日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

一本のロイター記事

2018年06月28日 | 日記

一本のロイター記事

 

A.アメリカ・ネバダ州、州議会下院選共和党候補者指名選挙

 

1.2018年6月26日のロイターは、アメリカ・ネバダ州、州議会下院選共和党候補者指名選挙

において、「ピンプ(ポン引き・売春斡旋業)」を自認するデニス・ホフという71歳の男性が、指

名を獲得したことを、Tim Reid記者が述べ、「彼の政治的躍進は、『トランプ時代』におい

て有権者の意識が根本的に変化し、共和党がかき回されただけでなく、米国政治がひっくり返された

ことを示している」と、書いています。

 

2.ホフ氏は、3度の離婚歴があり、『ピンプの美学』という本を書き、ストリップクラブ1軒と合

法売春宿5軒を営んでいると言います。また氏は、「パーハンプ(パランプ)のトランプ」というキ

ャッチコピーを売りにして選挙に臨んでいると言います。パーハンプ(パランプ)地区の東には50

kmほどでラスべガスがあります。北西にカーソンシティがあります。グーグルの地図で見ますと3

方を山で囲まれた砂漠地帯です。

 

3.更に、記事を読みますと、ホフ氏の営む売春宿5軒のうち4軒はカーソンシティの東に位置する

リヨン郡にあります。そして、ロイターのインタビューを受けたのがカーソンシティ近郊です。これ

から、氏の経済基盤はパーハンプ(パランプ)地区にはなく、おそらく、氏は、その地区の福音主義

教会への寄付等によって教会の支持を得て、共和党福音主義者の支持をネバダ州域に広げているのだ

と思われます。

 

4.本題です。記者は、「ピンプ」の世界で生きて来たホフ氏が、アメリカ州議会とは言え、政治の

世界のわらじを履(は)こうとしていることの現実を、従来の福音主義教会を基盤とする共和党支持

者、とりわけ「保守的なキリスト教徒の多くが、共和党のエスタブリッシュメントに対する信頼を失

っている。現代米国で脅(おびや)かされている価値を守るために戦っていない、というのだ」と書

いています。これを私達はどのように考えれば良いのでしょうか?

 

5.イエスに思いを致せば、石打ちに遭っていたマリアを救われたのはイエスであり、イエスの御足

(みあし)に最期の香を塗って差し上げたのはそのマリアです。女性たちは救われる身にあります。

この救いとはどのようなものであるか、アメリカでは数多くの議論がなされて来たことでしょう。一

つには社会的な救済としてあり、一つには信仰に基づく救いとしてあります。

 

6.社会的な救済を行ってきたのが、アメリカの社会と制度の在り方に係わって来た共和党と民主党

の人々です。そして現在の制度があります。そして、私達は、このアメリカの制度設計の思想がどの

ようなものであったか、その一つの指標として、ハーバード大学・マイケル・サンデル教授の『正義

の話をしよう What’s the Right Thing to do?』を挙げることができます。そしてもう一方の指標

に、J・グレン・グレイの『戦場の哲学者 戦争ではなぜ平気で人が殺せるのか THE WARRIORS

REFLECTIONS ON MEN IN BATTLE』を挙げることができます。前者は、正義という理念の下での

現実の選択を問うものであり、後者は、第2次世界大戦におけるヨーロッパ戦線下にあった兵士のリ

アルな省察を書き綴ったものです。そして、前者と後者の比較において言えば、眼前の戦場を前にし

て兵士である自分の周囲に生起する様々な事態にリアルに反応し対応して行く行動の記録である後者

の方がリアリティにおいて優れています。

 

7.そして、このアメリカの正義が、現実に生起するリアリティを前にして対応仕切れなかったとい

う現実が、「パーハンプ(パランプ)のトランプ」を生んでいると考えてよいと思います。しかし、

かと言って、アメリカの正義が、ホフ氏のようなオールド・アメリカンの価値観によって代弁されて

良いものではありません。ホフ氏は、オールド・アメリカンの価値観の所有者として、神を畏(おそ)

れ、女性たちの幸せを最大に願う謙虚さが必要だと、本稿は思うのです。パーハンプ(パランプ)の

福音主義者たちも同様です。ネバダのキリスト教徒は、州の公娼宿を廃止し、女性たちの救済の運動

を起こすべきです。それがキリスト者の道だと思います。そして、現実の道だと思います。

 

 

                                                           6月の空

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