日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

中華人民共和国の地方都市の借金から見えてくるもの

2018年07月31日 | 日記

 中華人民共和国の地方都市の借金から見えてくるもの

 

A.天津市の未完成の高層ビル群

 

1.6月15日、ロイターが、天津市の未完成のビル群について報じ、「天津の経済にほころびが生

じつつあると」と述べています。中華人民共和国の都市や地方都市には、未完成のビル群や道路、或

いは、何らかの用途のために作られたのですがその用途を果たしていない施設が存在することは何ら

不思議なことではありません。それらは、彼らの経済計算において、立派な財や仕掛財であり、私た

ちがそれらをゴーストタウンと呼んで訝(いぶか)るのを、反(かえ)って不思議に思っているのか

もしれません。事実、私たちの経済計算においても、建物や財に対してこのような計算を完成工事や

未完工事、製品、部品、仕掛品として仕分けすることがあり、彼らはその時間の尺度を異にするのか

も知れません。但し、このような大雑把な計算は、彼らの国一国に留めてもらわねばなりません。

一帯一路と称する彼らの構想も、簡単に言えば、1972年に、日本の田中角栄元首相が唱えられた

「日本列島改造論」を、中国から中央アジア、西アジアへと広げるものに他ならず、彼らの意図は、

彼らを主力とするインフラ建設とその収益を得ること(経済用語使って美的に表現すれば、インフラ

建設による地域の経済の活性化と波及効果を得ること)にあります。そして、この実例がどのような

ものであるか、一帯一路構想内の小国スリランカを取れば、同国は、建設費約13億ドルの港(ハン

バントタ港)を、中華人民共和国から建設費用の85%の融資(年利6,3%と言います)を受け、

施工は中華人民共和国の国営企業・中国港湾工程公司が行って、建設しましたが、この融資の返済に

おいて、結局、この港の管理会社の株式の80%を中華人民共和国の企業に約11億ドルで99年間

貸し出す契約を昨年結んだと言います。これを中華人民共和国式商法と呼びましょう。これは昔から

変わらぬ、悪徳商人が貧乏人から身ぐるみを剥(は)いで彼らを隷属させ、貧乏人の貧しい稼ぎを搾

(しぼ)り取り、彼らを下男下女、奴隷、遊女へと貶(おとし)めて来た方法に他なりません。中華

人民共和国を、私は、過大評価し過ぎて来たかも知れません。このブログでも、以前、「社会主義の

終焉」と書きましたが、中国にはその社会主義すらなかったのかも知れません。また一帯一路を考え

るに、AIIB(アジアインフラ投資銀行)は発足しましたが、それは中華人民共和国が主導するイ

ンフラ建設のフェロモンのようにも思えます。そして、中華人民共和国が語る計画は、その該当国は

十分に思慮深くある必要があります。例えば、それが幹線道路や鉄道建設の場合、起点と終点の都市

の途上に位置する国々は、その計画はどのようなものであり、本当に実現できるものであるか、自国

ルートの建設費用は誰が負担するのか、融資であるならば、融資の主体は誰か、それは公正なもので

あるか十二分に見極めて取り掛からなければなりません。さもなくば、中華人民共和国式経済計算の

時間軸において、区間区間によって工事の進捗にばらつきが生じた場合、A国では橋や鉄橋は完成し

ているのに全ルートでは、完成の目途が立っていないと言った事態すら生じかねません。この場合、

A国が中央アジアや西アジアの都市間を結ぶハブとなる都市を持つ場合、完成した橋はそれらの道路

網に接続することが可能となり、それらの経済圏において有益なものとなります。もしこれが峡谷に

架かる橋や鉄橋で、この運用は、他のB国の工事区間の完成待ちであったとしたらどうでしょう?し

かも、B国のラインはB国の事情でデッドラインとなってしまいました。そしてA国にはインフラ建

設の負債が重く残ってしまいました。ではどうしましょう。この橋、もしくは鉄橋は、21世紀の遺

構として将来の世界遺産にでも申請しましょうか?こう書いたとしても、これは風刺ではありません。

実際に起こり得る現実として予測し得ます。そしてA国は第二第三のスリランカとなる可能性が生じ

ます。しかし、この結果は、中華人民共和国の指導者たちの当初の意図を満たすものとなります。彼

らにとって支配国が一国増えました。

 

B.土地の企業による債権化の進行

 

1.今日の本題は一帯一路ではありません。本題に戻します。

 

2.ロイターは書きます。

ア)天津の一部の国営企業は債務不履行に陥るか、債務返済のための資金繰りに追われている。

イ)金融機関の中には地元企業に対する融資を拒否するところも出てきている。

ウ)これは、中国政府がハイリスク融資の引き締めと不良債権の抑制に取り組む中で生じている。

エ)天津市の財政は不動産投資の抑制で悪化している。

オ)天津市は、建設ブームによって生じた債務利払いを、土地利用権の売却で得た収入に頼っていた。

カ)こうした債務を、現地当局者は「浜海(天津市にある開発プロジェクト地域の名前)の債務問題

は深刻だが、用地売却を拡大することによって、債務の4割は『解決』できる」と話している。

 

3.ロイターは、上記2のカ)で用地売却を語ったニュースソースを明らかにしていません。しかし、

ここで語られていることは、天津市一市に留まるものではなく、中華人民共和国において、土地に対

する企業による債権化は進んでおり、今後さらに進むということです。


 

                                        暮(く)れなずむ街と茜(あかね)雲

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