公演後の余韻がまだまだ残っております。
本多一夫プロデュース『お年を召しませ! ~ケアハウス「ごきげんさん」の愛すべき日常~』、開幕・閉幕にあたり、多くのご来場者、ご支援、ご声援下さった皆々様に厚く御礼申し上げます
今回の作品は、作演出の龍尺千秋さんの実体験をもとに描かれた作品です。認知症を患ったお母さんを自宅で介護し、そしてその旅立ちを静かに見守りました。その間に多くの介護施設や職員と関りを持ったゆえに、劇中のセリフなどはまさに「リアル」でした。
また私を含め、普段は介護関係の仕事をしている出演者もおり、細かい動きや立ち振る舞い・・・車いすの動かし方、認知症老人の歩き方、衛生上の問題で職員は膝を床につけない、ご家族に”提案”はするけども”押しつけ”はしない・・・など、数々のアドバイスや意見交換を織り交ぜて作られていきました。また、舞台セットの装飾品は、ほとんどは私たちが稽古の合間に作ったのですが、一部には実際に施設に通われている方が作ったのをお借りした物も飾られていました。
物語は・・・ケアハウス「ごきげんさん」に、新しく入居してきた自力歩行のできない女性老人(演・小田和江)と娘(演・境ゆう子)の葛藤、認知症の祖父(演・とびちゃ)を持つ孫娘(演・南良桃子)の悩み、自宅が近いのに入居している男性老人(演・本多一夫)に優しく接する孫娘2人(演・得本綾/渡邉結宇)とその家族の問題。
私は「ごきげんさん」の施設長を演じました。介護福祉士(演・川﨑葉子)、介護士(演・そのだやすたか)、介護助手(演・勝木美子)、機能訓練指導員(演・染谷拓志)と共に、直面しているその様々な問題に苦悩しながらも温かく、そして前向きに見守ってきました。
私自身、普段は週に2日ほどデイサービスに勤務しており、過去にはグループホームに勤務していた経験があるゆえ、舞台に立っている自分が「演じているのか」はたまた「現実の職員なのか」と混同する瞬間もありました。
今回は、多くの介護従事者、介護経験のある方、今まさに自宅介護をしている方、これから家族を入居或いは通所させる施設を探している方々が観に来てくださいました。 皆、ご自身の現状と照らし合わせて観劇したためか、涙を流された方も多かったようです。それだけ、介護問題は身近で切ない、そして重い出来事なのだと、あらためて認識させられました。
とは言え、そこは楽しく明るいことが大好きな作演出の龍尺千秋さんと出演者たち。来場されたお客様を「ごきげんさん」の入居者に見立て、一緒に手の運動、フラダンスのレクチャーを受けて、「脳の活性化」をして頂きました 時にはアドリブにより来場者との掛け合いもあったりで、文字通りほんわかとした温かいムードになりました
あるお客様からの感想です。「介護、老いというテーマを明るく、そして愛をもって伝えてもらえた素敵なお芝居でした」
私個人的には、介護職に従事している方からの「(加山が演じた)施設長役。副施設長の私としては見習いたい」というご感想にホロッとしてしまいました。役者冥利に尽きる言葉です。
まもなく90歳になる「下北沢・演劇界のドン」本多一夫さんも毎日元気に出演 楽しそうな表情で決め台詞を発しては、お客様から大きな大きな拍手を頂きました。そして「あと10年は、舞台に出る!」と決意も新たにされていました
実は、私は自身、このひと月はちょいと身体的にしんどい状況でした。俳優として”するべき仕事”がなかなかできず、微量ですが安定剤を処方され服用。その主治医もわざわざ様子を見に観劇に来て下さったほどでした。それでも最後まで務められたのは、やはりスタッフや共演者の存在があったからでした。今後は「自分の身体」と相談しつつ、少しでも長く俳優を続けていきたいと思っています
あらためて・・・ありがとうございました