What A Wonderful World

毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

五十嵐貴久 1985年の奇跡・他

2006年07月18日 11時41分15秒 | 
 双葉社と幻冬舎と新潮社から、それぞれ同名の小説が発行になっているので、どうも作品発表順に自信がないのですが、図書館で借りた本の発行日を基準にしました。

★1985年の奇跡(2003.7 双葉社)

 高校時代、おにゃん子倶楽部のメンバーで、誰が一番可愛いか喧嘩した事ありますか?そんな過去をお持ちの男子&冷ややかな目でそれを見ていた女子の皆さんには、もの凄いリアルな時代ネタや話題が、ばんばん登場するお話です。

 あらすじよりも、その小ネタを延々語りたい気持ちで一杯ですが(笑)ご存知ない世代に説明するのは大変なので、各自調べたり想像したりして下さい。
(この小ネタ満載感覚は漫画の”絶望先生”に近いです)
もうね、女子高ソフト部のグランドを借りて練習するくだりなんて、可笑しくて可笑しくて、名文ばっかりです。

 勿論、野球を愛する少年たちの感動のお話なのですが、それに加えて、物凄くバカばっかりやってた青春時代を見事に書ききったお話だと思います。
「性の嗜好」の差別を、こんなに明るく笑い飛ばす方法は、現実では有り得ないと判っていますが、その一瞬、本当に何もかにもが受け入れられ、ただ野球をする喜びに包まれたであろう彼ら&彼女らが、愛おしいです。


★交渉人(2003.4 新潮社)

 一度読み終わって、また最初から読み返す事間違いないカラクリ&哀しさ。
実は、三分の一まで読んで「あれ?これってどこかで読んだ事ありそうなカラクリかも?」と思ってしまいました(笑)結果は、その通りだったんですけどね。なので、カラクリはありがちと思いましたが、まさしく血を吐くような犯人たちの苦しみに、酷く心が揺さぶられました。

 もし、自分の家族が同じ目に遭ったら、貴方ならどうしますか?何十年も法廷で戦いますか?・・・これがまっとうな答えです。ですが、残された家族を養い、自分の健康を犠牲にし、時間の癒しを受け入れるのがまっとうなんだろうか?と必ず疑問に思われるはずです。人間の歪み、醜さ、狡さを諸悪の根源である人たちに見がちですが、犯人たちの心情にも、同じくそれがあるのです。それが哀しく心に深く響きました。


★安政五年の大脱走(2003.4 幻冬舎)

 直木賞の候補になったと知って、成る程「候補」にはなるかもと思いました。
史実に絡めた架空のお話なのですが、それぞれのキャラクターが個性豊かで、一気に読めました。読めましたが、それ故に突っ込みどころがあちこちにありました(笑)当時の冬の東北の寒さは、いくら武士根性でも克服出来ないんじゃないかな?遺体の始末ってどうやったんだろう?血まみれの着物は臭いと思うけど・・他、お姫様の脱走の仕方も「有り得ない」と言ってしまえばそれまでなんですが、ですが、そこは五十嵐さんのエンタテーメント豊かな筆力でしょうね、ま、良いかと思ってしまいます。

 なので、その後の作品には、もっと裏付けや骨組みがされて来たのかな?と、作家さんの作品を続けて読む面白さを味わえました。


★2005年のロケットボーイズ(2005.8 双葉社)

 満を持しての五十嵐節全開なお話でした。
これは面白いですよ!でも「基盤の制作過程は有り得ない」と工業科出身の方が仰ってましたが、だいぶ現実に沿った”キューブ”作りなんだそうです。

 これも「1985年~」と同様に、個性豊かなキャラたちのあれやこれやが大変面白く、不可能にぶち当たった時の人間の可能性と耐久性(爆笑)人間の手の及ばない大きな力に、感動しました。

 実は、このお話の始まりの部分は、何十年後かの主人公の現在の仕事場から書かれます。それは終わりの部分にまた引き継がれて書かれるのですが、その彼がカッコイイ!そう、その自信こそ、あのバカで無茶苦茶な青春の1ページがあったからなんだ、と力強く語ってくれるくだりが、大好きです。

 「1985年~」よりも、広い世代にリアルに感じられる設定と登場人物の悩みが、五十嵐さんが上手くなって来たんだと感じられて嬉しいお話でした(生意気ですみません)

 まったくの余談ですが、このお話TVドラマ化されてたんですね!2006年1月から3月まで、テレビ東京で「ロケットボーイズ」という題名で放映されていたそうです。勿論地方では放映されませんでした(怒)
 しかも主演のカジシン役が遠藤雄也さん、ドラゴン役が柳浩太郎さんなのですよ!(ここでピンときた貴女!同志です・笑)そう、テニミュの初代&二代目越前君役のWキャストだったんですよ!うひゃ~と思いました(笑)レンタル探したらあるかしら?もしドラマを観た事がある方がおいででしたら、ぜひ感想をお聞かせ下さいね。 



 で、本当は第2回ホラーサスペンス大賞を受賞した「リカ」を読まないのは、手落ちだと重々承知しているんですが・・・ですが怖い(涙)私にはまったく読めない怖~いジャンルで傑作を書いておいでなのです。どうぞ、お好きな方、張り切ってお読み下さい。
コメント (2)
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