日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

中学生、高校生のための自由主義講座 16 -パブリックな意思決定を考えよう! (2)-

2019年01月19日 | 日記

(1)からの続きです

 

パブリックな意思決定を考えよう! (2)

 

E.明治から先の大戦の敗北まで

 

1.明治維新により、日本は明治天皇が宣布された欽定憲法を作り、日本国民は天皇の

臣民なりました。また、天皇は日本国の統治権と陸海軍の統帥権を得られ、その憲法

は、今改めてこの憲法(旧憲法=『大日本帝国憲法』)を読み忌憚なく思う所を申し上

げるに、日本の差し迫った危機を意識し、それに対応するための(いわば戦時)憲法と

なっているということが言えます。これは、幕末、明治初期の日本の置かれた緊迫感を

反映したものと言って良いでしょう。そして、この憲法下で、日清、日露の、相手国が

清朝、ロマノフ朝といった王朝国家で、地域が限られた戦争である場合は、勝つことが

できました。しかし、相手国がアメリカ、イギリスと言った近代国家の場合、特に、ア

メリカとの総力戦においては、完膚なきまで彼我の工業力の差を見て、敗北しました。

 

2.何故負けたか、何故無謀な戦争を仕掛けたのか、何故無謀な作戦を立てたのか、考

えるのですが、私は軍人ではありませんので、現在の自衛隊の作戦参謀に当たる自衛官

の意識は分からないのですが、今、古代から明治までの天皇制を概観してみるに、戦前

のいわゆる大本営と作戦参謀の意識は、征夷軍の意識に近いものがあったのではないか

と思う所があります。それは、現地派兵であり、派兵部隊による現地調達であり、現地

の施政です。現代の戦闘は、アメリカによる地域戦と言えども容易に勝利することはで

きなくなっています。敵を圧倒する兵器兵員、兵站、補給が必要なのです。そして日本

は孤立してはならないのです。

 

F.現代

 

1.日本は第二次大戦での敗北により、現在の『日本国憲法』を、旧憲法を改正すると

いう手続きを踏んで、得ました。この憲法で天皇は象徴となられ、国民は主権者となり

ました。『日本国憲法』は、主語を日本国民で書く優れた憲法です。

 

2.D.で述べた「公(おおやけ)」に対比される「私」の領域は、現代では、お金

(資本)を集め、そのお金を使って、支払ってもらうお金(対価)を得ることのできる

商品や施設、業務(財やサービス)を作り出し、それらを求める社会の人達に提供し

て、利益を得ることを目的とする行為(営〈いとな〉み)を組織的に行う企業へと移り

ました。この企業を、法的には「法人」と呼びます。法人には色々なものがあります。

営利を目的とする私企業である会社、その他に、公益法人、社団法人、財団法人、NPO

法人、公庫、基金、金庫、銀行(日本銀行)、公社、機構、協会、連合会、社、会、事

業団、会議所、組合等、たくさんあります。そこでここでは私企業を含めてそれぞれの

団体・組織を便宜的に一つの名称で表すことにし、それを「企業」とします。ここで

は、それぞれの私企業、団体、組織は、それぞれ企業1、企業2、企業3、-------、企業

∞となります。これらの企業の定義は、非営利法人もその存続のためには利益を上げな

ければならないのですから、この項で先ほど述べた企業と同じものを使用し、企業の定

義1とします。

 

3.今、企業は公器であると言われています。そして、社会を益することのできない企

業は存続できません。これが企業についての定義2です。ここで企業をもう一度定義し

ます。

 

企業

定義1:お金(資本)を集め、そのお金を使って、支払ってもらうお金(対価)を得る

ことのできる商品や施設、業務(財やサービス)を作り出し、それらを求める社会の人

達に提供して、利益を得ることを目的とする行為(営〈いとな〉み)を、年間を通し、

そして、年度を継いで循環して(繰り返して)、組織的に行う組織や団体。

 

定義2:企業は公器であり、社会を益することのできない企業は存続できない。

 

4.では個人はどうでしょう。今では、フェイスブックやツイッター、ユーチューブな

どのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、或いは、ワードプレスなど

の自分のページへ、自分の近況や意見、アピールしたいパフォーマンスなどを、アップ

ロードすれば、世界中の人がそれを読んだり、見たりすることができ、そこに意見や感

想を書き込むことができます。このような個人は、フェイスブックやツイッター、ユー

チューブにいる自分はまさに自分であり、そこに若いお母さんが自分の子供のお弁当を

アップロードすれば、それは子供のお弁当に仮託して自分の世界を投影しているのであ

り、それは一種の自己主張と言えます。ここには犯罪もあり、ウイルスによる感染は常

に付きまとっており、必ずしも安全な所とは言えないのですが、個人の世界は、昔、世

界との間に持っていた隔壁を取り除きつつあり、これは今後も進みます。インターネッ

トはドラエモンの「何処でもドア」の役割を果たしていると言えます。ここでは、個人

の領域と世界は非常に近く、とは言っても、そこで表現する個人の領域は、世界から評

価を受けて、やっとそこに在ることができているのです。

このような個人の更に私領域というものを考えてみましょう。そこに隠すものはあまり

なく、これはインターネットに限らないのですが、特にインターネットでは個人の持つ

特性はその人の持つ個性となり、それをインターネット上で表現することによって得ら

れる共感の輪は、インターネットの無い世界とは比較にならない大きなものを得ること

ができるのです。闘病記や奮闘記、出世物語などの良質のものは、人々の共感を必ず呼

ぶことでしょう。これとは逆に、インターネットに表示し、表現しているものの下に何

か隠すものを持つ人は、フィッシング詐欺師であったり、悪事をたくらむ犯罪者であっ

たりして、公(おおやけ)の世界には住むことのできない部類の人間だと言えます。そ

して、現代では、むしろ有り余るお金を持っている人や、何らかの権力を持つ人の方

が、租税を回避したり、所得を隠すために、タックス・ヘイブンと呼ばれる租税回避地

に口座を持ち、隠れた「私」の領域を持っているように思います。しかし、ここで忘れ

てならないことは、お金を持つことは必要なことだということです。今も昔も、お金が

なければ何もできません。そして、そのお金をこの項の3.「企業の定義2」に書いた

ように、社会を益するために使って、もっとお金を増やし、自分もお金持ちになれば良

いのです。

 

Ⅱ.課題

 

1.Ⅰ.の叙述から、何故アメリカでは、優秀な若者が企業家の道を選ぶか分かって来

ると思います。分からなければ課題です。Ⅰ.では、日本の内閣や省庁、都道府県、市

区町村の仕事にたずさわる人々の役割について触れていませんが、その役割を考えて、

尚、考えてください。

 

Ⅲ.IWC(国際捕鯨委員会)からの脱退

 

A.日本政府の決定

 

1.日本政府は、IWC(国際捕鯨委員会)から脱退し、2019年7月から商業捕鯨

を再開することを、昨年(2018年)の12月25日に閣議決定し、翌26日に、菅

官房長官が発表しました。商業捕鯨の区域は、日本の領海と排他的経済水域に限定する

と言います。

 

a.この意志決定は、日本のパブリックな論議と意思決定のプロセスを経て為されたも

のでしょうか?

 

b.またこの決定は、先にⅠ‐C‐5で検討した「公(おおやけ)」の定義に適(かな)

い、人々を富ませるものでしょうか?

 

「公(おおやけ)」

定義1:公(おおやけ)とは、人々が富み、自由であり、人々の権利が確立している社

会を言う。

 

c.そして、この決定は、日本が、第二次大戦に至る過程で国際連盟から脱退して孤立

し、敗北した教訓を、自らの骨肉としてなされたものでしょうか?

 

d.次に、この決定は、世界の人々の良識の趨勢(すうせい)である「自然保護、動物

保護」の精神に適うものでしょうか?

 

e.また更に、巷間(こうかん)で言われている「食文化」は、商業捕鯨再開の理由と

なるのでしょうか?

 

f.何れも否です。

 

Ⅳ.課題2

 

1.パブリックな意思決定とそのプロセスはどのように行えば良いか考えてください。

                                                                      

           

 追記(2019年1月28日):

1.Ⅰ‐C‐5で行った公(おおやけ)の定義に現代の条件を加筆しました。

2.同じく、Ⅲ‐A‐1‐bで行っている公の定義に上記と同じ現代の条件を加筆しまし

た。


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