慶聞抄(きょうもんしょう)
日々感謝
緊急事態宣言が解除されてからしばらくして、例年「青春ジャーニー」と銘打って一泊旅行している高校時代の仲良し3人にメールしました。「我らの古希のお祝いはどーなるの?」一人からは、「96歳の父を筆頭に90越えの3人の親に移さないことを第一にしています。」あとの2人からも「残念だけど秋まで様子見かな」とのこと。もっともなことで反論できません。
その子二十 櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな(与謝野晶子「乱れ髪」)
私たちは、満18歳でした。土曜の午後の教室の窓の外には、ニセアカシアの並木。誕生日が近かったので、持ち寄りのお菓子とワインでお祝いしました。(赤玉ポートワインミニ?そんなことが出来たのだ!) 木漏れ日が、葉っぱを揺らす風が、全てが前途を祝福してくれているかのようでした。
初めてのお家に、臨終勤行に寄せてもらったのは5月の最後の日でした。82歳の男性。お連れ合いと息子さん、娘さんが迎えてくださいました。誰に対しても優しい、声を荒げたことのない穏やかな方だったそうです。4月の半ばに入院されたものの、連休にはお家に帰ることができ、また最期には先生の判断で病室に家族が集まり、いろいろ振り返って思い出話も出来たと喜んでおられました。看護師さんたちから、「お世話するたびに『ありがとう』と言ってくださったので、自分たちの方が癒された」という言葉をいただいて嬉しかったそうです。私は「まるで仏さまのような方ですね」と、思わず口にしていました。
お通夜では、お聞きしたことそのままお話させてもらいました。家族葬ということで、お孫さんや親族、数人のご近所さんだけのこじんまりとしたお葬式でしたが、故人を偲び悲しみに浸ることに集中できたお弔いだったように思います。旧知のお友達がたくさんでお見送りをするのもよかったのですが、「コロナ」情勢の下 での喪主さんの配慮がありました。
母が入院した時のことを思い出します。枯れ木のように痩せた体で担架に運ばれていったのですが、傍らの人ひとり一人に細い白い手で合掌していました。声にはならなかった代わりにそれは、全身で「ありがとう」を言っていたのです。係の人の肩越しに、その姿は尊く見えました。母は私に、老いて病んでいのち終えていくことの一部始終を見せてくれました。厳しく悲しいけれど、とても有難い、かけがえのない時間でした。
18歳のあの時に戻りたいとは思いません。振り返れば若く健康であった頃の私は傲慢でした。(えっ、今も?)
ほとけのみ名を 聞きひらき
こよなき信を めぐまれて
よろこぶこころ 身に得れば
さとりかならず さだまらん
*回向句(願以此功徳・・)の和訳
その子古希 ブラシに残る白髪のよろこぶ夏はありがたきかな 合掌
日々感謝
緊急事態宣言が解除されてからしばらくして、例年「青春ジャーニー」と銘打って一泊旅行している高校時代の仲良し3人にメールしました。「我らの古希のお祝いはどーなるの?」一人からは、「96歳の父を筆頭に90越えの3人の親に移さないことを第一にしています。」あとの2人からも「残念だけど秋まで様子見かな」とのこと。もっともなことで反論できません。
その子二十 櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな(与謝野晶子「乱れ髪」)
私たちは、満18歳でした。土曜の午後の教室の窓の外には、ニセアカシアの並木。誕生日が近かったので、持ち寄りのお菓子とワインでお祝いしました。(赤玉ポートワインミニ?そんなことが出来たのだ!) 木漏れ日が、葉っぱを揺らす風が、全てが前途を祝福してくれているかのようでした。
初めてのお家に、臨終勤行に寄せてもらったのは5月の最後の日でした。82歳の男性。お連れ合いと息子さん、娘さんが迎えてくださいました。誰に対しても優しい、声を荒げたことのない穏やかな方だったそうです。4月の半ばに入院されたものの、連休にはお家に帰ることができ、また最期には先生の判断で病室に家族が集まり、いろいろ振り返って思い出話も出来たと喜んでおられました。看護師さんたちから、「お世話するたびに『ありがとう』と言ってくださったので、自分たちの方が癒された」という言葉をいただいて嬉しかったそうです。私は「まるで仏さまのような方ですね」と、思わず口にしていました。
お通夜では、お聞きしたことそのままお話させてもらいました。家族葬ということで、お孫さんや親族、数人のご近所さんだけのこじんまりとしたお葬式でしたが、故人を偲び悲しみに浸ることに集中できたお弔いだったように思います。旧知のお友達がたくさんでお見送りをするのもよかったのですが、「コロナ」情勢の下 での喪主さんの配慮がありました。
母が入院した時のことを思い出します。枯れ木のように痩せた体で担架に運ばれていったのですが、傍らの人ひとり一人に細い白い手で合掌していました。声にはならなかった代わりにそれは、全身で「ありがとう」を言っていたのです。係の人の肩越しに、その姿は尊く見えました。母は私に、老いて病んでいのち終えていくことの一部始終を見せてくれました。厳しく悲しいけれど、とても有難い、かけがえのない時間でした。
18歳のあの時に戻りたいとは思いません。振り返れば若く健康であった頃の私は傲慢でした。(えっ、今も?)
ほとけのみ名を 聞きひらき
こよなき信を めぐまれて
よろこぶこころ 身に得れば
さとりかならず さだまらん
*回向句(願以此功徳・・)の和訳
その子古希 ブラシに残る白髪のよろこぶ夏はありがたきかな 合掌