エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

花梨の花

2012年04月29日 | ポエム
花梨の花は晩春の季語であるけれど、往々にして春の盛りには花が零れてしまう。
淡いピンクの花は、煽情的でさえある。

エロチシズムの極致と言っても良いだろうか。
肉感的であり、攻撃的であったりする花である。








       花梨の花誰にも寄らず咲きにけり        野 人


       甘やかな花梨の花の火陰の色          野 人







この花は、ブラック・ホールのようにぼくを誘い、そして沈殿させていく。
沈殿したぼくの魂は、壊死していく。





       花梨の花に寄す



   その重さに
   ぼくはたじろいだ
   きみをかき抱いた
   あの記憶が
   まざまざと蘇ってくる
   と
   云うのだ

   そのあまりの重さは
   記憶の総量をかけて
   ぼくを苛む

   官能的な
   優れて官能的な
   うたかたの印象よ

   花梨の花の
   ただ一人の存在よ

   ぼくは改めて
   きみの膝下に跪こう

   なんの躊躇いもなく






秘すれば花。
上花の精神世界にぼくは耽溺していく。

限りなく耽溺していく。
俳句の575という限られた言葉で、どこまでこの狂おしい心象風景が表現出来るというのだろうか。

きみよ・・・秘すれば花なのだ。
きみよ、ぼくの前では秘する事勿れ。





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      荒 野人