勤務している介護施設で、口の周りの筋肉を柔らかくしよう~!ってことで、時々「あいうえお」遊びをするんです
「僕の真似をしてくださ~い」って、大きく口を開けて、つまり母音を意識しながら「あいうえお」を言ってもらいます。日本語って面白いもので、口を大きく開いても、或いは口をすぼめたままでも全てのひらがなを言えてしまうんですよね。
高齢者たちに口を存分に開けてもらってひらがな全てを発音してもらいました。「は行」なんて、みんなまるでひょっとこのような顔になって「はぁ~ひぃ~ふぅ~へぇ~ほぉ~~~~」と、それはそれは楽しそうに、そして大きな笑いに包まれました
ある夜勤の時。一人のおばあちゃんと会話をしていました。このおばあちゃん、体が不自由で自分では歩くことも寝ることもトイレに行くことも風呂に入ることもできません。言葉もほとんど出ません。ただ、調子がいい時や気分が良い時には何やらモゴモゴ言葉を発しますがほとんど聴き取れません。ですから会話と言っても「今日も元気に遊んだね?」「あ~」「美味しくご飯食べた?」「あ~」といったのがほとんどです。この時も他愛のない話をしていたのですが、ふっと思いついて「あいうえお」をすることにしました。ちなみにひらがな全部をやる事は、疲れてしまいますし、残念ながら機能的に「あいうえお」と「(なぜか)まみむめも」以外は発音がなかなかできません。
「よし!じゃぁ、一緒にあいうえおをやろうか?」「あ~」
「あー」「あ~」
「いー」「い・・・」
「うー」「(口をモゴモゴさせて)お~」
「えー」「(口をモゴモゴさせて)えぉ~」
「おー」「(はっきりと)お~」
あとお以外は難しいんでしょうね、口の形を作るのに。それでも3度ほど一緒に声を出して終了。私はその場で雑用を始めたのですが、突然おばあちゃんが一人で「あ、い、う、え、お・・・」と言い始めました。それも2回
「すごいねぇ!ちゃんと言えたねぇ!」と私が喜ぶと、おばあちゃんは大きく口を開けて思い切り、満面の笑顔をしてくれました 認知症なので、今しがた起きた事などをすぐに忘れてしまうのが常なのですが、この時はご自分の中で一生懸命「あいうえお」を反復したんでしょうね。そして僕に向かって「できるよ~」とアピールしたのでしょう。
その晩、そのおばあちゃんはすやすやと眠りました。
いやぁ・・・嬉しかったなぁ。目頭が熱くなりました・・・。