元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「硝子の塔」

2018-08-24 06:29:35 | 映画の感想(か行)
 (原題:SLIVER)93年作品。早い話が、92年に製作されて大きな話題を呼んだ「氷の微笑」の“柳の下の二匹目のドジョウ”を狙った映画である。もちろん、別に二番煎じがダメだというキマリは無く、良く出来ていれば文句は出ないのだが、どうもこれが芳しくない結果に終わったようだ。

 ニューヨークの出版社で働く女性編集者のカーリーは、7年間の不毛な結婚生活を終わらせたばかり。気分を変えるため、マンハッタンのガラス張りの超高層マンションに引っ越す。だが、そこの住人である大学教授のホールから、このマンションで若い女が不審死を遂げたことを聞かされる。不安を抱いたカーリーだが、それでも作家のジャックや、ゲームデザイナーのジークといった住人と知り合い、気分を紛らわせる。



 特にハンサムなジーグは彼女の好みのタイプで、すぐに懇ろな仲になるが、そんな折にまたマンション内で死亡事故が発生する。実はジーグはこのビルのオーナーであり、秘密のモニター室では全戸の中身が監視されていた。彼女はジークの覗き趣味に不安を感じるが、ある日ジャックが一連の事件の容疑者として逮捕されてしまう。アイラ・レヴィンの同名小説の映画化だ。

 ストーリーは取り立てて優れたものではない。だいたい、一介の編集者が超高級マンションに簡単に入居出来るはずがない(笑)。出てくるキャラクターは、マザコンのサイコ野郎だったり、性的なトラウマを抱いた怪しい男だったり、訳知り顔の大学教員だったりと、いかにも“それらしい”顔ぶれが芸も無く並んでいる。ラストに至っては、何やら観客に予想させる余地も無くバタバタと幕が下りるのみだ。

 しかし、主演が「氷の微笑」に続いて登板するシャロン・ストーンであることは、やはり冒頭で述べたように製作意図が丸分かりなのだ。カメラは彼女のボディを舐め回すように動き、悩殺的な入浴シーンもバッチリと挿入されている。つまりはストーンを主役にお色気路線で“「氷の微笑」の夢をもう一度”ということなのだろう。

 だが、監督のフィリップ・ノイスはどう見ても「氷の微笑」のポール・ヴァーホーヴェンのような筋金入りの変態ではなく、結果として平板な演出に終始。ウィリアム・ボールドウィンやトム・ベレンジャー、マーティン・ランドーといった濃い顔ぶれも、生かし切れていない。音楽にハワード・ショア、撮影にヴィルモス・ジグモンドという大物を起用しているのに、もったいない話である。
コメント
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