日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

やはり日本相撲協会・貴乃花理事を擁護する

2017年12月30日 | 日記

 

やはり日本相撲協会・貴乃花理事を擁護する

 

A.日本相撲協会・臨時理事会による貴乃花理事解任の決議

 

1.2017年12月28日、日本相撲協会・臨時理事会は貴乃花理事解任を決議し、1月4日の評議委

員会を招集しました。率直に言って、この決議は、元横綱日馬富士関による暴力傷害事件を生むに至った

日本相撲協会全体とその理事長である八角信芳氏の責任を回避し、責任の所在を貴乃花理事の報告の有無

と、貴乃花理事の言葉のはしをあげつらってその資質を云々(うんぬん)して、責任を貴乃花理事に転嫁

(てんか)する極めて作為的なものと言わざるを得ません。

 

2.先ず、危機管理委員会(高野利雄委員長)が公表した理事解任の根拠について、そこでは、第一に.

「報告義務の懈怠(けたい)」を挙(あ)げ、その理由を書き連ねています(参照:JIJI.COM)。

しかし、貴乃花理事は、理事として巡業部長としてその職責を果たされており、理事解任までの理由に

該当しません。

 

3.それを述べます。発端は、秋巡業の鳥取市内で貴ノ岩関の出身高校の皆さんの主催による親睦会の

酒席で、10月25日の深夜(危機管理委員会の文書では26日未明となっています)、貴ノ岩関に対す

る元横綱日馬富士関による暴力傷害事件が発生します。10月26日、貴ノ岩関は、鳥取市内の病院で

頭部縫合治療を受けられます。同日、貴乃花親方に貴ノ岩関は、「階段から落ちた」とか「酔っぱらって

転んだ」とかというような趣旨の説明をされたと言います。貴乃花親方はいろいろ質問されたのでしょう。

その上で貴乃花親方は、酒席には、横綱白鵬関、元横綱日馬富士関、横綱鶴竜関、元大関の照ノ富士関、

石浦関の他に高校関係者の同席もあり(ここまで聴き取られたかは不明です)、事件がどのようなもので

あったか、貴ノ岩関の説明だけではよく分からず、また、角界外の人を巻き込んでいるかも知れず、そう

であったら、この事件の解明を相撲協会内のみで行うことはできない、また、相撲の興行は続けなければ

ならず、いろいろ考え、ここでは警察に被害届を出し、解明を警察に委ねることを決断された。

これは貴乃花親方の相撲協会理事と巡業部長としての決断です。そして、貴ノ岩関は、10月28日、

広島市内の病院で診てもらった後、翌10月29日に、貴乃花親方と一緒に鳥取県警に赴(おもむ)かれ、

被害届を提出され、11月の九州場所は休場されています。

 

4.さて、この件の貴乃花理事の協会への報告ですが、貴乃花理事は、貴ノ岩関に同行されて鳥取県警に

赴かれた際に、担当者が捜査上の要請として「口外しないでください」という趣旨のことを述べていると

思われ、またこれと関連した会話の中で県警担当者が「相撲協会へは県警から連絡します」と確言したと

思われます。事実、相撲協会には鳥取県警から11月1日に捜査への協力の要請が入っています。

貴乃花理事は、これを以って相撲協会に対する連絡と報告の義務は果したと考えていらっしゃいます。

被害届の提出から3日後には県警から相撲協会へは連絡が入っています。

 

5.ここで危機管理委員会が言う「報告義務の懈怠」を考えるに、上記の貴乃花理事の対応が本当に

「報告義務の懈怠」に当たるかどうかは、それは該当しないとはっきりということができます。第一に、

事件への対応としてはこの処置が最も適切なものであったこと。第二に、この処置を相撲協会の理事であ

る巡業部長として行われたこと。第三に、相撲協会に鳥取県警から捜査協力要請の連絡が入った後の11

月3日、貴乃花理事に鏡山危機管理部長が事件の事情を尋ねられており、この時、貴乃花理事は「貴ノ岩

が怪我をした。被害届を出した。具体的なことは分からない」旨を答えていらっしゃいます。

この会話を以って、事件の「見做(みな)し報告」とすることができます。

 

6.この後の流れについては、テレビ等で見る通りです。しかし思うに、近年、巷間(こうかん)では

「劇場型演出」というのが浸透しており、貴乃花理事の印象度を下げようとする演出がなされたようにも

感じています。

 

7.次に、危機管理委員会が言う「調査の協力拒否」について述べます。貴乃花理事の基本スタンスは、

調査には協力する、協会は相撲界の大事な組織であるというものであり、かつ、分からないことはしゃべ

らない、そしてこの事件の解明は司直に委(ゆだ)ねるというものです。事実、11月30日の理事会に

おいては、ここでは警察、検察の混乱があったと思われ、警察の捜査が終わったら調査に応じる旨を発言

され、後で検察の捜査終了時と訂正され、検察の捜査終了後の12月19日には貴ノ岩関の聴取に応じら

れています。であるのに、11月30日の理事会は、事件に同席し、事件の口火を切った横綱白鵬関の

発言と思われる「貴乃花理事の巡業部長のもとでは巡業に参加できない」という声を聞き入れ、

貴乃花理事を冬巡業に同行させないことを決めています。このような理不尽なことがありましょうか?

これら一連の経緯(けいい)が示すものは「調査の協力拒否」には該当しないと言えます。

 

B.ガバナンスについて

 

1.八角理事長は、11月28日、スポーツ庁の鈴木大地長官を訪ねられ、この暴力事件を謝罪されまし

た。その折、鈴木長官は、a.説明責任を果たすこと、b.ガバナンスの強化、c.コンプライアンスの

徹底を要請されたと言います。

 

2.率直に言って、11月20日、相撲協会が理事会で決めた理事長をはじめとする関係者への処分も、

12月28日に決めた貴乃花理事解任と降格処分も、今回の事件に対して説明責任を果たしたことにも、

ガバナンスの本質を示すものでもありません。確かに、ガバナンスには組織内の一員を痛めつけ、排除し

ようとするガバナンスもあります。しかし、私達はそういうガバナンスを好みません。ガバナンスには良

いものと悪いものがあり、良いガバナンスを望むのです。

 

3.相撲部屋と言えば、若い男衆の集団で、それが一つの部屋で起居を共にし、横綱目指して稽古(けい

こ)に励まれるのですから、そこで躾(しつけ)とか、兄弟子、弟弟子とかの関係が、陽性の健全さを

保って維持されて行くには、親方や女将(おかみ)の並々ならぬ御苦労がありましょう。この陽性の健全

性こそすべてのスポーツに期待されるものです。そしてそれこそが私達に勇気と活力を与えてくれます。

角界が、今回の暴力傷害事件を契機に、この陽性の健全性を取り戻してくれることを願って止(や)みま

せん。

 

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