たまらなく不愉快な映画である。本年度のワーストワンの有力候補だ。現時点でこのような“非・スマート”な内容のシャシンが作られたことに対し、呆れるのを通り越して危機感さえ抱いてしまった。しかも、本来は芸達者であるはずのキャストを揃えてこの有様。原作が有名コミックだか何だか知らないが、これは企画段階で製作を取り止めて当然のネタだと思う。
文具メーカーに勤める宮本浩は、年上の中野靖子と恋仲だ。彼女のアパートに押し掛けてきた元カレにも、キッパリと靖子との交際を宣言する。ある晩、取引先の飲み会に靖子を連れて行った際、浩は泥酔して先方の幹部の息子である拓馬に靖子の家まで送ってもらう。ところが、浩が寝入った後に靖子は拓馬にレイプされる。翌朝それを知った浩は激高して拓馬に殴りかかるが、あっさりと返り討ちに遭う。このままでは男の面子が立たない浩は、密かにトレーニングを積んでリベンジを誓う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/dd/9a40e56c87eb71968dd701216e5704ae.jpg)
まず、レイプは犯罪である。だから、主人公たちはまず合法的な手段で相手を追い詰めるべきだ。暴力に訴えるのは、最終手段である。しかも、拓馬は元ラグビー選手。武術の心得も無い浩が正面からぶつかって勝てるはずもない。とにかく相手にダメージを与えたいのならば、いくらでも(卑怯な)手段が考えられよう。そして、拓馬との“再戦”に至ってはシチュエーションと段取りが無理筋の極みだ。不良学生同士のケンカでも、ああいうバカなマネはしない。
浩と靖子はどんなに互いを思い遣っているかを示すように、絶えず怒鳴り合っている。その有様は常軌を逸しており、常人から見れば異様な光景でしかない。反面、どうして浩は靖子のことが好きなのか、映画は全然説明しない。“好きだ!”と叫べばそれで事足りるとでも思っているのだろうか。まったく、考えが足りない。
監督の真利子哲也の前作「ディストラクション・ベイビーズ」(2016年)がどうして納得出来る内容だったのかというと、劇中で暴力を振るう連中は無頼漢ばかりであり、映画全体がカタギの世界と一線を引いていたからだ。それに比べて本作は、登場人物は皆ちゃんとした社会人であり、シャバの掟から逃れられない立場である。法律も社会的規範もスルーして暴力に明け暮れるわけにはいかない。
そんな構図に正当性を持たせようとするなら、それなりの前提が必要だが、この映画には皆無だ。浮き世離れしたバイオレンスシーンと絶叫芝居の連続で、観ていて完全に疲れてしまった。また、時制をランダムに配置するのも鬱陶しいだけだ。
池松壮亮に蒼井優、井浦新、柄本時生、ピエール瀧、佐藤二朗、螢雪次朗、松山ケンイチと顔ぷれは豪華だが、内容が斯くの如しでは、本当にもったいない。さらに言えば、池松と蒼井のベッドシーンは全然キレイでもエロティックでもなく、平板で退屈。省略しても一向に構わない。
文具メーカーに勤める宮本浩は、年上の中野靖子と恋仲だ。彼女のアパートに押し掛けてきた元カレにも、キッパリと靖子との交際を宣言する。ある晩、取引先の飲み会に靖子を連れて行った際、浩は泥酔して先方の幹部の息子である拓馬に靖子の家まで送ってもらう。ところが、浩が寝入った後に靖子は拓馬にレイプされる。翌朝それを知った浩は激高して拓馬に殴りかかるが、あっさりと返り討ちに遭う。このままでは男の面子が立たない浩は、密かにトレーニングを積んでリベンジを誓う。
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まず、レイプは犯罪である。だから、主人公たちはまず合法的な手段で相手を追い詰めるべきだ。暴力に訴えるのは、最終手段である。しかも、拓馬は元ラグビー選手。武術の心得も無い浩が正面からぶつかって勝てるはずもない。とにかく相手にダメージを与えたいのならば、いくらでも(卑怯な)手段が考えられよう。そして、拓馬との“再戦”に至ってはシチュエーションと段取りが無理筋の極みだ。不良学生同士のケンカでも、ああいうバカなマネはしない。
浩と靖子はどんなに互いを思い遣っているかを示すように、絶えず怒鳴り合っている。その有様は常軌を逸しており、常人から見れば異様な光景でしかない。反面、どうして浩は靖子のことが好きなのか、映画は全然説明しない。“好きだ!”と叫べばそれで事足りるとでも思っているのだろうか。まったく、考えが足りない。
監督の真利子哲也の前作「ディストラクション・ベイビーズ」(2016年)がどうして納得出来る内容だったのかというと、劇中で暴力を振るう連中は無頼漢ばかりであり、映画全体がカタギの世界と一線を引いていたからだ。それに比べて本作は、登場人物は皆ちゃんとした社会人であり、シャバの掟から逃れられない立場である。法律も社会的規範もスルーして暴力に明け暮れるわけにはいかない。
そんな構図に正当性を持たせようとするなら、それなりの前提が必要だが、この映画には皆無だ。浮き世離れしたバイオレンスシーンと絶叫芝居の連続で、観ていて完全に疲れてしまった。また、時制をランダムに配置するのも鬱陶しいだけだ。
池松壮亮に蒼井優、井浦新、柄本時生、ピエール瀧、佐藤二朗、螢雪次朗、松山ケンイチと顔ぷれは豪華だが、内容が斯くの如しでは、本当にもったいない。さらに言えば、池松と蒼井のベッドシーンは全然キレイでもエロティックでもなく、平板で退屈。省略しても一向に構わない。