今から8年前に「元天才詐欺師と堅物FBI捜査官が知的犯罪に挑むクライムサスペンス」という海外ドラマが放映されていた。
自由と引き換えに捜査協力することになった元犯罪者が釈放された後も常にGPSで監視されながらFBI捜査官とタッグを組んで詐欺や偽装、横領などの知的犯罪に挑むクライムサスペンスドラマであった。
このGPSは半径3km以内ならば自由にうごきまわれるということだったと記憶している。
とても日本人の発想ではありえない話ではあるが、最近では犯罪者ではない保釈中の被告人にGPSを装着させるという。
在京メディアではなく京都新聞が報じていた。
「社説:保釈中にGPS 『人質司法』解消が先だ」
保釈する刑事被告人に裁判所が衛星利用測位システム(GPS)の装着を命令できる刑事訴訟法などの改正案が国会に提出された。 新制度は海外への逃走防止に限られるとはいえ、人権侵害になりかねない。否認だと保釈を認めない長期勾留の解消につながるのかも不透明だ。 逃亡防止とプライバシー確保の両立に向け、慎重な審議を求めたい。 海外に拠点がある企業の幹部らを想定し、端末を装着後に保釈される。空港など制限区域への立ち入り禁止や常時着用を求め、無断で取り外せば拘禁刑が科される。 2019年に相次いだ逃走事案が呼び水となった。特に保釈中だった元日産自動車会長のレバノン逃亡は、巨額の保釈保証金没取もいとわず関西空港から脱出。欧米で導入されているGPSでの行動監視を求める声が高まった。 ただ、海外逃亡の恐れを、どう見極めるのか。端末を着ければ必ず逃亡を防げるわけでもない。適用は極めて少数とみられ、費用対効果の議論も欠かせない。 運用面も未知数だ。どんな機器をどう装着するのか、法務省は実証実験中というが、小型端末の開発など詳細は定まっていない。 とりわけ保釈中の行動が把握される人権侵害の懸念を拭えない。 そもそも刑が確定前の被告は推定無罪であり、身体は自由であるのが原則だ。逃走や証拠隠滅の恐れがある場合に限り、裁判所の判断で勾留することができる。 日本では逮捕段階から自白を得るまで長期勾留する傾向があり、「人質司法」と国内外から批判されてきた。 裁判員裁判を機に保釈の運用が緩やかになり、保釈率は3割台に伸びたが、否認事件では難しい状況が続いている。 改正案は、他にも逃亡を防ぐため、不出頭罪や制限住居離脱罪の新設を盛り込んだ。近親者らを新たに監督者に選任し、保釈保証金とは別に、監督保証金を納めなければ保釈を認めない。いわば「連帯責任」も課す仕組みだ。 言うまでもなく逃げ得は許されない。GPS導入をはじめ監視や罰則の強化で、保釈許可が出やすくなれば、過剰な身柄拘束を免れ、確かに被告のメリットは大きいかもしれない。 ところが、保釈率が向上する保証はない。「被告側の負担のみが増大し、バランスを欠く」との指摘もある。むしろ長期勾留を検証し、「人質司法の解消こそが先決である。 |
そもそも人間にGPSを装着させて監視するというお上の発想は許せない話だが、だからといって国民の個人情報が流出するような政策も見逃せない話であろう。
なにしろマイナンバーカードを巡っては、2017年からの5年間で少なくとも3万5,000人分の情報が紛失・漏洩したとの報道もあることから、このマイナンバーカードの積極的な活用には疑問が残る。
「個人情報の流出は必至か。不安しかない『マイナ保険証』をゴリ押しする政府の無責任」
■強引な誘導に疑問。ゴリ押し「マイナ保険証」のリスクを心配する つい先日、かかりつけのクリニックを訪れたさい、見慣れぬ器械が受付に置いてあった。 マイナンバーカードを読み取って健康保険に加入しているかどうかの「オンライン資格確認」をするカードリーダーで、今年4月から原則として義務付けられているそうだ。 筆者はマイナンバーカードを持っていない。カードをどこかに置き忘れたり、紛失するのが怖いし、個人情報が漏洩したり、悪用される不安もあるからだ。 そんなわけで、この器械と自分は関係ないのだと思い、その時はたいして気にも留めなかったのだが、後日、健康保険証がとんでもないことになっているのに気づいた。 |
「マイナポータル」ではなく「マイナーなポータル」といったほうがふさわしい。
「政府への信頼不足」という点では、国民の命と財産を守るという政府の常套句が崩れ始めているのが「Jアラート」ではないのか。
「Jアラート『北海道にミサイル落下』情報訂正に批判殺到。もはやオオカミ少年状態で日本は大丈夫か?」
■テレビ画面に突然のJアラート 午前7時55分、政府の緊急警報「Jアラート」が出されたことで、恐怖を感じた人も多かっただろう。朝、子どもと一緒にNHK教育番組を観ていた都内在住の男性は言う。 「突然、『ミサイルが北海道に~』という不穏なJアラート画面が出現して驚きましたよ。チャンネルを変えてもどこも同じでした」 独自路線を貫く番組作りがウリのテレビ東京ですらもJアラートを出していたようで、緊急性をより感じることができる。 「しかも、テレ東は画面を棒読みの自動音声が読み上げていて、怖さ倍増でしたね。ここでも独自路線かよ、とちょっと思いましたが(苦笑)」(前出の男性) ■5分前に言われてもね…… しかし、「ミサイルが落ちるかも」と警告された北海道に関わりのある人々は、テレビ局の独自路線どころではない。 「高齢の母が北海道に一人で住んでいるので、ミサイルが落ちるかもと思うと怖くて仕方がなかった。けれど、7時55分頃に鳴ったJアラートを見ると「8時頃落下するとみられます」と書いてあって…。その5分でどこに逃げればいいんだよという感じです。その後、誤報となりホッとしたと同時に、政府に怒りを覚えました。本当にミサイルが落ちてきたら国民を守れるのか?いや、本気で守る気があるのか? 疑問ですよ」(30代女性) ネットには、道民ではないと思われる人からも、この「落下5分前に言われて、どうすればいいのか?」の声が多く上がっていた。外野がそう感じるのだから、避難の必要性があった人々はもっと強く思うことだろう。 Jアラートの誤報は過去にも複数回ある。そのせいか、「どうせ落ちないでしょう」と静観する人も少なくないそうだ。 「これだけ不安を煽られ、結果的に何もないと『ああ、またか』と思うのは当然です。今日のJアラートもどうせ誤報だろうなと」(20代男性) 「今回も日本の領域外に落下したようですね。どこに落ちるかもわかっていない政府が出すアラートを信用しろと言われても無理がありますよ」(30代男性) ■本当に落ちてきたとき、Jアラートは役に立つのか だが、今のままで心配なのは「本当に落ちてきたとき」である。今日のように5分前に言われても困るし、「どうせ誤報だろ」と舐めてかかったときに落ちてきても大変だ。 松野博一官房長官は記者会見で、「Jアラートの役割に鑑みれば、発出判断そのものは適切だったと考えている」と述べた。 「国民を守るために出したのであれば仕方がない」といった意見もあるようだが、度重なる誤報でJアラートに対する国民の信頼が失われているのも事実だ。政府のJアラートがオオカミ少年にならないことを願うばかりだ(もうなっているとの指摘も多数アリ)。
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もはや一体政府はどこを向いているのかというぞ僕な疑問がわいてくるのだが、2週間ほど前に内田樹がこんな記事を書いていた。
「岸田政権は何をしようとしているのか」
今回の防衛費増額の背景にあるのは岸田政権の支持基盤の弱さだと思う。 彼にとって喫緊の課題は二つだけである。一つは国内の自民党の鉄板の支持層の期待を裏切らないこと。一つは米国に徹底的に追随すること。日本の将来についての自前のビジョンは彼にはない。 今回の防衛予算や防衛費をGDP比2%に積み上げるのも、米国が北大西洋条約機構(NATO)に求める水準に足並みをそろえるためであって、日本の発意ではない。日本が自国の安全保障戦略について熟慮して、必要経費を積算した結果、「この数字しかない」と言ってでてきた数字ではない。アメリカから言われた数字をそのまま腹話術の人形のように繰り返しているだけである。 国民がこの大きな増額にそれほど違和感を覚えないで、ぼんやり傍観しているのは、安全保障戦略について考えるのは日本人の仕事ではないと思っているからである。 安全保障戦略は米国が起案する。日本政府はそれを弱々しく押し戻すか、丸呑みする。戦後80年、それしかしてこなかった。その点では日本政府の態度は戦後80年一貫しており、岸田政権は別に安全保障政策の「大転換」したわけではない。政権によって米の要求に従うときの「おもねりかた」の度合いが多少違うだけであり、そこにはアナログ的な変化しかない。だから、国民は誰も驚かないのである。 岸田首相の党内の政権基盤は決して堅牢なものではない。だから、長期政権をめざすなら、米国からの「承認」がその政治権力の生命線となる。ホワイトハウスから「米国にとってつごうのよい統治者」とみなされれば政権の安定が保証されるし、少しでも「米国に盾突く 」そぶりを示せば、たちまち「次」に取って替わられ、政権は短命に終わる。 岸田政権にはとりわけ実現したい政策があるわけではない。最優先するのは「政権の延命」だけである。喩えて言えば、船長が目的地を知らない船のようなものである。自公連立政権という「船」を沈めないことだけが目下の急務であり、岩礁や氷山が目の前にきたら必死に舵を切って逃げる。だが、どこに向かっているのかは船長自身も知らない。 「国民の声を聴く」とか「個性と多様性を尊重する」とか「新しい資本主義」とか公約を掲げていた時は、首相になれば少しはこのシステムをいじれると思っていたのだろうが、実際に船長になってみたら「お前が動かしてよい舵輪の角度はここからここまで」と言われ、ほとんど政策選択の自由がないことを思い知らされた。 今回の防衛予算の積み上げも、まず米国からの要求があり、それに合うように予算が組まれ、さらにその予算枠に合うように、「中国や北朝鮮の脅威」なる「現実」が想定されている。 ふつうの国なら、まず現実認識があり、それに基づいて国防戦略が立てられ、それに基づいて必要経費が計上されるのだが、今の日本はみごとにそれが逆立しているのである。 日本政府が購入を決めたトマホークにしても、その前に「爆買い」したF35戦闘機にしても、米国内でははっきりと「使い物にならないほど時代遅れ(レガシー・プログラム)」の兵器とされている。 中国との競争において、米国はAI軍拡で後れを取っている。もう大型固定基地や空母や戦闘機の時代ではない。AIに優先的に予算を投じるべきなのである。しかし、米国には軍産複合体という巨大な圧力団体があって、国防戦略に強い影響を及ぼしている。兵器産業にいま大量の在庫が残されている以上、それを処理しなければならない。だから、それを日本に売りつけるのである。日本に不良在庫を売りつけ、それで浮いた金を軍のヴァージョンアップに投じる。そういう「合理的な」メカニズムである。 不良在庫を言い値で買ってくれるのだから、米国にしてみたら日本の自公連立政権ほど「使い勝手のよい」政権はない。だから、この政権が半永久的に続いてくれることを米国が願うのは当然なのである。 日本国民は属国身分にすっかり慣れ切っているので、自国の政権の正統性の根拠を第一に「米国から承認されていること」だと思い込んでいる。「国民のための政治を行っていること」ではないのである。 米国に気に入られている政権であることが何よりも重要だと日本国民自身が思い込んでいる以上、日本人が岸田政権に不満を持つはずがない。 だから、岸田政権が防衛増税を進めても、インボイス制度やマイナンバーカードなどで、国民の負担を増大させても、国民はデモもストライキもしない。それは国民自身が「政府というのは、国民の生活のために政策を実施するものではない」という倒錯に慣れ切ってしまっているからである。 「政府はアメリカと、国内の鉄板支持層の方を向いて、彼らの利益を計るために政治をしている」ということを国民は知っている。でも、「政治というのは、そういうものだ」と諦めている。そうやって政府に対する国民の期待を下げれば下げるほど、棄権率は高まり、結果的に20%の鉄板支持層を持つ自民党が選挙には勝ち続けることができる。実際に、これからも自民党は選挙に勝ち続けるだろう。コアな自民支持層があり、浮動層の半数が「自民党以外に選択肢はない」と思っている以上、政治が変わるはずがない。 問題は「政治はこれからもまったく変わらない」という諦念が広がると、国民の中から、このシステムを主権国家としてのあるべき姿に生き返らせることよりも、この不出来なシステムをどう利用するかをまず考える人たちが出てくることである。このシステムにはさまざまな「穴」がある。それを利用すれば、公権力を私的目的に用い、公共財を私財に付け替えることで自己利益を最大化することができる。今の日本がろくでもない国であることは自分にもよくわかっている。でも、そのろくでもない国のシステムのさまざまな欠陥を利用すれば簡単に自己利益を増すことができる。それなら、システムを復元するよりも、システムの「穴」を活用する方がいい。 彼らはシステムを「ハック(hack)」する。死にかけた獣に食らいつくハイエナのように。彼らはこの獣がまた甦って立ち上がることを全く望んでいない。できるだけ長く死にかけたままでいることが彼らの利益を最大化するからである。今の日本では、そういう人たちが政権周りに集まり、メディアで世論を導いている。 一方にはそれとは違う考え方をする人たちもいる。このシステムの内側で生きることを止めて、「システムの外」に出ようとする人たちである。地方移住者や海外移住者はその一つの現れである。彼らもまたもうこのシステムを変えることはできないと諦めている。そしてシステムの外に「逃げ出す(run)」ことを選んだ。 若い人はいま二者択一を迫られている。hack or run。その選択がいま日本の若者に突きつけられている。そして、ここには、「システムの内側に踏みとどまって、システムをよりよきものに補正する」という選択肢だけが欠落している。 |
いままでも多くの識者やジャーナリストたちが、岸田文雄は「政権の延命だけ」が目的だと批判していたが、かつての民主党政権の鳩山由紀夫のように、「米国に盾突く 」そぶりを示せば、たちまち「次」に取って替わられ、政権は短命に終わるという事実を自民党の歴代首相は目の当たりに見ているからなのだろう、とオジサンは思う。
【付録】