鋸・墨壼大全―ノコギリと墨壼の使いこなしを網羅した決定版 | |
クリエーター情報なし | |
誠文堂新光社 |
「忘れ物の墨壷」
大工さんが使う墨壷って、とっても魅力的ですよね。
道具としての用がありながら、各人が好きな彫刻をほどこしていて個性に溢れています。
昔の大工さんは自作していたといいますから、
その出来栄えを仲間同士で自慢しあったという気持ちもわかります。
さて、上の本を読んでいたら、
「忘れ物の墨壷」という話が出てきました。
なんだろう?と思って読んでみると、それは東大寺南大門の修復時に発見された墨壷でした。
南大門の桁の上に、数百年、調査によると鎌倉時代から置き忘れていたであろう墨壷が、最近の修復時に発見されたのでした。
昔の墨壷はほとんど残っていないので、この「忘れ物」の墨壷は、昔の道具を研究するのにとても価値があるそうです。
当時、(たぶん)置き忘れてしまった大工さんが、
自分の墨壷がないことに気づいたとき、
「あれ~、ねえな、どこいったんだ」
って、首をかしげている姿が浮かびあがります。
その姿はきっと現代の私たちが物忘れしてしまったときと同じにちがいありません。
そう考えると、鎌倉時代の人たちにもとても親近感を覚えます。
また、そのおっちょこちょいな大工さんのおかげで、
大工道具の歴史の研究が進んだと思うと、
その大工さんはすごい功績を残しているともいえるし、
世の中面白いですね。