来週の水曜日まで家を離れています。
いつものつぶやきのかわりに、「降りてみたいけど、下車できない?世界にあるちょっと変わった駅たち」を今日と明日に分けてお届けします。
「降りてみたいけど、下車できない?世界にあるちょっと変わった駅たち」
■限られた人しか下車できない「リンプストン・コマンド駅」最初は、イギリスの南西部にあるデボン州の駅から。ロンドンから見て西の方、イギリス海峡に沿ってコーンウォール半島(南西半島)が突き出していますが、その半島の南岸にあるライム湾(イギリス海峡の一部)へエクセ川の巨大な河口が開いています。
その河口に沿って敷設された支線の途中に「リンプストン・コマンド駅」があります。
この駅はとてもユニークで、駅舎に「Persons who alight here must only have business with the Camp(和訳:ここで下車する人は、当キャンプ施設に用事のある者に限る)」との文字が掲げられています。言い換えると、英国海兵隊のキャンプ施設の関係者しか下車が認められない駅となっています。
そもそもこの路線は、「リクエスト・ストップ」と呼ばれる方法で電車が往復しています。使用者の少ない駅は、日本のバスのように停車を希望する乗客がいない限り、止まらずに通り過ぎます。
リンプストン・コマンド駅も一緒で、基本的に電車は通過し、下車を希望する人は海軍のキャンプ施設に何らかのれっきとした目的を持たなければいけません。
その意味でも、好奇心で下車するにはちょっとした緊張感がある駅といえそうです。しかし、実際には、物珍しさで下車している感じの若者もちらほら見られるとの話。
ちなみに、この周辺に暮らしている人たちが生活で主に利用する駅は、次の「リンプストン・ヴィレッジ駅」を使うみたいですね。
■駅を降りても道路がない「コラー駅」次は、スコットランドの駅になります。スコットランドでも北西部、入り組んだ海岸線(フィヨルド)や、内陸には氷河湖も見られる氷河の作用が大きくみられるハイランド地方にある駅です。
ハイランド地方で最も有名なスポットといえば、未確認動物ネッシーが暮らすと信じられているネス湖です。他には、イギリスで最も標高が高いベンネビス山(1,343m)もあります。
そんな人口密度が低く、無人地域も多いハイランド地方に「コラー駅」があります。グラスゴーから北上した場合、先述のベンネビス山に差し掛かる前に存在する駅ですね。
コラー駅の最大の特徴は、駅を降りても周囲約16km近くに公道が存在しないという立地です。登山道はありますが、なんのために存在している駅なのでしょうか。誰が利用している駅なのでしょう。
もともと、コラー駅のあるウエスト・ハイランド鉄道がハイランド地方に敷設された時期は1894年です。
その路線内における(英国内においても)最高標高地点にコラー駅もつくられました。土地のオーナーが線路の敷設を許可し、単線のすれ違いポイントとして駅が設けられ、信号扱所が最初に設置。また、周辺と隔絶された立地のため、信号員のための2階建ての就寝所も設けられます。
それから100年近く経過した1985年に、機能の大半が役割を終えますが、ハイカーや登山者たちの宿泊所として駅は利用され続けます。
その後、いくつかの映画の舞台に駅が取り上げられるようになり、価値が再評価されると、登山者の宿泊所の機能を併設した形で、信号扱所などの機能が復活します。そして現在の姿になるのですね。
ちなみに、コラー駅へ停車する列車はロンドンと直通する寝台列車のみです。
■ホームにジャングルがある「アトーチャ駅」 次は、同じヨーロッパのスペインの首都マドリードにある駅の話。駅の構内で一般的に見かける光景としては、何を思い浮かべますか?ホーム、改札機、売店、待合所、券売機といった感じでしょうか。
しかし、マドリードにある「アトーチャ駅」の待合室兼カフェテリアには、見ごたえたっぷりの演出が施されています。
いまから100年以上前につくられた旧駅舎に、ヨーロッパ各地で同時期に盛んにつくられた「植物園」のような一角があるのですね。
この植物園自体は1992年と比較的最近につくられています。駅の使われなくなった部分に、熱帯で自生する植物を中心とした260種、7000本を超える木を植え、無秩序な「森」を誕生させたのですね。その森の広さは4,000平方キロメートルに達します。
そのなかには、マダガスカル原産のタビビトノキも含まれています。駅の植物園に植える木としては、おしゃれなチョイスですよね。マドリードに行ったら、コーヒー片手に立ち寄りたいスポットです