2023(令和5)年 7月号(No.116) 了雲寺 釈幸華 |
慶聞抄(きょうもんしょう)
摂取不捨
刑法が改正され(6/16)、レイプは「不同意性交罪」に、先進国の中で最も低い13歳からとしていた「性交同意年齢」は16歳に引き上げられました。
従来、どれだけ抵抗したかなどと問われ、恐怖で体が動かない被害者の実態が理解されてきませんでした。2019年に性犯罪の被告に無罪判決が立て続いたことが女性の怒りを買い、フラワーデモが行われました。
女性弁護士たちは、(法律が作られた)明治時代の男性によって作られたのだから、女性による見直しが必要だと言っています。また、被害者が声をあげても脅迫や中傷をSNSなどで受けることがよくあり、それを恐れて被害に遭った男女の(男性も!)6%しか届けを出していなかったという現実もあります。
同じ日「LGBT理解増進法」が成立しました。L=レズビアン(女性同性愛者)G=ゲイ(男性同性愛者)B=バイセクシュアル(両性愛者)T=トランスジェンダー(出生時に判断された性にとらわれない人)。その後、Q=クエスチョニング(特定の範囲に当てはまらない人)というのも分かってきました。
しかし、法律の成立過程で、政治家の多くが「理解」していない、いや「理解」したくないということがよく分かりました。本来、自分の性のあり方を人に理解してもらうとかもらわないとか、ほっといて!の世界ではありませんか。
性的少数者と一括して呼ばれますが(電通の調査によると、日本には8、9パーセント、つまり40人のクラスがあれば3~4人がそれに当たる。そもそも公的機関による調査がないのが問題)、圧倒的多数が異性愛者ゆえ、無視、差別され続けてきました。
当事者たちが人権問題だと勇気をもって声をあげたので、やっと気づかれたわけです。しかし、「すべての国民が安心して生活できるよう留意する」との留意事項が新設されるなど、誰のための法律なのか疑問満載です。
Gセブンで日本に求められたのは「差別禁止」なのです。かわいそうな人たちだから、でもないのです。人間の尊厳に対して、数の多さで優位にある人たちが、数の少ない人たちに与えているいじめ、暴力だと言えばいいでしょう。
私は、もう5年も前になりますか、映画「ボヘミアン・ラプソディ」を見てゲイへの理解が進みました。英国のロックバンド・クイーンのフレディ・マーキュリー。一旦は女性の恋人と結婚しますが、自分の本当の気持ちに気づき悩みます。
そして、アラン・チューリング。名前だけは聞いていましたが、これも映画で知りました。第2次大戦下の英国で独軍の暗号エニグマ解析に取り組んだ天才数学者。今ではコンピューター科学の父と呼ばれていますが、当時の英国ではゲイは「違法」であり、罰せられました。
WHO(世界保健機構)が同性愛を国際疾病分類から除外したのは1990年のことです。それにしても、ゲイは「おっさんずラブ」とか言ってドラマになるのに、レズビアンはあんまりならないなぁ? ここに女性差別を感じてしまう私です。
人間は一人ひとり、全く違う。この当たり前のことに理解が至らない、困った存在。それゆえ、如来さまのおこころ、摂取不捨=誰ひとり見捨てない、が沁みてきます。 SDGs風に言えば
No one will be left behind. 合掌
学校行くの⁈ 行かないの⁈ 3
こんにちは、坊守の由美です。
最近は、公立学校の教員の離職率が高くなっているそうです。子どもも先生も精神的な理由で学校に行けなくなっているんですね。
Bさんの息子さんは、小学校の高学年頃から反抗期が始まり、Bさんと口をきけばケンカになるような日々が続いていました。ママ友に相談しても、思春期なので男の子はそんなものと言われ、そんなものかと軽く考えていました。
ある日、いつものようにケンカになり、その後部屋にこもり、一切口をきかなくなりました。Bさんは、毎日ドアを叩いたり大声で怒鳴ったりしましたが、効き目はありませんでした。
反抗期は成長の証です。
親に反抗的な態度をとったからと言って、親を信頼していないわけでも嫌っているわけでもバカにしているわけでもありません。
Bさんの息子さんは、口を開くとつい返す刀として悪い言葉を浴びせてしまう自分が嫌で黙っているのかもしれません。
親は、子どもの成長を信じて待つ力が必要ですね。
月下美人