慶(きょう)聞(もん)抄(しょう)
2018(平成30)年4月号
(NO・53) 了雲寺 釈幸華
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/1b/0a33e540d6ba259db61930a8aed8108e.jpg)
樒の花
いぐも号
今年になって自転車を買い替えました。以前は、母から相続の骨董物のママチャリと、3×6段変速機塔載のマウンティンバイクの2つを乗り換えていたのですが、マウンティンバイクの部品交換に2万円もかかると言われて、それなら2台を廃車して新車を買うわ、となった訳です。着物のまま乗れるし、右ハンドルに4段変速ダイヤル付きと、2台の折衷型。スピード感はやっぱり物足りないですが、毎日乗るものだから頑丈さを選びました。そして、初めて名前を付ける気になって考えたのが、「いぐも号」
最近発表の芥川賞受賞作、若竹千佐子著「おらおらでひとりいぐも」からいただきました。作者は私よりちょっとだけ若い、同じ年代。帯の「青春小説の対極、玄冬小説の誕生」というのが気に入りました。
主人公は、夫を亡くし、子どもも家を出てひとり暮らしをする74歳の主婦桃子さん。
「亭主が死んで初めて、目に見えない世界があってほしいという切実が生まれた。何とかしてその世界に分け入りたいという欲望が生じた。それまでは現実の世界に充足していて、そんなことは考えもしなかった。」
「体が引きちぎられるような悲しみがあるのだということ知らなかった。それでも悲しみと言い、悲しみを知っていると当たり前のように思っていたのだ。分かっていると思っていたことは頭で考えた紙のように薄っぺらな理解だった。」
「もう今までの自分では信用できない、おらの思っても見ながった世界がある。そごさ、行ってみって。おら、いぐも。おらおらで、ひとりいぐも。」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/91/f1c31f336d069eb3f81446aeaa91a34e.jpg)
わすれなぐさ
悲しみは感動
「世間から必要とされる役割をすべて終え」「生きる上での規範がすっぽ抜け」て出会ったのは「幸せな狂気」「悲しみがこさえる喜び」でした。「悲しみは感動、感動の最たるもの」とまで。これって、自由ってことですよね!
孤独は自由の別名。魂の解放。近代人の永遠の課題。だから悲しい。(釈徹宗先生解説の『歎異抄』でも出てきました。だから厄介)
桃子さんの「切実」がどんな世界に分け入っていくのか、見守っていきたいものです。
恵信尼さま750回忌
「おらおらで・・」は、女性ならではの文学作品ですが、同時に老境にあっての孤独という性別を超えたテーマでもあります。そこが玄冬小説。むしろ男性の方がひ弱いのではありませんか。
先日、施設「第2好意の庭」にお邪魔すると、長寿のお祝いをしておられました。壇上に百歳を超えた3人が並びました。102,104,106歳!お花をもらっての挨拶の言葉もしっかりされていました!(全員女性でしたけど)
親鸞聖人は90歳、お連れ合いの恵信尼さまは87歳まで生きられたそうです。800年も前の時代では驚異的な生命力です。これは、命長き現代の私たちにとって有難いモデルです。そのご生涯を尋ねると、沢山のお手本を示してくださっています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/66/761b4ab236b49ce49709f70525ec3477.jpg)
恵信尼さまについては、もっと知られてほしいです。彼女は、親鸞聖人より先に法然聖人のみ教えにあっておられるし、越後に流されるときも、都に生まれた貴族の娘ながら、ご一緒されることを決意されました。聖人の帰京も、恵信尼さまの経済的な支えがあったらばこそでした。(筑波大学名誉教授・今井雅晴先生)
4月13,14日、本山で恵信尼さまの750回忌がお勤めになります。
私は如来さまと一緒に いぐも!
*人生下り坂最高(心のチャリ友 火野正平)
合掌
2018(平成30)年4月号
(NO・53) 了雲寺 釈幸華
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/1b/0a33e540d6ba259db61930a8aed8108e.jpg)
樒の花
いぐも号
今年になって自転車を買い替えました。以前は、母から相続の骨董物のママチャリと、3×6段変速機塔載のマウンティンバイクの2つを乗り換えていたのですが、マウンティンバイクの部品交換に2万円もかかると言われて、それなら2台を廃車して新車を買うわ、となった訳です。着物のまま乗れるし、右ハンドルに4段変速ダイヤル付きと、2台の折衷型。スピード感はやっぱり物足りないですが、毎日乗るものだから頑丈さを選びました。そして、初めて名前を付ける気になって考えたのが、「いぐも号」
最近発表の芥川賞受賞作、若竹千佐子著「おらおらでひとりいぐも」からいただきました。作者は私よりちょっとだけ若い、同じ年代。帯の「青春小説の対極、玄冬小説の誕生」というのが気に入りました。
主人公は、夫を亡くし、子どもも家を出てひとり暮らしをする74歳の主婦桃子さん。
「亭主が死んで初めて、目に見えない世界があってほしいという切実が生まれた。何とかしてその世界に分け入りたいという欲望が生じた。それまでは現実の世界に充足していて、そんなことは考えもしなかった。」
「体が引きちぎられるような悲しみがあるのだということ知らなかった。それでも悲しみと言い、悲しみを知っていると当たり前のように思っていたのだ。分かっていると思っていたことは頭で考えた紙のように薄っぺらな理解だった。」
「もう今までの自分では信用できない、おらの思っても見ながった世界がある。そごさ、行ってみって。おら、いぐも。おらおらで、ひとりいぐも。」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/91/f1c31f336d069eb3f81446aeaa91a34e.jpg)
わすれなぐさ
悲しみは感動
「世間から必要とされる役割をすべて終え」「生きる上での規範がすっぽ抜け」て出会ったのは「幸せな狂気」「悲しみがこさえる喜び」でした。「悲しみは感動、感動の最たるもの」とまで。これって、自由ってことですよね!
孤独は自由の別名。魂の解放。近代人の永遠の課題。だから悲しい。(釈徹宗先生解説の『歎異抄』でも出てきました。だから厄介)
桃子さんの「切実」がどんな世界に分け入っていくのか、見守っていきたいものです。
恵信尼さま750回忌
「おらおらで・・」は、女性ならではの文学作品ですが、同時に老境にあっての孤独という性別を超えたテーマでもあります。そこが玄冬小説。むしろ男性の方がひ弱いのではありませんか。
先日、施設「第2好意の庭」にお邪魔すると、長寿のお祝いをしておられました。壇上に百歳を超えた3人が並びました。102,104,106歳!お花をもらっての挨拶の言葉もしっかりされていました!(全員女性でしたけど)
親鸞聖人は90歳、お連れ合いの恵信尼さまは87歳まで生きられたそうです。800年も前の時代では驚異的な生命力です。これは、命長き現代の私たちにとって有難いモデルです。そのご生涯を尋ねると、沢山のお手本を示してくださっています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/66/761b4ab236b49ce49709f70525ec3477.jpg)
恵信尼さまについては、もっと知られてほしいです。彼女は、親鸞聖人より先に法然聖人のみ教えにあっておられるし、越後に流されるときも、都に生まれた貴族の娘ながら、ご一緒されることを決意されました。聖人の帰京も、恵信尼さまの経済的な支えがあったらばこそでした。(筑波大学名誉教授・今井雅晴先生)
4月13,14日、本山で恵信尼さまの750回忌がお勤めになります。
私は如来さまと一緒に いぐも!
*人生下り坂最高(心のチャリ友 火野正平)
合掌