皆さんこんにちは。この度は7millions公演「ホハバヲアワセ」出演/上演に際し、ご来場くださった方、応援激励コメントをくださった方、後方支援をしてくださった方・・・ありがとうございました。あらためて、無事に終演したことをご報告いたします。
あ、私。今回の舞台で俳優の加山到が演じた「富山菊雄」です。あ、とやまではなくと・み・や・まです。地元で工務店を経営しています。
お恥ずかしい話、数年前に長女が駆け落ち同然で家を飛び出しましてね。おまけに雇っている若い職人からからはパワハラって言うんですか?ってので文句言われたりして。それを機になんだか、こう・・・むしゃくしゃしたといいますか、嫌気がさしちゃいましてね。まぁ飲んだくれの毎日だったんですよ。そしたら工務店の経営がうまくいかなくなりましてね。 女房は口をきいてくれなくなって、イライラした私は顔を合わせりゃ人前だろうとなんだろうと怒鳴りまくって。で、女房はうちでの仕事がないもんだから、外へ働きに行って、下の娘も学校から帰って来るのが遅くなるわ、家での会話はライン・・・って言うんですか?携帯で短い文章を書くアレ。家族間のコミュニケーションがなくなりました。
私らが住んでいる町も20年前に比べて住人が半分以上少なくなって。やっぱり田舎の小さな町にいるより都会に出て行ってしまうんですよ。で、過疎化、高齢者ばかり残ってしまって。昔はねほとんどの家なんて鍵を閉めなくても安全だったし、みんな顔見知りだから、みんなが家族・身内の様なもんで。あ、特に「梅さん」ってのがいましてね。名物ばあさんというか、みんなが慕っていてね。いいことすりゃぁ褒めてくれるし、悪いことすりゃ叱ってくれるし。のん兵衛で毎晩のように外で飲んでいた私なんか、「飲みたくなったら家で家族の顔見て飲みな!」って手作りのお新香をくれたりね。女房も娘たちも、いや、住人の誰もがお世話になったんですよ。何かって言うと梅さんの家に集まって飯食ったり、お手製の鶏の唐揚げをごちそうになったり。これがまた美味いんですよ。夕食どきになるとみんな唐揚げをつまみ食いに梅さんとこに行ったりしてね。そこの孫娘に怒られたりして。「うちの夕飯のおかずを食べるなーー!」って(笑)。とにかく、梅さんは必ず誰かと一緒にいたし、一人ぼっちになる事なんてなかったんですよ。15年ほど前までは・・・。
ところがね・・・先日、高齢になった梅さんが病気で亡くなった時・・・孤独死だったんです。死後2日目に発見されて。しかも発見したのが新聞配達。いい訳なんでしょうけど、私ら住人もそれぞれ生活があったし、なんて言うか、忙しかったって言うか・・・梅さんだけに構っていられなくなっていたというか・・・いい訳なんでしょうかね、やっぱり。さっきも言いましたけど、町全体が寂しくなったっていうか殺風景というか、とにかく町の名物だったクリスマス時期に行われる冬祭りも結局廃止になって、寂しいもんですよ。それぞれの家庭でも親子の間がギスギスしちゃったりして、中年組と若者の間に溝ができた感じがあったりしてね。町も人も寂しくなったもんです。
梅さんの葬儀の後ぐらいに、行方不明だった孫娘が帰ってきたり、その親友の子も梅さんの死を聞きつけて帰ってきたり、おまけに訳のわからない探偵までも現れて・・・あ、その探偵によって行方不明だった孫娘の所在が分かったんで、まぁ感謝なんですけども。その探偵がまた偉そうにうんちくを並べやがってね。「町は死んでいる!死んでいるのは町だけではなく住人もだ!」とかなんとか。昔みたいに町を賑やかにするなら、まずは己を見直せみたいなことを言い放ちやがって、若者たちは「コイツ、変な宗教の教祖じゃね?」って思ったようです。
まぁ、でもその探偵や、梅さんの孫娘とその親友が登場したおかげで、住人たちの結びつきが少しずつ元に戻ったりして。親子間の誤解や確執も解けてきたって言うか。うちなんか女房に離婚宣言されていたのがなくなりましたから(笑)。駆け落ちして出て行った長女とその相手とも和解して、おまけに・・・おまけに私に初孫が生まれましてね。ひゃっひゃっひゃ。そして長らく途絶えていた冬祭りも復活して、最後はみんなで踊りまくりました。久々に町内が賑やかになったんですよ。ラスト・・・舞い降りてきた雪の中で踊るのは楽しかったですよ、ほんと。
あ、おしゃべりが長くなってしまいました。見に来てくれてありがとうと言うだけにしようと思っていたんですが。すみません。
「中年よ大志を抱け!」その探偵が私ら住人に突き付けたこの言葉こそ、今回のテーマでした。そしてタイトル通り「ホハバヲアワセ」ながら、これからも町を盛り上げていきますよ。そうそう、皆さんに見て頂いたこの町の物語を作り出してくれた7millionsって一座。これからも私らは盛り上げていきますよ。もちろん皆さんと一緒に。
ありがとうございました。
富山工務店社長 富山菊雄
追伸:ご観劇いただいた皆様。登場人物の名前にはすべて植物の名前が付いていたのに気づきましたか?うちが菊雄に小百合に柚葉。長女が茉莉花でその連れ合いが柾。まじめな町内会長が樹一で可愛らしい娘が葵。元ヤンのシングルマザーが芹奈で引きこもりの息子が蓮。元気で常に笑顔の新聞配達が藤次郎。亡き梅さんの孫娘が杏で親友が楓。そして探偵が柊一。杏や楓の友達で回想シーンに出てきたのが桜輔。 それぞれの花のイメージカラーを衣装の一部にしていたのは・・・気づかなかったでしょうなぁ。例えば私・菊雄は黄色のTシャツとタオルを着用していました
SNSで見つけました。見に来てくれた若者が描いてくれた私ら住人のイラストです。感謝感謝