エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

霜柱乃至薄氷

2013年02月18日 | ポエム
霜柱が見事であった。
朝・・・買い物の帰り、少し小高い場所にキラキラと光るものがあった。



寒さが続く今日この頃である。
霜柱がこれほど見事に輝くのは、久しぶりに出会った。

それは、殆ど感動であった。







「霜柱朝日取り込み佇めり」



「霜柱おおらかな音伸びる音」







子どもの頃、霜柱を踏み踏み小学校に通ったものであった。
この所の寒さが、幼い日々を思い起こさせてくれたのだ。

それはそれで有難い。
しかしながら、振り返ってみると最近はやはり暖かくなっているのだと思うと、少しばかり気がかりである。
「ワッ!綺麗」
とばかり言ってはいられない気もするのである。



誰かは知らねど、案の定踏みしめている人がいる。
この足跡のおおきさから言うと、大人であろう。
さぞ楽しかったであろう。

踏みしめると、キュッと音がして足が沈む。
靴底は泥だらけになるけれど、それもまた楽しい。

2月の句会で由利主宰が仰っておられた。
新雪を踏んで喜んだり、こうして霜柱を踏んで楽しいのは男の子と男の大人だけだ・・・と。
正に、然りである。

この由利主宰のお話を思い出すとともに、薄氷の張っている場所が想起された。
早速、自転車を漕いだ。







「薄氷や季節閉じ込み色豊か」







やはり張っている。
然も薄い氷の下には、落ち葉や御地椿の花弁が閉じ込められているのであった。

誰ともなく快哉を叫んだ。
この季節しか感じられない季節の贈り物である。




          荒 野人

木蓮の蕾・・・俳詩

2013年02月17日 | ポエム
木蓮の蕾がいよいよ膨らんできた。
開花を待つばかりである。
そんな季節になって来たという事であるけれど、ここのところ寒気が居座っている。

木枯らしが毎日吹き募り、南風が吹かない。
従って、いくら強い風が吹いても「春一番」にならないのである。



昨日、木蓮の蕾に寄せて「俳詩」の習作に挑んだ。





   習作・・・木蓮の午後、もしくは冬の躊躇い


 木蓮の産毛の淡さよ

 春まだ浅く陽の差したる

 午後のまどろみの中に居る

 硝子窓の内に居る

 日差しは溜まり続けるとやさしい

 木蓮の蕾の優しさよ

 意味も無く泣いた日

 春の躊躇いよ

 春隣にいる

 次の春隣に居られるだろうか





蕪村や朔太郎に及ぶべきも無いけれど、習作は続けてみたいものである。
だがしかし、安直に桝目を埋めてしまう恐れがある。
慎重に且つ対象を観察する視座を持ちたいものである。



ヒヨドリがミカンの木で遊んでいた。
寒さが厳しく、だがしかし日差しは暖かかった。




           荒 野人

浮寝鳥二羽

2013年02月16日 | ポエム
浮寝鳥は、いつもの鴨の池で白河夜船状態であった。
このあいだ、周りで工事をしている関係からだろう飛来数が減少したと書いた。



シベリアからエンヤコラと飛来して、わざわざ住環境の悪い池に居座る必要とて無い訳で、数が減るのは当然である。



この重機の先が鴨の飛来する池である。



鴨は怒っている!!
蓋し、当然である。
人間の都合で住環境の悪化を招いているのだから。

もう一度言う。
お役所のご都合主義には、ぼくもウンザリだ。



こんな状況なのだから、飛来して来てもこの池を見限って違う水辺を探すのだ。



しかし、この角度から見る限り鴨は、優しく穏やかな眼差しで人の行状を見ているかのようである。
鴨よ!すまぬ。

工事が一段落する時。
例えば、昼休み。
例えば早朝と夕方。

鴨は浮寝鳥となって、水面を揺れる。







「浮寝鳥時間流れず雲は落つ」



「水面なる重さに耐えて浮寝鳥」







実に穏やかな空間を演出しつつ、御休みになられている。
いや、お眠りになられているのである。

もうすぐ、温かさが増していく。
シベリア戻って、また飛来する時この池にお出で!
待っているから。



       荒 野人

マンサクの花

2013年02月15日 | ポエム
満作の花は、春告げ花とも言う。
山で一番最初に咲いて春の到来を告げてくれるのである。



色彩の妙を教えてくれる花である。
花弁が縮れているのも風情を醸し出す。

春一番の花であるという、矜持が伺えるではないか。







「マンサクの襞の深さや風過ぐる」



「マンサクの示す大気の脈浅し」







今年、初のマンサクを詠った。
気分が晴れていく。

蝋梅の匂いも味わった。
朧たけた花びらも愛でた。

マンサクを過ぎ去っていく風の声も聴いた。
あとは、梅の満開と桜である。



      荒 野人

名残雪

2013年02月14日 | ポエム
朝起きて、白銀の世界が広がっていた。
だがしかし、日差しと共に溶けていく様があって名残雪と知れるのである。



雪が闇夜で舞う。
なんというイメージであろうか。

しかも、その積った果てに、敢え無く脆くも溶けてしまう。
諸行無常の自然の移ろいである。



今週中にもう一度雪が降るかもしれない・・・と天気予報は告げている。
けれども、昨夜を以って名残雪として欲しいものである。
こうまでして、季節の押し合いをする必要があるのだろうか。

芽吹いたり、膨らみかけたりした蕾たちをそろそろ大切にしようではないか。







「降れば溶け小気味よいほど名残雪」



「然り乍ら忽ち溶ける淡の雪」







何回も名残雪を詠む楽しさはある。
けれど、春浅しや春逡巡からもう脱却してもよかろうと思うのである。



日差しが淡くても融け入る。
淡雪の証左である。

昼前から、風が強まった。
まるで春一番のようであったけれど、実は北風であった。
もう春一番が吹かなくては・・・ならないではないか!!

ぼくの身体も、その細胞も希求している。



         荒 野人