Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染錦 祥瑞丸文写 中鉢

2021年04月14日 10時24分42秒 | 古伊万里

 今回は、「染錦 祥瑞丸文写 中鉢」の紹介です。

 

立面

 

 

見込み面

 

 

底面

 

生 産 地  :  肥前・有田

製作年代:  江戸時代後期

サ イ ズ :  口径;19.5cm  高さ;7.1cm  底径;9.0cm

 

 

 なお、この中鉢につきましたは、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介しているところです。

 そこで、その際の紹介文を次に再度掲載し、この中鉢の紹介とさせていただきます。

 

 

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       <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー137 古伊万里様式染錦祥瑞丸文写中鉢 (平成21年7月1日登載)

 

 

 

 華やかである。もっとも、今でこそ、口縁や丸文の中の金彩はずいぶんと剥落しているし、色絵も剥落したり薄くなっているが、恐らく作られた当初は、華やかさを通り越し、ドハデに近かったことであろう。

 しかし、200年近い時の経過とともに器体はやや古色を帯び、金彩はかなり剥落し、色絵も所々剥落したり薄くなってきたことに伴い、元のハデさを失い、落着いた美しさを備えてきているように感ずる。

 渋谷区立松濤美術館主任学芸員(:当時の肩書きです)の矢島  新氏が、「陶説」(639号・平成18年6月号)の「骨董誕生展によせて」の中で、

 

 骨董を「古びてさらに自然の味わいを増した器物の美しさを選び抜いて、仲間内で共感し合うこと」と定義するなら、・・・・・

 

と、「骨董」を定義しているが、この中鉢も、十分にその定義の要件を満たしているものと思っている。つまり、この中鉢は、十分に「骨董品」の仲間入りを果たしていると思っている。

 

江戸時代後期    口径:19.5cm  高さ:7.1cm  高台径:9.0cm   

 

 

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*古伊万里バカ日誌70  古伊万里との対話(祥瑞丸文写の鉢) (平成21年6月作成)

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  華 子 (古伊万里様式染錦祥瑞丸文写中鉢)

 

 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 今は、梅雨の真っ只中で、うっとうしい日々が続いている。ところが、今日は、珍しく、梅雨の晴れ間というところで、時おり陽が射しているようだ。
 そこで、主人は、梅雨のうっとうしさを吹き飛ばしてくれるような華やかなものと対話をしたくなったようで、それを求めて押入れ内を捜しはじめた。
 もとより、主人の家の押入れには、名品といえるにふさわしいような華やかなものは存在しないが、それでも、まあ、華やかさだけは備えている鉢を見つけ出したようで、さっそく対話をはじめた。

 


 

主人: うっとうしい日々が続くな~。でも、お前を見ていると、少しは晴れ晴れとするよ。

華子: そうですか。ありがとうございます。少しはお役に立てて嬉しいです。

主人: もっとも、お前は、最初はもっと華やかだったんだろうな~。口縁や丸文の中に金彩が多く塗られていたようだが、今ではずいぶんと剥落してしまっているね。作られた当初は、華やかさを通り越して、ドハデに近かったんだろうよね。経年劣化というか、長年の使用によって金彩がずいぶんと剥落し、落ち着きが出てきてちょうどよくなったというところかな。

華子: 金彩など剥落したほうが評価は高まるんですか?

主人: それは一概には言えないけどね。鑑賞陶磁の観点からすれば、保存状態もよく、使用擦れなどもなく、完全無欠なのが良い評価を受けるようだね。金キラキンは金キラキンのままのほうが。
 その点、「骨董」の場合は、若干見方が違うようだね。「骨董」の目利きとして有名だった「青山二郎」は、金彩をこすり落として悦に入っていたとか、、、、、。鑑賞陶磁からは、それは邪道だし、許されない所業だろうけど、、、、、。

華子: ところで、今、ご主人は、「骨董」、「骨董」って言ってますけど、「骨董」について何か定義みたいなものがあるんですか?

主人: まあ、一般的な定義とまでは言えないかもしれないけど、こんなことが言われているな。

 

 骨董を「古びてさらに自然の味わいを増した器物の美しさを選び抜いて、仲間内で共感し合うこと」と定義するなら、その大成者は青山二郎、確立した時期は昭和十年代、ということになるだろうか。
 青山の骨董は、室町時代のわび茶を遠い祖先に持ち、鑑賞陶器を父、民藝を母として生まれた。
 
「陶説」639号・平成18年6月号の「骨董誕生展によせて」(矢島 新(渋谷区立松濤美術館主任学芸員)(:当時の肩書きです)より

  

 ただね、私は、この論者に反論するようだが、「骨董は鑑賞陶磁を父、わび茶を母として生まれた。」と定義したいね。
 というのも、どうも「民藝」という概念がよくわからないし、青山二郎だって、徹底した選別を行っていて、美しくないものは斥けようとしているものね。この青山二郎の態度は「わび茶」に通ずると思うんだ。「わび茶」の場合も、徹底的な選別をするし、選別してもなおかつ適した物が見つからない場合は、茶碗なんかわざわざ割って、それを金継ぎまでして適した物を得ようとしている。

 

華子: そんなことまでするんですか。

主人: そうなんだ。「わび茶」は、侘び寂びの境地などというから、自然そのままの姿を楽しむのかななどと思うとそうではないようだね。前述のように、茶碗をわざと割って金継ぎをして楽しんだり、手頃な片口を茶碗に見立てて使用したり、一面に咲いた朝顔の花を一輪のみ残して他は全部むしり取って捨てたりと、かなり人為的・作為的なことをするね。相当に個性的で主観の強い美を創造していると思う。美にたいして能動的なわけだ。
 その点、鑑賞陶磁の場合はそんなことをしないね。例えば、首が微妙に傾いて作られた徳利があるとすると、その微妙な傾きかげんに注目し、それを愛でるわけだ。傾いた首を折って真っ直ぐに補修してやろうなどということはしないわけだね。存在している物をありのままに受け入れる。見る者の主観的な美的基準で受容するわけだね。美にたいして受動的なわけだ。
 「わび茶」が能動的な美の創造ならば、「鑑賞陶磁」は受動的な美の発見というところだろうか。

華子: そうしますと、「骨董」はその中間というところでしょうか。

主人: そうかもしれないね。「骨董」は、能動的な美の創造にまで進むこともできるし、受動的な美の発見にとどまることもできるわけだ。さしずめ、金彩をこすり落としたり、呼継ぎをした器を愛でるなどという行為は、能動的な美の創造の側面を示しているのだろうね。

華子: 話は変わりますが、私は「祥瑞丸文写」とされていますけれど、祥瑞にはこのような丸文を描いたものが多いんですか。

主人: 結構多いね。祥瑞は、当時の茶人が明末・清初の中国の景徳鎮に茶道具や懐石道具として特注して作らせたものらしいが、その中に丸文を描いたものは結構多いんだよ。
 その後、その丸文は、よほど日本人に愛されたらしく、繰り返し繰り返し日本国内で写されているんだ。

華子: そうしますと、私は、当時の茶人の特注によって作られたオリジナルの祥瑞ではありませんので、能動的な美の創造の結果によるものではないわけですね。

主人: そうだね。

華子: また、私は、日用品として作られたものでしょうから、鑑賞陶磁というような立派なものでもありませんよね。

主人: まあ、そうだね。でもね、お前のことは、私が、私の主観が、お前の美を認め、多くの中から選別したんだ。十分に鑑賞にも耐えられると思ってね。それに、金彩なども適度に擦り減っていて、私が故意に金彩をこすり落とさなくとも「骨董」の価値を既に備えている。お前は、十分に、「骨董品」だ。「わび茶」を母とし、「鑑賞陶磁」を父として生まれた「骨董品」だ。 

華子: なんか無理にこじつけたような気がしますけど、、、、、。

主人: ハハハ、、、。バレタカ。


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2 コメント

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Dr.Kさんへ (遅生)
2021-04-14 11:18:22
これだけたくさんの色絵丸紋を散らした器も稀ですね。やはり祥瑞を意識しているのでしょうか。茶陶で騒がれた意匠が、こうして庶民の器に施されたのにも感動します。
骨董美の哲学談義に力が入るのも、ムベなるかなです。(^.^)

私の場合、「仲間内で共感し合うこと」の難しさにため息をつきつつ、「それでも地球は回る」と自分に言い聞かせることの繰り返しでここまで生きながらえてきました(^^;
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遅生さんへ (Dr.K)
2021-04-14 12:21:10
>茶陶で騒がれた意匠が、こうして庶民の器に施されたのにも感動します。

感動してくれてありがとうございます(^_^)

これこそ、この中鉢が、「仲間内で共感し合うこと」に仲間入りしたことになりますし、立派な骨董品の仲間入りが出来た証拠ですね(^-^*)

確かに、なかなか、「仲間内で共感し合うこと」は難しいですよね。「骨董」も、それぞれ、人によってジャンルが違ってきますし、なかなか、共感出来る仲間を見つけることが難しいですものね。
このような、ブログというような世界が広がって、随分とこの世界も広がったように思います(^-^*)
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