「自在コラム」にはコメントの書き込みやメールを通じてご意見をいただいている。先日、金沢市在住の知人からのメールでこんな意見が寄せられた。
政治家のインターネット
「『メディアのツボ』で、メディアのおかしいところいろいろお話しになっているますが、私も、インターネットが出現してからの既存メディアのあり方について疑問を持っています。例えば、馳(浩=衆院石川1区選出)議員の肩を持つわけではありませんが、馳サイトのトップに『金沢への3つの主張』として金沢への主張が掲載され、1週間ほど経っています。新聞やTVがどう取り上げるかと思っていたら、どこも取り上げません。自分たちが選びその活動をよく知りたい国会議員の言動を、たとえインターネットであってもを紙面に掲載し、論評を加えることがジャーナリズムの義務であると思うのですが…。せっかくニュースがあるのに、インターネットだから取り上げない。不思議な気がして、知り合いのメディアの方にいろいろ感想を聞いているのですが…。どう思われるのでしょうか」
馳氏は先月26日にファン1900人を集め、石川県産業展示館(金沢市)でプロレスからの引退試合を行った。相手の両足を脇に挟んで振り回す大技「ジャイアントスイング」を30回転も見せて、会場を大いに沸かせた。45歳である。メールにあった馳氏のサイトでの3つの提言は「危機感」「夢・将来構想(ビジョン)」「勇気・挑戦」。要約すれば、財政難であり危機感を持って、政令指定都市という器をつくり、学園構想などのビジョンを打ち立てよう、というもの。
石川1区(金沢市)選出の国会議員なので、提言はあって当然だろう。知人の問題提起は、既存メディアはなぜそうしたインターネット上で発した提言を取り上げないのだろうかと疑問に感じている。確かに、テレビのワイドショーでは、タレントがブログで書いた交際宣言などをよく取り上げている。また、新聞などでも事件を起こした容疑者や被害者の心中が吐露されたブログの内容を伝えるケースが最近増えた。とは言え、政治家のブログやホームページでの政策提言が新聞やテレビで取り上げられているかというと、希(まれ)だろう。
馳氏は文部科学副大臣である。その政治家が「学園都市」構想を進めようと提言していて、具体的な政策を盛り込んでいるとなれば、確かに、構想の実現の可能性やさらに構想の詳細について問えば、ニュースとして成立するはずである。読者あるいは視聴者の立場としても、馳氏の構想に耳目を傾けてみたいものだ。既存メディアが政治家のネット(ブログやホームページなど)に関心を示さないのは、ネットを個人メディアとしての位置づけではなく、パンフレットなどのPR媒体と同一視しているからかも知れない。
それでは、政治家のネットがマニフェスト(政策綱領)並みに注目されることはあるのだろうか。それはある。来年07年の参院選に向けて、インターネットの選挙利用を解禁する法案づくりが進んでいる。つまり、ネットが選挙に組み込まれる時代になるのだ。解禁の理由は、衆院選小選挙区での在外国有権者の投票を可能するためだ。政治家のネットに既存メディアが一目を置くようになるのはこのタイミングだろう。ネット表現の出来や不出来が有権者の投票行動を左右することになるからだ。
ところで、その馳氏が先週の8月3日、私のオフィスがある金沢大学創立五十周年記念館「角間の里」に。「暑い日が続くね」とウチワ4本を差し入れしてくれた。今年2月にこの記念館で学長と馳氏の対談(学内誌で掲載)があり、場所を覚えていただいたようだ。馳氏は軽四自動車の「タント」で市内を走り回っている。写真ではポーズまで取ってくれた。
⇒7日(月)夜・金沢の天気 はれ