困ったことなのか、予想通りなのかはいざ知らず、都知事選での小池百合子の圧勝(歴代2位の得票数)により、「反小池百合子」陣営内で亀裂が生じているようである。
ことの発端はこんなツイートからだったようである。
【山本太郎のクズ】コイケの圧勝を生んだのは山本太郎なことは明白だ。野党統一候補にと言われたのに断り、宇都宮けんじ氏が立候補したら財源論が違うといって立候補したえで、貨幣発行権のない地方自治体にMMTで15兆円の都債発行?野党分断のために行動するだけ。カルトを超えてアホの極みだ。
— 金子勝 (@masaru_kaneko) July 6, 2020
市井のブロガー程度ならいざ知らず、立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授の金子勝大先生だったので、一波乱が起きていた。
老醜をさらけ出したようなツイートなのだが、まずは、その内容に大きな誤りがあったという。
さっそく山のような返信が「山本太郎信奉者」たちから殺到した。
現実を見なさいよ。宇都宮と山本の票を足したところで、150万ちょっとですよ。山本太郎が、地方自治体にMMTを適用なんて言っていないでしょうに。MMTのお勉強をされていますか、金子名誉教授様。山本憎しで、こんなことを呟くなんて、いただけないな~。??
— オゼヤン (@ozeyan99) July 6, 2020
最終得票数を見ればわかるように、
— メダカきのこ #消費税ゼロ (@medaka_kinoko) July 6, 2020
少なくとも宇都宮、山本、小野各氏を合計しても小池百合子には全く届きませんよ。
加えて山本太郎は選挙活動中にただのひとこともMMTなどとは言っていません。
先生は学者なんだから、事実を見ましょうよ。
感情だけで物事を歪曲しない方が宜しいかと思います。
「消費減税は呑めない」「れいわ公認は呑めない」と言って突っぱねたのは山本じゃないでしょう。
— Noirnoir (@harukoma2017) July 6, 2020
ちょっと呆れる。
宇都宮さんと山本太郎さんの票を足したって小池の票にはずいぶんと届かなかったんですよ?
— 鯉優省(打倒安倍政権 反緊縮、猫の生活が第一 肉球新党 れいわ新選組 ) (@carpyoushow) July 6, 2020
統一したって同じ。
連合東京と立憲支持者が小池支持に回って宇都宮さんに投票しなかったんだから、批判の先が違う!
金子教授の①立憲民主党支持者の70%が党支持母体 #連合 の支援する小池百合子 都知事の再選を支持した事を棚に上げ、困窮者救済の信念で出馬した山本太郎候補だけに罪を着せる醜悪さ②落選した21人全員の得票数合わせたって小池に及ばない事を無視した #算数力の無さ に絶句。https://t.co/2uNY9wsji5
— 矢口真里夫@超小型マリオ (@PistonMach) July 6, 2020
ネットの掲示板ではこんな声もあった。
「投稿者の思考開陳かと思いきや金子勝の呟きだったのか。
やはり自分が言った通りになったな。埋めようがない差。
これで何となく手を繋いで一緒にやっても瓦解するのは明々白々。
この有り様で野党統一で協力しろと山本に強要している金子がどれだけファシストなのかがよく分かるだろう。
流石マルクス経済学を専攻しただけのことはある。」
「勝てた試合で負けた場合にその台詞は言ってほしい。
それですらなく圧勝したことを根拠にクズ呼ばわりは金子は叩く理由が欲しかっただけのように思う。
金子はコロナで株を上げた一人だが見て呉れの人権を掲げる本当の意味で弱者の障壁になる強者側の金子はここいらで芽を摘んだ方が良いな。
勝手に自滅してくれるのが一番良いのだが。」
経済学者が生半可に口挟むとこんな袋叩きに遭ってしまうのかと驚く。
ところで、「中選挙区制と自民党政権 : 55年体制下における単記非移譲式投票の影響の計量分析」という論文で東大法学部で博士号を取得し、その後、日本政治に対する統計データを活用した評論活動を行っておりウェブサイト「国会議員白書」を主催している菅原琢が、同サイト内で、「小池百合子圧勝の簡単なデータ分析(2020年東京都知事選挙)」を発表していた。
4年前と今年の都知事選での小池百合子の自治体別得票率を比較したりしていたが、分析データを読み解く力がないと少々理解できないが、「新自由主義的な新しい自民党支持層は前回から小池候補に投票しており、その一部が今回はより好ましい維新の候補に流れた」という仮説をたてて解説していた。
そして、「小池都知事の圧勝は『有権者の小池人気』のみを示すのではなく、対抗できる候補を用意できなかった与党と野党の弱さの結果でもあるのです。」と結論づけており、決して、「コイケの圧勝を生んだのは山本太郎なことは明白だ」ということではなかったらしい。
もう少しわかりやすい分析を「三春充希(はる) みらい選挙プロジェクト」が示していた。
「小池氏の票はどこから来たのか? 大差になったのはなぜなのか?」
◆宙に浮いた179万票に食い込めなかった結果 2016年にいた自民党の候補(増田氏)は2020年にはいません。ですから彼の179万票が宙に浮いていたわけです。それが2020年の今回の選挙では現職の小池氏と維新の小野氏に流れ込んだことをここまでに見てきました。 これは逆に言えば、国政野党の立憲・共産・社民やれいわが、そこにほとんど食い込めなかったということです。 確かにもともと自民の候補に投じられた票なので、野党とは距離があるのは当然です。しかし今回は、その票をまとめる中心となる存在(自民党の候補者)がいないので、この票は流動性を持っていたはずです。 この宙に浮いた票にことごとく食い込めなかったことが、2016年よりも大きな差が開いたことの最大の原因といえるのではないでしょうか。 2016年の選挙のとき、野党統一候補の鳥越氏は小池氏に2倍以上の差をつけられて敗れました。だからこそ、そのときの野党の票では勝負ができないと考えられるわけで、自民が独自候補を立てない方針となった時点で、野党側は宙に浮いた増田氏の票に食い込むことが一つの目標となっただろうと思います。 そういったことは短い期間で選挙を見ていても難しいことでしょう。 ◆長い目で見た準備を 野党側は今回の圧倒的な大敗を直視して、やり方を見直す必要に迫られると思います。告示直前になって勝てそうな候補にとびついても、告示直前で共闘をめぐってもめていても、それではもう勝負には絡んでいないのです。 小池氏は今年のはじめから、どのような相手候補であれ優位に立っており、3月から5月にかけてコロナ対応で支持率を上げると独走態勢に入りました。 告示の頃、山本氏と宇都宮氏で統一できないかということが問題になっていたとき、小池氏とはおよそ5倍差がありました。 「一本化できず候補者が割れてしまったから」「テレビ討論がなかったから」「マスコミの報道が少なすぎたから」負けたのではありません。はじめから途方もない差があったのです。 今回のことに学ぶなら、選挙が近くなって候補者を決めるのでは遅いということになると思います。勝負にするならもっと長い目で見て時間をかけながら、その地域地域での対抗馬を育てていく必要があるのでしょう。インスタントな選挙をやっていては体力がつきません。疲弊します。だからこそ、選挙までの準備が大切だと改めて思いました。 |
コロナ禍により、連日都庁からの会見をテレビ中継させていた現職の都知事には、残念ながら初めからどんな野党統一候補でも勝ち目はなかったかもしれない。
さて、一人では経営者に立ち向かえない労働者は組合を作り団結して経営者に対峙する。
しかし個人事業主やフリーランスの場合は団結して大きな組織になるのは難しく、既存の個人加盟組織に入ることが現実的である。
いっぽう、「一党多弱」と言われて久しい現在の野党は、労働者とは異なりそれぞれに「党首」という城主がおり、たとえ力関係が明らかでもすんなりと団結はできないらしい。
戦国時代ならば、戦力で弱小藩を配下に治めながら勢力を増していくのだが、今の日本では残念ながら選挙によって自然淘汰されることを待つしかないのかもしれない、とオジサンは思う。