2024(令和6)年 8月号(No.129) 了雲寺 釈幸華 |
慶聞抄(きょうもんしょう)
ムクゲ(木槿)=ムグンファ(無窮花)
韓国では、散っても咲き、また散っても咲く生命力の強さから
自国の歴史を踏まえて国の花にしています。
忘れたくない日本人
あるお家のお参りでお祖母ちゃん(と言ってもまだ若い!)のところに遊びに来ていた就学前の男の子二人組。遊びを中断して私の方をじっと見ているのが分かるので、お仏壇前に陣取るや否や「よし、そんならここに二人座り」と、左手後方を指図しました。素直に二人とも従うではありませんか。
「讃仏偈」のお勤めを終えてお念仏を称えていると、後ろから「お歌うたったの?」と聞いてくれます。「お経さんって言うんや」と答えて次に「重誓偈」もお勤めしました。体勢はちょっと崩れてはいるものの、まだいます。そこで、「お手伝いできる人」と呼びかけると、一人が寄ってきてくれたので「火消」をつまんで渡すと、お蝋燭の灯を消してくれました。大事なミッションが成功した後のドヤ顔! 後ろで見守っておられたお祖母ちゃんともどもほっこりできた時間でした。
たいていみんな子どもの頃はこんなに可愛らしかったことでしょう。このまま成長して大人になっていけたら、何も問題ないはずなのに、どうしてそうとは限らないのか。考えてみると、問題は子どもにあるのではなく、大人の方にあるのではないかと思われます。
6月のEテレ「100分で名著」は宮本常一(民俗学者1907~1981)の「忘れられた日本人」でした。探せば本棚のどこかにあるはずなのに、めんどくさくて本屋に寄ってみると、ご同輩がワンサカいるらしく、網野善彦の「『忘れられた日本人』を読む」まで用意されていて、まんまとのせられてしまいました。
「村の寄りあい」(対馬にて)がすごい。「いってみると会場の中には板間に二十人ほどすわっており、外の樹の下に三人五人とかたまってうずくまったまま話あっている。雑談をしているように見えたがそうではない。事情をきいてみると、村でとりきめをおこなう場合には、みんなの納得のいくまで何日でもはなしあう。」
それがはんぱない。「夜も昼もなく、暁方近くまではなしあって眠たくなり、いうことがなくなればかえってもいい。」「気の長い話だが、とにかく無理はしなかった。・・・だから結論が出ると、それはキチンと守らねばならなかった。」多数決でさえあればどんな状態でも民主主義と思い込んでいる輩に読んでほしい。
また女性たちの生き生きした実像が伺える「女の世間」・・宮本さんの故郷、周防大島・・「はァ、昔にゃ世間を知らん娘は嫁にもらいてがのうての、あれは窯の前行儀(?)しか知らんちうて、世間をしておらんとどうしても考えが狭まうなりませけにのう、わしゃ十九の年に四国をまわったことがありました。・・女の友達三人ほどで出かけた事がありました。・・どこへとめてもろうても芋ばっかり食わされての、それでもみな親切で宿に困ることはなかったんでありますで・・。」
父親が何も知らない間に、母親と示し合わせてすでに出ている友人を頼って逃げ出す若い娘も。旅の文化や他郷の言葉を身に付けることが女たちの一つのほこりであったとのこと。
何も、昔はよかったというつもりはありません。でも、網野さんが解説している中で宮本さんが残した言葉があります。「いったい進歩というのはなんであろうか。(中略)進歩のかげに退歩しつつあるものを見定めてゆくことこそ、われわれに課されている、もっとも重要な課題ではないかと思う」
我行精進 忍終不悔
(私は努力精進し 決して後悔することはありません)*「讃仏偈」末尾
合掌
教区新報掲載アンケートに答えて
石川南組 了雲寺 和田由美
1、どんな僧侶になりたいですか?
唯一無二の僧侶でありたいと思っています。たまたま入った寺に私という僧侶に出会ったのではなく、私という僧侶を目がけて寺に行きついたというくらい、影響力のある僧侶を目指しています。私を通して若い方にも宗教を身近に感じていただけたらと思います。
2、得度習礼の印象は?
体力的にも精神的にも厳しかったです。若い方々に助けられ何とか乗り切りました。
3,座右の銘を教えてください
「笑てもてナンボ」
新しい挑戦をするときに、例え失敗してもネタになると思うと勇気が出ます。自分の挑戦で周りの人に勇気を与えたい。
4,行きたいところ
タイ、バンコクの寺院めぐり
メキシコ、オアハカ州の死者の日の祭り
5、最近読んだ本
大愚和尚の「自分という壁」
6、将来の夢は何ですか
世界の様々な宗教の起源や成り立ちを見聞し、人間の真理を学びたいです。浄土真宗のみ教えを現代人の生活に落としむべく、ユーモアを大切に全国に発信したいです。世界にも大乗仏教の素晴らしさを発信していきたいです。
*大阪教区新報『samgha』8月号に掲載されました。本体は、いろいろ省略されたので、ここには原稿をそのままあげさせてもらっています。
宮本常一先生に「忘れられた夫たち」という本を書いて欲しかった!