日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

NISA実践講座 その3

2015年06月22日 | 日記

NISA実践講座 その3

 

今日はジョージ・ソロス氏について書きます。

 

1.ソロス氏はハンガリー生まれです。氏を考える上で重要なのは、氏の少年期にハン

ガリーはナチス治下となり、続いてソヴィエトが占領する所となったことです。二つの

恐怖政治と全体主義を経験されています。1947年にロンドンに移られ、1949年

にロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに入学されました。そこにはニュージーラ

ンドから移られて教鞭を取られていたカール・ポパー教授がありました。ソロス氏は、

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに入学する前パー教授の“The Op

en Society  and Its Enemies(邦訳:『開かれた社会と

その敵』)”を読まれ、「『啓示を得る』という体験は、こういうことなのかと

うほどに」 (引用:“The New Paradigm for Financi

al Markets - The Credit Crisis  of 2008 a

nd What It Means” <邦訳:『ソロスは警告する』>)強烈な読書体

験をされています。卒業して何年間かは職をいくつか変えられた後、ロンドンで、株や

為替等の裁定取引を行う会社に就職されました。この後の成功は、『ソロスの錬金術』

を執筆する所となったと、氏は書かれています。

 

2.氏は、投資家として成功された自由主義者であり、哲学者です。氏の哲学の根幹に

は、第一に、「人は誤る」という人類の可謬性に対する警鐘、第二に「人は物ごと

を見るとき、期待や偏見を持って対象に関わり、対象を操作しようとする。或いは、対

象への期待や偏見を持たされて行動を起こす。これらの惹起された行動の集合は、しば

しば増幅されたものとなる」という、人の性向が生み出す二つの人間の危機への警鐘

あります。この哲学の根幹(人間への危惧)が氏独特の「再帰性」という考え方によっ

て、氏の世界観を作り出しています。「再帰性」という考えは、私のような凡庸な日本

人にはとても分かりにくい考え方なのですが、理解した所を書いてみます。先ず、ユダ

ヤの人々は、例えば、画家で言えばシャガール(敬称は略します)や、科学者で言えば

アインシュタイン(同)のように非常に空間認識において優れたものがあり、ソロス氏

もその一人なのだと思います。これは、その昔、モーゼが、「神の名を呼んではならな

い」、「神の像を結んではならない、刻んではならない」とお命じになったことに由来

していると、私は考えています。つまり、考えられるものは空間しかなく、それによっ

て空間認識が卓越したものになったと思うのです。(これを書いている時点ではソロス

氏の宗教は不明です。また、氏は、「過去のパターンを現実の事態の進展と絶えず比較

することだ(前掲書)」と、述べられていますのでそういう作業の積み重ねによって氏

の現実への洞察が形作られているとも言えます。

 

3.「再帰性」という考えは、例えば、地球をひとつの空間として捉えます。この空間

には、(暫定的に地球の)時間軸上(宇宙でもいいのです)に多種多様の人々が存在

し、様々な国家、宗教団体、企業、グループが存在します。そしてこの空間のある時間

を考えれば、この時間tの上でこの空間内の人々は同時に何らかの行動を行っています。

そして時間が動き t1 となります。この時間 t1 の上では、先程の行動(これを時間

t 上の行動 At とします)の結果は、期待やバイアスがかかった時間t1 上の結果

= 最初の各々の期待や予測に⊿偏差が生じた⊿At1 となります。そして再び時間が動

き t2 となります。この時、空間内の人々(P1,P2,P3,--------- max地

球の人口)と国家(N1,N2,N3,--------,Nx)、宗教団体(R1,R2,R

3,--------,Rx)、企業(C1,C2,C3,--------,Cx)、グループ(G1,

G2,G3,--------,Gx)には、各々の期待や予測に⊿偏差が生じた⊿At1が作用

し、それぞれの主体は、これに内省なり反省を加えて次の操作なり行動(At2)を行

います。そして再び、時間 t2 上の結果 = ⊿At1から更に各々の期待や予測に⊿偏差

が生じた⊿At2、 或いは修正された⊿At2' を得ます。このように、地球や宇宙空間

内に存在する、P1,P2,P3,--------- max地球の人口、N1,N2,N3,--

------,Nx、R1,R2,R3,--------,Rx、C1,C2,C3,--------,C

x、G1,G2,G3,--------,Gxといった各主体が、操作や行動を起こすにあた

って対象と世界を認識(認知)している内容と、その結果には、当初の期待や予測から

しばしば⊿偏差が生じ、世界はこの繰り返しによって時間軸上を変化し続けます。

 

4.ソロス氏は、この世界に対し主体が持っている認識と、それに基づいて主体が行う

操作・行動とそこに生じる各々の期待や予測から⊿偏差を生じた結果との双方向的な関

係を、「再帰性」と定義されています。そしてお断りしておきたいのは、ソロス氏はこ

の「再帰性」の定義において、世界の認識(認知)→人間の理解という大切なプロセス

を置かれています。このプロセスは、上記の説明で言えば、地球の上で進行する或る時

間tにおいて、人々が起こす行動 At は、⊿At1 ⊿At2,⊿At2' → ⊿At3 ----

⊿Atx へと続く中で、人々は、それぞれの行動や結果に対して、内省なり反省を加え

て、人間を含む対象と世界を理解しようとすることです。

 

5.ソロス氏の「再帰性」の定義式を記して置きます。

 

定義式

FC(W) ⇒ U

FM(U) ⇒ W

 

F:Function (関数・機能) 

C:Cognition (認知)

W:World (世界)

U:Understanding (理解)

M:Manipulation (操作)

 

5.上記がソロス氏の哲学であり、世界に対する理解です。特筆すべきは、私などの凡

庸な頭ではソロス氏が書かれていることを、時間と空間世界、及び、主体と対象に対す

る操作や行動によって生じる、期待値や予測値からの偏差について、他の人に伝えよう

とする場合、細かく記号に振り分けて考えなければ氏の述べられていることを十分に伝

えられないだろうと思うのですが、氏の時間と空間の認識においては、それらのものを

不要とし、世界が捉えられているということです。これは稀有の能力だと思います。 

 

6.また、本稿はNISAの実践講座として、私を含めて投資の初心者のために書いて

いますから、ソロス氏のポジション取りについて述べて置けば、氏は投資の世界で⊿偏

差の大きい所にポジションを置いて来られたということです。これはソロス氏の経歴を

もってして可能なことで、誰にでもできることではありません。投資を行う者の気構え

のようなものとして捉えて頂ければ幸いです。また、氏の気魄が伝われば幸いです。そ

して、現在のソロス財団は、慈善事業や自由世界を護(まも)るための資金運用という

ように変っているようです。

 

 

              夕焼けの空

 

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