元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「6888郵便大隊」

2025-02-09 06:21:53 | 映画の感想(英数)

 (原題:THE SIX TRIPLE EIGHT)2024年12月よりNetflixから配信。長年映画鑑賞を趣味にしていると、それまでまったく知らなかったことが題材になっている作品と遭遇して深く感じ入ることがけっこうある。本作もその一つで、第二次大戦中に斯様な事実があったことに驚くと共に、このテーマを取り上げてくれた製作陣に敬意を表したい。

 1942年、アメリカ南部の地方都市に住む女子学生レナ・デリコット・キングは、従軍していた恋人がヨーロッパ戦線で死亡したことを知りショックを受ける。何とか彼に代わって国に尽くしたいと考えたレナは、卒業後に陸軍に入ることを決意。しかし、黒人である彼女を受け入れるセクションはほとんどなく、唯一参加できたのがチャリティー・アダムズ大尉率いる陸軍婦人部隊所属の有色人種女性からなる部隊だった。

 そんな彼女たちに与えられた任務は、欧州戦線からアメリカ国内に宛てた郵便物の仕分け作業である。6888大隊としてイギリスに渡った彼女たちが見たものは、配達されないまま山のように溜まった手紙だった。ケビン・M・ハイメルによる実録小説の映画化だ。

 軍当局は、黒人である彼女たちが入隊すること自体快く思わない、F・ルーズベルト大統領の指示により仕方なく6888大隊を発足させたが、任務達成など望んではおらず、それどころか失敗することを期待している。暖房もない粗末な作業場に押し込められ、大量の未達郵便物と格闘する彼女たち。精神的支柱として派遣されてきたはずの牧師でさえ、実は監視役でしかなかったというエゲツなさ。このような逆境にも負けず、一歩ずつ職務を進捗させてゆく彼女たちの働き。それが報われていく終盤の展開は、十分感動的だ。

 また、恋人(何と、ユダヤ人である)が眠る場所を捜し当てようとするレナのエピソードや、横暴な上官と対峙するアダムズの行動など、サブ・プロットも上手く配備されている。もっとも、郵便物の配達先を突き止めるプロセスはもうちょっと掘り下げても良かったと思うが、そこまで描くと尺が無駄に長くなるので、これで良かったのだろう。

 戦争が終わり除隊して地元に帰った彼女たちには、さらなる差別が待ち受けていたことは想像に難くない。それを暗示させるエピローグは痛切だが、それだけに6888大隊の功績は伝説的な高みにまで押し上げられていると思う。脚本も手掛けたタイラー・ペリーの演出は堅実で、余計なケレンを廃して正攻法にドラマを進める。

 ケリー・ワシントンにエボニー・オブシディアン、ミローナ・ジャクソン、カイリー・ジェファーソン、サム・ウォーターストン、オプラ・ウィンフリー、そしてスーザン・サランドンと、キャストは皆好演だ。マイケル・ワトソンのカメラによる、奥行きのある美しい映像も要チェックである。

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