日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

アビガンの効果

2020年05月13日 | 日記

アビガンの効果

 

1.5月11日、「コロナ薬『アビガンの安全性・効果のデーターはそろっている』は本当か」という

記事が、Webに載りました。記事を読もうとすると、その記事を紹介しているサイトから、‘YAHO

O JAPAN ニュース’にジャンプし、そこに掲載されていましたので、方々で紹介されているもの

と思います。

 

2.記事の趣旨は、「アビガンを承認するにも、手順を踏んだ検証が必要です」というものです。こう

いう記事を取り上げる場合、書き方によっては「名誉棄損だ、どうのこうの」という話にもなって来ま

すので、当たり障りなく書きます。

 

3.記事中に「現時点では、アビガンについては複数の観察研究と1件のRCT(ランダム化比較試験)

しかない」、「1件のRCTについては、中国で少数の患者を対象として、アビガンと別のインフルエ

ンザ薬を比較したものであるが、両者に有意な差はないという結果であった」とあります。こういう場

合、一般の読者向けのメディアへの発表とは言え、書かれた内容を裏付け、書かれた内容を読者が納得

する論理展開と典拠となる内容を明らかにして頂きたいものです。

 

4.私は、今回の新型コロナウイルスが、中国・武漢のウイルス研究所からの流出が疑われるというイ

スラエルから発信されたニュースを目にして以来、これは大変だと思い、その後の経過とニュースに注

意を払って来ました。それらのニュースの一つに、「中国では、新型コロナウイルスによる感染症肺炎

に対してアビガンが有効であり、そして、2019年にアビガンの物質特許は切れているものの、製造

特許は続いているため、それに触れない形で、後発の薬(ジェネリック医薬品、中国での名称は『法匹

拉韋』)を作っている」という記事がありました。

 

5.アビガンと、アビガンの後発品である『法匹拉韋』とは異なる中国の製薬会社が独自に開発したイ

ンフルエンザ薬を、RCTにおいて比較し、両者に有意な差はない』のであれば、彼らは『法匹拉韋』

ではない別のインフルエンザ薬を使えばいいのであって、もし彼らがそうしているのであれば、先に記

した「中国ではアビガンが有効であった」、「アビガンの後発品を作っている」というニュースにはな

らないと思います。また、彼らがアビガンと比較したインフルエンザ薬は、アビガンの後発品である

『法匹拉韋』かも知れないのです。この場合、両者は成分が殆(ほとん)ど同じですから、「有意の差」

は生じません。

 

6.このように、書こうとする記事で示そうとする、「アビガンと別のインフルエンザ薬を比較し、両

者に有意な差はない」という「事実」は、典拠とする事実によって、論拠を失う場合が多くあります。

でありますから、誤りのない事実の確認は、念を入れて行う必要があります。

 

7.この論者の示されている疑念は、「アビガンの安全性・効果のデーターはそろっている」と言える

かという所にあります。

 

a.第一に、アビガンは、厚生労働省が平成26年3月24日付で、「新型又は再興型インフルエンザ

ウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)」

を効能又は効果として承認しています。

 

b.そして更に、平成29年3月3日付で、承認取得者が提出した追加の臨床試験によって、厚生労働

省は承認条件を変更しています。その内容を、次に添付します。

 

別添:ファビピラビル製剤の承認条件変更に当たっての留意事項について
(平成29年3月3日付通知)

 

 

c.今回の新型コロナウイルスが引き起こす感染症は、アビガンの平成26年3月24日付の承認条件で

ある「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効

又は効果不十分なものに限る。)」、平成29年3月3日付の「ファビピラビル製剤(注:アビガン)の

承認条件変更に当たっての留意事項」の「2.本剤の効能または効果について」で、再度示している

「他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なもの」に該当するものと言うことができます。

この場合、新型コロナウイルスへのこの条項の適用をもって、新型コロナウイルス感染症へのアビガンの

使用は可能となります。

 

8.今、世界では、新型コロナウイルスの感染の有無を判別するPCR検査によって、陽性であると判別

された感染者が、世界で4233000人、日本で16000人を超え(PCR検査を受けていない感染

者はもっと多いと言います)、死亡者が、世界で289000人を超え、日本で678人(Google

2020.5.13)に及ぶ、非常時です。非常時には平時とは違った決断をしなければならない時があ

ります。論者が疑義を呈(てい)されていらっしゃる先生は、それを述べられているに過ぎません。また、

この先生はiPS細胞作製の発見者であり、臨床経験をお持ちです。大家の言がすべて正しいとは申しま

せんが、この先生のもとには、現在の新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)感染症(COVID

-19)の臨床例が数多く届けられているものと思います。発言は、これらの臨床例を踏まえられてなさ

れたものであろうことを考えると、発言に疑義を呈するところはない、という結論に至ります。

 

 

                                                                       空

 

 

 

 
 
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