが本筋であろう。
ところが、ケーブル同士には相性というものがある。いくら個々のケーブルの素性が良くても、同時に使用したら要領を得ない結果になることも大いに考えられるのだ。この相性を見極めるには長い時間を掛けての試行錯誤が必要で、考えただけでもウンザリする。
ならばケーブル1本だけのシングル接続にすればいいのかというと・・・・これも問題がある。それは、高域用と低域用とを繋ぐジャンパーケーブルの質だ。スピーカーに付属しているジャンパーケーブルは低品質であることが多いので取り去った方が良いのだが、ならば何を代わりに付ければいいのか。
スピーカーケーブルの端を少し切ってジャンパーケーブルの代わりにするというのが“無難”だろうが、それは必ずしも最良策ではない。市販のジャンパーケーブルを持ってきた方が上手くいくケースもあるだろう。しかし、ジャンパーケーブルの市販品というのはいずれも高価だ。たかが10数センチの電線に大枚を叩くのは腰が引けるし、それが所用しているスピーカーケーブルと相性が良いのかどうかも分からない。
細かい話をすれば、シングルで繋ぐ場合にケーブルを高音用端子に接続するのか、あるいは低音用か、はたまたプラスだけ高音用にしてマイナスを低音用に(あるいはその逆に)繋ぐのか、いずれの方法が良い結果を生むのかを調べるには、またしても手間のかかる試行錯誤が必要になる。
このように、バイワイヤリング接続はユーザーに不要な負担を掛ける厄介なシロモノなのだ(まあ、面倒臭いところが良いと言うマニアもいるだろうが、それはさておき ^^;)。それだけにELACの今回の決断は歓迎したいし、この動きが他メーカーにも広がることを望みたい。
(この項つづく)
しかし、音よりも驚いたのが、その仕様である。このシリーズはそれまで同社が採用していたバイワイヤリング接続を搭載していない。バイワイヤリング接続というのはスピーカーに高域用と低域用とを独立させた端子を設け、それぞれにケーブルを接続させるという方式で、それぞれのネットワーク回路間の有害な干渉を防ぐメリットがあると言われてきた。
しかし、スタッフの話によると、実際にケーブルを2本使った(本式の)バイワイヤリング接続を実行しているユーザーの割合はとても少ないのだという。同社が独自におこなった調査によれば、バイワイヤリング接続対応のスピーカーを使っている世界中のオーディオファンのうち、バイワイヤリング接続の実行者は何とわずか7%らしい。その結果を受けてELACでは新製品のバイワイヤリング接続仕様を見送ったとのことだ。
正直言って、私はこのバイワイヤリング接続というのは嫌いである。単純に考えてもケーブル代が2倍になるし(笑)、そもそも高域用と低域用それぞれに繋ぐケーブルを同一にした方が良いとは限らないのだ。もちろん、同じケーブルにした方が“無難”ではある。しかし、厳密に言えば“高音の再現力に優れるケーブル”と“低音の制動力に特徴のあるケーブル”とを別々にチョイスするのが本筋であろう。
ところが、ケーブル同士には相性というものがある。いくら個々のケーブルの素性が良くても、同時に使用したら要領を得ない結果になることも大いに考えられるのだ。この相性を見極めるには長い時間を掛けての試行錯誤が必要で、考えただけでもウンザリする。
ならばケーブル1本だけのシングル接続にすればいいのかというと・・・・これも問題がある。それは、高域用と低域用とを繋ぐジャンパーケーブルの質だ。スピーカーに付属しているジャンパーケーブルは低品質であることが多いので取り去った方が良いのだが、ならば何を代わりに付ければいいのか。
スピーカーケーブルの端を少し切ってジャンパーケーブルの代わりにするというのが“無難”だろうが、それは必ずしも最良策ではない。市販のジャンパーケーブルを持ってきた方が上手くいくケースもあるだろう。しかし、ジャンパーケーブルの市販品というのはいずれも高価だ。たかが10数センチの電線に大枚を叩くのは腰が引けるし、それが所用しているスピーカーケーブルと相性が良いのかどうかも分からない。
細かい話をすれば、シングルで繋ぐ場合にケーブルを高音用端子に接続するのか、あるいは低音用か、はたまたプラスだけ高音用にしてマイナスを低音用に(あるいはその逆に)繋ぐのか、いずれの方法が良い結果を生むのかを調べるには、またしても手間のかかる試行錯誤が必要になる。
このように、バイワイヤリング接続はユーザーに不要な負担を掛ける厄介なシロモノなのだ(まあ、面倒臭いところが良いと言うマニアもいるだろうが、それはさておき ^^;)。それだけにELACの今回の決断は歓迎したいし、この動きが他メーカーにも広がることを望みたい。
(この項つづく)