今ひとたび《ラスト・ワルツ》を! (ミレイユ・マチユー)

1998年11月07日 | 歌っているのは?
 ここ数日来風邪を引いていて,寝込むほどではないのだが,何となく身体がだるくて仕事がほとんど出来ない状態が続いていた。しょうがないので,家のなかでボーっとしながら本を読んだり片付けものをしたり,時には近所に買い物に出かけたりして,ゆっくりと回復の時を待つことにした。

 今日の午後は近所の本屋まで足を運んだ。もともと本屋になら何時間いても一向に飽きない性分なのだが,最近の傾向としては実用書,それも健康やらスポーツやら家庭医学やらの本を熱心に眺めることが多くなってきたようだ。『人間は140歳まで生きられる』なんてアヤシゲナ題の本をパラパラ立ち読みする。ナニナニ,ある種の漢方薬を飲めば目いっぱい長生きできるんだって。ふふん,そんなに生きたかないわい!

 けれど一方では,願わくば上野益三先生のように90歳を過ぎても現役で,そしてある日パッタリと老木が倒れるように死にたいもんだ,などと勝手なことを考える。

 ふと,BGMに《ラスト・ワルツ》が流れているのに気がついた。しっとりとしたストリングスが奏でる甘美な旋律が,静かな店内にゆったりと広がるように流れている。その心地よいメロディーは,唐突にも私をして遥か記憶の彼方からミレイユ・マチユー Mireille Mathieuの歌声なんぞを思い起こさせる(半病人の感性か?)

 
  舞踏会はもうじき終わろうとしていた
  私は去るべきか それとも残るべきなのか
  オーケストラがいよいよ最後の曲を演奏しはじめる
  その時 あなたが私の前を通り過ぎるのを見た
 


 確かそんな歌い出しだった。明瞭なディクション,クセのある訛り。まるで初級読本を元気におさらいするかのような張りのある歌声。プロヴァンスのイナカ娘まる出しのミレイユが,当時は決してお似合いとは申せぬシチュエーションを,それでも精一杯の思いを込めて熱唱していた(あたかも,都はるみが小椋佳を歌ったかのごときでね)。英語のモト歌の方はよく知らない(エンゲルベルト・フンパーディンクだったっけ?) しかし,フランス語の訳詞が,その優美なメロディーに実に自然に上手い具合に乗っかっているのに感心した。決して好みの歌手とは言えなかったが,その歌だけは素直に受け入れたことを記憶している。歌の最後は,こんな風に終わる。

 
  Ainsi va la vie
  Tout est bien finie
  Il me reste une valse et mes larmes.....

  そして 人生は過ぎゆき
  すべては終わってしまった
  あとに残されたのは
  一曲のワルツと 私の涙だけ.....
 


 ミレイユ・マチユーも,もうけっこうなオバサンでしょうね。今こそもう一度《ラスト・ワルツ》を唄って欲しい。本屋の店内で思わずふとシンミリしたりする,秋も深まる今日このごろであります(やれやれ!)
  
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