元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「黄泉がえり」

2018-05-25 06:20:18 | 映画の感想(や行)
 2003年東宝作品。熊本の阿蘇地方で突如死んだ者がよみがえり始めた。しかも当時の姿のまま数百人規模で。厚生労働省の調査員である主人公は真相を解明するために故郷・阿蘇に戻ってくる。熊本在住のSF作家・梶尾真治の同名小説(私は未読)を映画化したファンタジー。監督は塩田明彦。

 「どこまでもいこう」(99年)「害虫」(2002年)などで知られる塩田監督は子供やティーンエイジャーの扱い方が素晴らしくうまい。この映画でも老母の前に現れる幼い頃死んだ息子や、20代の男の前に現れる「年下の兄」などにまつわるエピソードは情感豊かで心に滲み入るものがあるし、自殺した男子中学生とガールフレンドとのくだりなんかは泣けてくる。



 ところが肝心の主役二人がまったくダメ。草なぎ剛は官僚どころか勤め人にも見えないし、もとより大根の竹内結子の演技など全く期待出来ない。たぶんそれまでマイナー系作品しか手掛けていなかった塩田監督には、こういう(おそらく監督自身が望んだキャスティングではなく、しかもあまり上手くない)当時の若手人気タレントの扱い方に慣れていないのだろう。

 意図的なカメラの長廻し等、何とか監督のペースに合わせようと努力はしてみるものの、最後まで精彩を欠いたままだ。クライマックスは竹内の死んだ元恋人をよみがえらせるのどうのという話になるが、それまでの二人の扱い方がイマイチ決まらないためほとんど盛り上がらない。

 しかも、舞台となる野外コンサート会場---柴咲コウ(本作では歌手としてのRUI名義で出演)の歌が延々と必要以上に流れる---の描き方がテレビドラマ並みにショボく、観ていて面倒くさくなってしまう。さらに悪いことに、オチが読める(暗然)。

 真相を明らかにしない不可思議なファンタジーとしては水準はクリアしているが、同じようなネタの大林宣彦監督「異人たちとの夏」(88年)の後塵を拝しているのは確かであろう。ただ、公開当時はヒットを記録し、3か月以上のロングランを達成した。一説にはSF色の強い原作を大幅に改変し、メロドラマに仕立てたおかげと言われている。
コメント
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