<長文御免>
あらためまして。
7millions結成10周年記念公演「㏌2021 なにはともあれ夏は来る『セカンドハウス』」
公演全日程を無事に終えることが出来ました。
服役した過去、家庭での諸問題、LGBTで悩む人、自家栽培で地域コミュニティの形成を模索する人、詐欺事件や池袋暴走交通事故を彷彿とさせる事件に関わった人、現代社会の先端を行く配信動画に傾倒する人。これら様々なバックボーンを持った癖のある人間たちが集まる今どきのシェアハウス。 まさに「今」を描き、「今」に切り込んだ物語でした。「今」だからこそ、見た人にはスッと感情移入ができたようで、かなりの反応があったようです。
この作品への出演オファーを頂いたのが2月に入った頃。世間ではコロナワクチン接種のニュースが流れ始め、「4月ぐらいには高齢者の接種完了。以降ワクチンの輸入量も増加し、全国民は早急に接種を受けられるだろう」との予測が報道されていました。ならば6月末には自分たちも接種が終わっているだろうから、とりあえずは安心して舞台作りができるだろうと、劇団側とも話し合いオファーを受けました。
しかし。そう、しかしです。しかし・・・でした。国や行政による感染対策やワクチン接種状況、緊急事態宣言は・・・以下略。
6月中旬。出演者による顔合わせ/稽古初日の2週間前から、劇団からは毎朝の検温・報告が義務付けられ、不要不急の外出や会食を控えてほしいとの通達もありました。劇団によって用意された消毒液、除菌スプレー、体温計、うがい用紙コップを使用してから稽古場に入りました。稽古場は決められた場所ではなく、日によって違う場所を借りているため、劇団員はこれら消毒用品を常に携えて移動しているわけです。
稽古場に入るとこれまた劇団員によって、使用する机・椅子・座布団・小道具など備品が消毒が施されています。「消毒作業は劇団員がやりますので、皆さんは絶対に手伝わないでください」。彼らは心を鬼にして客演(劇団員以外)に厳しく制限をしました。稽古後の後片付けの際も同様。消毒用品と合わせて小道具全てを劇団員が持ち帰る毎日。その量たるや、大きなカバンやスーツケースを持ったまるで旅行に行くような出で立ち。「出演者に感染者を出さないためには、まず自分たちがきちんとしなければ・・・」との思いが強くありました。
そんな劇団員たちの強い思いを受けて、客演メンバーもいつもは楽しみな飲み会を一切することはなく駅に向かい、飲食店で楽しそうに飲む人たちを横目で見ながら家路につく毎日でした。もちろん稽古中はマスク着用。相手の表情が分らないままセリフを吐くのがこんなにむなしいのかと感じます。 マスクを外し相手の顔を見ながら演技ができたのは、開幕初日直前の最後のリハーサルでした。
本番を控えて劇場入りしてからも感染対策は厳しく、毎朝小屋入りする際には検温・消毒・記録記入は当然、休憩中にはのんびりと座っていた会場の座席も、スタッフにより丁寧に消毒されると、「もう出演者はここに座らないで!」。いざ舞台に立つ直前まではマスク着用、出番が終わると同時にすぐまた着用。手指の消毒、衣装の除菌。雑談をほとんどすることなく「お疲れ様、お先に」と帰途に就く日々でした。
「感染者が出たら即打ち切り」
この一年。稽古中や開幕してから公演が打ち切りになった団体がいくつもありました。観客の中に感染者が出た事例もありました。劇団は活動停止、会場を貸し出す劇場側も運営自粛。 「あ~、今日はセリフをとちった。明日頑張るぞ!」・・・その明日がないかもしれない、戦々恐々の毎日を過ごし、私たちはその「明日がないかもしれない」との思いを胸に舞台に立ちました。
そして迎えた最終日の夜公演のカーテンコール。出演者も裏方スタッフも観客を出迎えた受付スタッフも、全員が安堵感・達成感を味わい、そしてただただ・・・「感謝」。
『公演最終日から2週間経って、出演者・スタッフ・観客に陽性反応者が出なかったその時こそが本当の千秋楽』
今、小劇場界ではこう言われています。2週間後、本当の千秋楽を迎えられるよう願いつつ、まずは「セカンドハウス」終演の報告といたします。ご来場くださった方、配信サービスを申し込んでくださった方、後方支援・声援をくださった方・・・ありがとうございました。
追伸:配信サービスは8月6日まで視聴可能です(有料)http://7millions.net/?page_id=8856
娘役・森口美香ちゃん 一座の主宰/脚本/演出/俳優の鷲尾直人さん
イタル自作のヒラメとキンメダイ 感染対策により舞台から2m離さなければならなかった客席
客席の床まで消毒してくれたスタッフ
稽古中と本番動画配信での同じ場面
店頭及び劇団サイトで販売されているブロマイド