(原題:LOVELACE)題材は面白そうなのだが、脚本と監督の腕が三流なので凡打に終わっている。70年代初頭、フロリダの田舎町に住む若い娘リンダは一度妊娠中絶騒ぎを引き起こし、それ以来同居する敬虔なカトリック教徒の両親が“監視”するような形になり、息の詰まるような生活を強いられていた。
ある日、リンダはバーの経営者チャックに見初められ、家から出たかった彼女はすぐに結婚する。最初は優しかったチャックだが、次第にロクデナシの本性をあらわして、果ては金に困ってリンダをポルノ映画に出演させる。その映画こそ一世を風靡した「ディープ・スロート」であった。70年代に社会現象にまでなったカルト作品に主演した伝説のポルノ女優、リンダ・ラヴレースの伝記映画である。
いくらでも映画的興趣が掘り起こせそうなネタだ。時代性とポルノとの関係、ヒロインの内面の変遷、高圧的な両親の心理的背景(特に宗教との関わり)、暴力夫であったチャックの屈折、主人公を取り巻く業界人やセレブの生態etc.力量のある監督ならば、見応えのあるモチーフを引っ張り出せただろう。ところが、本作には見事なほど何も描かれていない。
ロブ・エプスタインとジェフリー・フリードマンの監督コンビの仕事ぶりは、無能そのものだ。どこをとっても平板で深みが無く、早い話が“テレビ三面記事”の再現ドラマと同等。しかも、事実を語ることさえしていない。映画ではラヴレースの出演作は「ディープ・スロート」のみという扱い方だったが、実際にはその他にも何本か出ている。またチャックはラヴレースとの離婚後にもう一人の有名ポルノ女優マリリン・チェンバースと再婚しているのだが、映画の中では詳しく言及されていない。
主役のアマンダ・セイフライド(正式な発音はサイフリッドらしいけど)は確かに頑張っている。だが、劇中のポルノ映画と同じ演技をさせるわけにもいかないので、隔靴掻痒の感がある。チャック役のピーター・サースガードも頑張っている。しかし、生ぬるい演出と生ぬるい脚本のせいで、凄味がほとんど出ていない。
母親に扮したシャロン・ストーンのあまりの老け具合にはびっくりしたが、彼女の“過去のフィルモグラフィ”を活かしたような設定は皆無。もったいない話だ。ジェームズ・フランコ、ロバート・パトリック、クロエ・セヴィニーといった脇の面子の仕事も大したことは無い。
観終わって、アメリカのポルノ映画は完全にジャンク・ムービー扱いされていることを再確認した。かつての日本の成人映画のように、芸能界への登竜門としての側面はほとんど無い。「ディープ・スロート」はヒットはしたが、どこかうら寂しい雰囲気が付いて回るのも、むべなるかなである。
ある日、リンダはバーの経営者チャックに見初められ、家から出たかった彼女はすぐに結婚する。最初は優しかったチャックだが、次第にロクデナシの本性をあらわして、果ては金に困ってリンダをポルノ映画に出演させる。その映画こそ一世を風靡した「ディープ・スロート」であった。70年代に社会現象にまでなったカルト作品に主演した伝説のポルノ女優、リンダ・ラヴレースの伝記映画である。
いくらでも映画的興趣が掘り起こせそうなネタだ。時代性とポルノとの関係、ヒロインの内面の変遷、高圧的な両親の心理的背景(特に宗教との関わり)、暴力夫であったチャックの屈折、主人公を取り巻く業界人やセレブの生態etc.力量のある監督ならば、見応えのあるモチーフを引っ張り出せただろう。ところが、本作には見事なほど何も描かれていない。
ロブ・エプスタインとジェフリー・フリードマンの監督コンビの仕事ぶりは、無能そのものだ。どこをとっても平板で深みが無く、早い話が“テレビ三面記事”の再現ドラマと同等。しかも、事実を語ることさえしていない。映画ではラヴレースの出演作は「ディープ・スロート」のみという扱い方だったが、実際にはその他にも何本か出ている。またチャックはラヴレースとの離婚後にもう一人の有名ポルノ女優マリリン・チェンバースと再婚しているのだが、映画の中では詳しく言及されていない。
主役のアマンダ・セイフライド(正式な発音はサイフリッドらしいけど)は確かに頑張っている。だが、劇中のポルノ映画と同じ演技をさせるわけにもいかないので、隔靴掻痒の感がある。チャック役のピーター・サースガードも頑張っている。しかし、生ぬるい演出と生ぬるい脚本のせいで、凄味がほとんど出ていない。
母親に扮したシャロン・ストーンのあまりの老け具合にはびっくりしたが、彼女の“過去のフィルモグラフィ”を活かしたような設定は皆無。もったいない話だ。ジェームズ・フランコ、ロバート・パトリック、クロエ・セヴィニーといった脇の面子の仕事も大したことは無い。
観終わって、アメリカのポルノ映画は完全にジャンク・ムービー扱いされていることを再確認した。かつての日本の成人映画のように、芸能界への登竜門としての側面はほとんど無い。「ディープ・スロート」はヒットはしたが、どこかうら寂しい雰囲気が付いて回るのも、むべなるかなである。