今回は、「色絵 菊蝶流水文 中皿」の紹介です。
表面
外縁部の一部の拡大
口縁の辺りをちょっと立ち上げて輪花とし、外縁には鋸歯文を陽刻しています。
裏面
高台内の銘:□内に青
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代後期
サ イ ズ : 口径;21.2cm 底径:12.5cm
なお、この「色絵 菊蝶流水文 中皿」につきましても、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介しているところです。
つきましては、その時の紹介文を次に再度掲載し、この「色絵 菊蝶流水文 中皿」の紹介とさせていただきます。
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*古伊万里ギャラリー175 伊万里色絵菊蝶流水文中皿 (平成24年10月1日登載)
いわゆる「菊花流水文」の中皿である。
厳しく観察すると「菊花流水文」には見えないかもしれないが、かなり手抜きして描いているからであろう。
高台内の銘は□の中に「青」である。
この銘は、「柴田コレクションⅣ」のP.275によれば、1840~1860年代に使用されたとのこと。なお、『「青」の字の月の部分が巾状のもの、あるいは「日」のものがある。』(同書P.278)とのこと。
分厚く作られ、丈夫一式で、いかにも普段使いの食器として作られたという趣きである。
それでも、口縁の辺りをちょっと立ち上げて輪花にし、外縁には鋸歯文を陽刻にするなど、造形には気を使っている。
「鑑賞の美」というよりは、当時、経済力をつけてきた一般大衆の庶民層向けに作られた、明るく健康的な「用の美」を示すお皿である。
江戸時代後期 口径:21.2cm 高台径:12.5cm
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*古伊万里バカ日誌105 古伊万里との対話(菊花流水文モドキの皿)(平成24年10月1日登載)(平成24年9月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なサラリーマ)
菊 水 (伊万里色絵菊蝶流水文中皿)
・・・・・プロローグ・・・・・
異常な程の猛威を振るったこの夏の暑さも、「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉どおり、お彼岸の到来とともにピタリとその鳴りをひそめ、文字どおり「彼岸」へと去って行った。
季節は急激に秋である。秋到来だ!
厳しい冬の寒さもだが、厳しい夏の暑さもまた老体には負担である。主人は、この暑い夏をやっと乗り切ったという安堵感と、やっと秋が来たという歓喜の思いから、秋の花の象徴ともいえる「菊」と対話をしたくなったようである。
それにしても、まだ「菊」は早いのではないかと思われるし、そもそも、主人の貧庫には、それにふさわしいような古伊万里が存在するのかどうかも疑わしいが、それでも、なんとか押入れから引っ張り出してきて対話を始めたようである。
主人: 先日まではものすごい暑さだった。老体には応えたよ。やっと涼しくなってホッとしている。
それで、急に「菊」と四方山話をしたくなり、お前に出てもらった。
菊水: 私はこの家に来てから8年になるんですが、お呼びがかかったのは初めてですね。プンプン(><)
どうせ、他に適当な古伊万里がなかったから、今回、やむなく引っ張り出したんでしょうよ!!
主人: まっ、まっ、まっ、まっ・・・・・そう興奮しなさんな・・・・・(~_~;)
これまで、なかなか登場させるチャンスがなかったんだ・・・・・。
菊水: 本当ですか・・・・・?
主人: 本当だとも。本当の本当だ。素晴らしい名品ならば、すぐにも登場させて対話をしたかったが、お前にはそれ程の器量がないからな~。ついつい遅れてしまった・・・・・(~_~;)
菊水: ん? なんですって・・・! やっぱり、本当の本音が出ましたね!
主人: まっ、その~~~(誰かさんの真似をしているのかとの陰の声あり)。本当は、そういうことだ。バレたか!
菊水: 心外ですが、遅ればせながらも登場させていただいたのですから許すことにいたしましょう。
主人: それはありがたい。これで、やっと対話が出来そうだね。
ところで、「菊」は、春の「さくら」に対して、日本の秋を象徴する花だね。それだけに、「菊」は「さくら」とともに日本の国花となっているな。
高貴な花とされ、昔から愛され、天皇家の家紋にまでなっている。
また、菊の花はいろいろにデザイン化され、また、他のモチーフとも組み合わされたりして使用されているね。
特に、「菊」に「流水」を組み合わせた「菊花流水文」は有名で、着物の文様や日本画の題材にもされている。もちろん、陶磁器にも描かれているね。
家紋では、菊の花を半分にし、その上半分の菊の花の下に水の流れを描いた「菊水」紋は楠木正成も使用したとも言われていて有名だ。
ちなみに、今、「菊花流水文」は、陶磁器にも描かれていると言ったけど、お前にも、「たぶん」、「菊花流水文」が 描かれていると思うんだよね。
菊水: 「たぶん」とは、どういうことですか? ちゃんと「菊花流水文」が描かれていると思うんですが・・・・・。
主人: 普通、「菊花」文と「流水」文がはっきりと描かれているんだよね。
お前の場合は、真ん中よりちょいと左上の金彩を施された大きな花は、どうやら「菊」の花らしく見えるけど、その他の赤い小さな花は「菊」の花なのか何なのか、よくわからないね。染付で描かれた花に至っては、雪輪文のように見えるよ。見方によっては、パンダかコアラの顔みたいだ。漫画チックだね。それにね、「流水」文らしきものは、大木が横たわっているみたいだよ。「流水」文なんだろうと思って見るから「流水」文に見えるのであって、何の予備知識も持ち合わせていない者が見たら何と見るだろうかね。
菊水: ずいぶんな酷評ですね(><)
主人: それは厳然たる事実だ。甘受せねばなるまい。
菊水: なぜそのようになったのでしょうか。
主人: 薄く厳しい造形にし、そこに、きっちりとした文様を手描きで描き、しかも色絵・金彩まで施してはコストが嵩むだろう。コストが嵩んでも、海外にどんどん売れ、国内富裕層にもどんどん売れる時代ならそれでもよかったかもしれない。しかし、輸出も不振になり、国内富裕層からの需要も少なくなると、生産者は、生活資金を得るため、販路拡大に努めなければならないわけで、マーケットを国内の一般大衆層に求めたんだな。
一般大衆層は、富裕層とは違って、高価な物は買えないわけだから、それにはコストダウンを図らなければならなかったわけだ。
お前が作られたのは幕末だから、その頃になると、コストダウンもかなり徹底されたとみえ、きっちりと描かないで手抜きをし、それらしく見えれば十分というようになったのだろうね。「たぶん」菊花流水文なんだろうと見えればよかったし、「菊花流水文」モドキであれば十分だったんだろうね。
菊水: ちょっと寂しい話ですね。
主人: まぁな。技術力が低下したという問題ではないんだよね。わざとやっているんだよ。需要と供給の経済原則に従っているまでなんだよね。時代の波だね。
でもね、お前には蝶が付加されているね。「菊花流水文」に「ハナを添える」ではなく「蝶を添える」というところかね(笑)。蛇足ということではなく、コストダウンに明け暮れる生産者の、せめてものイキな図らいなのだろう・・・・・。
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平安時代の貴族のかわりにパンダを置けば、平成の「曲水の」ですね(^.^)
流水を老木とみなせば、コアラでもいけますね。ダブル見立て(^.^)
こういう楽しめる品はいいですね。
このクラスの物なら、気楽に使うこともできますし、これに、何か料理を盛り、その後、この皿について、ああだ、こうだと話題にして楽しむことも出来ますよね。
以前、おば様連中が、このような器を使い、仲間内で話題にして楽しんでいた気持ちが分かりますね(^_^)
そんな時に、このお皿を使ったとしたら、たぶん、これはパンダだとか、曲水の宴だとかの話題になったのでしょうね(^_^)