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貸金業の上限金利問題~その18

2007年07月05日 21時26分10秒 | 社会全般
コメントを頂いておりしましたが、お返事が遅れましたことをお詫び致します。
金融庁の資料を見たりして、また少し考えてみました。

貸金業者の営業形態別貸付件数

貸付残高別の件数、残高


(個人)消費者向け無担保融資の融資額の多い業態だけ絞ってみると、次のようになっています。
①貸金業 11.4兆円
   大手  10.3兆円 平均59.3万円
   中小   1.1兆円 平均32.0万円

②クレジット 2兆円 平均30.5万円

③信販系 4.8兆円 平均11.3万円

④リース 0.5兆円 平均271万円

①~④合計 18.7兆円

傾向としては、カード系(クレジット、信販、流通・メーカー系)は1件当たり貸出額が少なく、貸金業は多い。特に大手(準大手含む)27社の平均は約60万円と突出している。カード系のキャッシングは、回数が非常に多いので、短期少額取引が繰り返されていると思われる。
参考までに、カードの発行済枚数は約2.7億枚、カード系の貸出件数は年間約5000万件、1枚1回として考えると約18.5%のカードでキャッシング利用されていることになる。しかし通常は複数回利用者の利用回数が多い傾向があると思われる(1度もキャッシングしない人は複数カードを保有していても利用回数がゼロということ)ので、実際の利用実人数は定かではない。貸出傾向としては、貸出金額が少なく、回数は多く、人数も多い、ということであろう。想定されるキャッシング枠が20~30万円とか、大半が50万円以下ではないかと推測している。


貸出残高別の件数資料から、少し考えてみることにする。

全体の総額が業態別資料より少なく、98業者だけの抽出によるものである。貸出総額は約15.6兆円と(18.7兆円の)8割強の水準でしかないので、正確には判らない。98業者がどの業態から選ばれているのかも不明である。件数でも、全業態であると7千万件を超えるが、98業者だけであると約6200万件であるので、1000万件くらいが除外されているということになる。なので、適当に推測してみた。

30万円以下の貸出残高は約3.24兆円、30~50万円と併せると、約7.88兆円である。このうち、カード系の残高が大半であると思われ、カード系6.8兆円の残高水準から約5.66兆円であると推測した。残りは貸金業の貸出残高と思われ、約2.22兆円である。50~70万円では約1.45兆円の残高で、227万件(平均63.9万円)である。50万円以上であると、カード系の貸出は殆どないと思われるので、ほぼ貸金の残高であろう。70~100万円では、残高3.34兆円、371万件(平均90.0万円)である。
100~150万円では1.1兆円、86.6万件、150~200万円では1.1兆円、62.5万件、200~300万円では0.59兆円、58.6万件、300万円超では0.78兆円、13895件であった。この100万円以上のゾーンでは、リース系が入っている可能性が高く、しかも平均残高は271万円と多いので、高額の残高のところに含まれる可能性が高いと考えた。で、債務残高からリース系の分約0.5兆円を除くと残りは約2.4兆円となる。件数では約15万件程度がリース系であるとして除外すると、残りは約157.3万件(平均153万円)であった。この100万円以上で重複の借入者というのは極めて少ないと予想されるので、ほぼ実数に近い水準であろうと思う。

◎貸金業1社に100万円以上の債務残高を持つ人は、約157万人くらいいるだろう(勿論、他からの借入のある可能性はあるだろうが、このゾーンでの重複はまず滅多にいないのではないかな、と)。貸金の債務残高は、50万円以下の層に2.22兆円、50~70万円の層に1.45兆円、70~100万円の層に3.34兆円、100万円超の層に2.4兆円、合計9.41兆円くらいであろう。

18.7兆円と15.58兆円の差額から3.12兆円が残高別資料から漏れていると考えられ、このうち、カード系が1.14兆円(=6.8-5.66)を占めているであろうと予想したので、残り1.98兆円が貸金の分である。9.41兆円と併せると、11.39兆円となって貸金業界全体の11.4兆円とほぼ同じくらいになる。多分、1社で70万以上が3.34兆円、100万円以上が2.4兆円であるので、両者で5.74兆円、ざっと157万件+371万件ということで、この528万件(恐らく重複者は滅多にいないのではないかと思う)に大量の「キリギリス」が含まれているであろうと予想している。

少し前の記事に書いた「キリギリス」の存在割合の推測から言えば、161万人中131万人が該当していることになるので、約82%ということになる。裁判所の集計である自己破産者数の推移を見ても、消費者金融からの借入のない者の破産数は大体2万人前後で、どん底期(98~01年くらい)でやや増加して3万人を超えている時も見られたが、それ以外では概ね一定数であった。一方、消費者金融からの借入者の破産者数は確実に増加してきたのである。破産コースに乗った人は、取りあえず消費者金融から借りて何とかしようとするから、ということがあるからなのかもしれないが、貸金の借り手の破産が増加してきたことは言えるであろう。それは貸金業者の貸倒率で見ても、その傾向が表れていると考えられる。仮に20万人の破産者が存在するなら、約36000人が合理的タイプであって、残り164000人がキリギリスタイプなのではなかろうか、と。キリギリスタイプへの貸し込みが増加してきたのであれば、貸金関連以外の破産者増加に比べてキリギリスタイプの破産者が増えるのはある意味当然ではないか。


以前に何度か取り上げた早大消費者金融サービス研究所のペーパーをもう一度見ることにする。

消費者金融顧客の自己破産


参考記事:
消費者金融顧客の分析は果たして妥当か?

貸金業の上限金利問題~その7

貸金業の上限金利問題~その8

権威主義?それとも・・・

貸金業の上限金利問題~その9


このペーパーの中で破産者のデータがあるのですが、それを見ると、次のようになっていた。
当該貸金業者からの新規借入時点で他社貸金借入残高は57.7万円だったのが、破産時には144万円に増加している。他社借入債務は約2.5倍に増加していた、ということだ。借入業者数が3件以上増加していたのは44%(非破産者では25%)。別なデータでは、住宅ローンのない破産者の貸金からの借入は平均266万円で、カード系は147万円(近年の破産者の債務先比率は貸金が約7割程度であったと記憶している)。

それから、例のロジスティック回帰分析であるが、やはり疑問点はある。

ア)年収についての説明がない

p19で、新規時の要因として、『これには①年齢、②性別、年収、③婚姻状況・・・』となっており、意図的に②に含められている。項目は別であり、性別や婚姻状況はダミー変数として0か1が割り振られているのにもかかわらず、だ。年収が性別と同列に扱われたとでも言うのであろうか?
モデル1ではp<5%水準で、モデル2ではp<0.1%水準で、有意に「年収が多いと破産しやすい」ということになっている。これは年収が多いと貸出額が増えやすい(枠も大きく取れる)から、という可能性はあるかもしれない。キリギリスタイプに対してはそれだけ多く貸し込めるからではないのかな。だがモデル3では、何故か符合が逆転している。つまり、p<0.1%水準で有意に「年収が多いと破産しにくい」、ということかと。後で触れるが、モデル3はどういう意図でほぼ同じような変数を追加したのか疑問である。

イ)新規時他社借入件数は、モデル1~3全部で有意に「破産しやすい」

つまり、キリギリスは多重債務となりがち=複数貸金からの借入を行う、というのが破産しやすい要因になっている、ということが判るのではないですか?つまり、新規申し込み時で、既に貸金数社からの借入があるということは、「キリギリスである確率は高くなる」=「破産しやすい」ということが初期融資時点のデータでほぼ判別可能ということではないか?
件数増減で見ても、件数増加はモデル2と3しかないが、両方とも有意に破産しやすい。

ウ)消費者金融借入額の増減では、借入を増加させると破産しにくくなる

モデル2と3にしかないが、貸金から借入額が増加すると有意に破産しにくいのである。
これこそ、「ゾンビに追い貸し」だろう(笑)。延命措置ってことだ。借入件数(=業者数)増加で「破産に伴う貸倒リスク」が分散されてしまっているのだろう。だから、次々と貸し込む業者が現れるのだ。キリギリスに複数で貸すのが儲けるには都合がいいのであろう。そういう市場になってしまったのだ。自転車操業を行わせるのに、新たな資金が入れられると改善する効果が期待できる。中小企業においても、破綻する企業というのは「新たな資金調達」を試みることが多いはずで、それが良くない結果をもたらしていることが多いのである。多重債務では返済を「右から左へ」移し変えていくだけで返済が進まず、債務残高は膨れ上がるのだが、破綻はしにくくなるということかと。これがキリギリスへの貸し込みを可能にしているのだろうと思うのですよ。

エ)「年収」の他に、「年収の増減」「減収」という変数を追加している

「年収」は増加か減少は分るのであるから、少なくとも減収(0か1)という項目を入れる意味は不明である。増減額はあっても不思議ではないが、増加すれば破産しにくくなることは当たり前ではある。では、モデル1と2で「年収が増加すると破産しやすくなる」ということをどう考えるか、というところに行き着くであろう。
そもそも、何故このような変数追加したのか、経済学を専門としている他の人たちはどう考えるのであろうか?


まあ、経済学理論で何とかしてあげて下さいよ、キリギリスを。

貸金窓口で追加融資を断る場合には、貸金業者に「通報」を義務化してもらえばいいのではないですか?(笑)借り手情報を「しかるべき機関」に通報してもらうんですよ。で、機関はその借り手にカウンセリングを施してこれ以上の借入を止めさせるのと同時に「ヤミ金」を探させる。借り手がヤミ金をおびき寄せて、逮捕。どうです?一石二鳥ではないですか。キリギリスたちはヤミ金に行くのでしょ?ならば、それを逆手にとって利用すればいいような気がしますね。この役を引き受けた借り手の人は、謝礼を貰えることにしたらいいのではないですか?弁護士費用なし・ブラック登録もなしで過払い分を返還してあげるとか。現状のような、高額所得者の弁護士たちに返還費用分を特需でわざわざ分ける必要ないと思う。払ったのは債務者たちなのだから。


因みに今はヤミ金で儲けるよりも、「オレオレ」じゃなかった「振り込め詐欺」とか新手の「バイク便詐欺」なんかが儲かるよ。警視庁の発表では被害額が250億円だったらしいからね。東京近辺だけでしょ、この被害額って。儲けすぎ。
ヤミ金みたいに初期投資(貸付)があまり必要ないし、あるのはリスクだけだからね。こんだけ報道されているのに、引っ掛かる人たちが後を絶たないのだから笑いが止まらんでしょう(笑)。



不戦敗宣言はまだ早いのでは・3

2007年07月05日 13時06分25秒 | 法と医療
通知とか技官関連の背後関係は知らなかったのですが、論点としては既に見てきたことかな、と思いました。

はてなブックマーク - 天漢日乗 産科崩壊 「看護師利権」がお産の場で母子を危険にさらし、産科崩壊を促進 看護師と助産師さえいれば産科は成立するのか「内診問題の真相」 産科を閉じたオーク産婦


問題の厚生労働省通知を「ひっくり返す」ことができない限り、「内診行為問題」は前進できないでありましょう。特に、官僚の性質というのは「一度出したら、死んでも引っ込めない」という傾向があるので(勿論これは大袈裟な冗談ですが、笑)、一度出された通知は一般国民側から変更・訂正等をさせることができません。これは戦う以外にはないのです。では、誰が鈴を付けに行くか?という問題はありますけれども。

参考記事:
不戦敗宣言はまだ早いのでは

不戦敗宣言はまだ早いのでは・2

上記記事で書いたように、通知についての抗告訴訟を提起して、誰かが徹底抗戦を行わないとなりません。当然ながら、私には何もできません。原告になれる要件からは完全に外れているからです。なので、「誰か、前に出て戦え」ということを申し上げることになってしまうので、無責任極まりないと思いますけれども、ご容赦下さい。でも、「何もせずに座して死を受け入れるのか」ということを考えるのであれば、「通知が絶対」ということである限り、前進はないでしょう。仮に敗訴して覆せなかったとしても、通知がそのまま残るだけですから、今と状況は変わりません。裁判ということになれば、時間とお金と労力とその他モロモロを多大に消費することになってしまいますから、負けて元々だと安易には言えないのは確かなのですけれども…。

もう一度原告たり得る要件を書いてみますけれども、
・通知が出されて以降に行政指導を受けた(恐らく行政からの文書受取だけでも可と思います)
・内診行為問題を理由に産科を縮小・廃止等の実質的不利益を蒙った(今後相当の確度で蒙る虞でも可?)
という医療機関・医師であれば、訴訟提起できるであろうと思います。

通常の行政指導は訴訟対象とはならないのですが、内診行為問題の通知に関しては対象たり得ると思いますので、このまま何も変えられないのであれば、立ち上がって戦う道を選択するしか方法はないと思います。特に、多くの国民から「見えない所で」戦うなら、権力サイドが有利になるだけで弱小無力の人々は勝てません。もし私が権力サイドであれば、反抗的分子は「分断して個別撃破」するに決まっています。行政指導でも監査でも立入検査でも、個別に医療機関を狙い撃ちにできますからね。ですので、できるだけ衆人環視の元で戦うべきであると思います。その意味においても、訴訟提起はマスメディアの注目を集めることができますし、多くの国民に問題点を知ってもらうのに有利です。昨今の医療崩壊問題についてはマスメディアがよく取り上げてくれるようになってきていますから、きちんと伝える努力をすれば「通知変更」への圧力は高まる可能性はあります。AEDもサクションも、緩和されるようになりました。


それと、参考記事の中で取り上げた裁判例では、分娩監視は通知に違反しない旨判決で述べられており、看護師の診療補助業務であると認定されていますので、条文の解釈論で挑んでも勝てる可能性はあると思います。私のようなド素人が「勝てるかもしれない」とか言っても何の足しにもならないことは承知しておりますが、諦めることなく何らかの行動するしか突破口は見出せないと思います。学会のお偉いさんたちや、医師会が当てにできないのであれば、「現場の声」を直接ぶつける以外にないでありましょう。政治的な駆け引きの場では、「政治的に強い者が勝つ」ということになってしまうでしょう。


戦いを挑める同士を募って、行政権力に立ち向かって下さい。
私には遠巻きに応援してあげることしかできないのですけれども。


ちょっと追加。

前に自宅出産の話について書いたことがあって、これも関連しているかもしれないなと思ったので。

サンバの幻想?