自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★サンマの煙

2007年09月13日 | ⇒キャンパス見聞
 「お昼にサンマを焼きましょう」。金沢大学「角間の里山自然学校」の同僚の研究員が言い出した。ことしはサンマが豊漁で安いらしい。スーパーでは1匹100円だとか。さっそく、外で七輪コンロを据え、焼き始めた。

 円筒形の七輪なので、そのままだとはみ出てしまう。サンマを胴で2つに切り、頭の部分と尾の部分に分けて焼く。ウチワであおぐと、サンマの脂が炭火に落ちて、煙が立ち上ってきた。あたりに焼き魚のこうばしい匂いが立ち込める。

 気の利いたスタッフは大根をおろし始めている。脂が相当にあるので、ポン酢で食することにする。こうばしい匂いをかぎつけたのか、空にはトンビが円を描いている。ネコはいないかと横目であたりを見渡しながら、さっそくいただく。「脂がのっているね」とサンマ焼きを実行してくれた研究員にお礼を言いながら、身と骨をほぐしていく。

 この身をほぐす作業はナイフとフォークではできない。和食ブームで、欧米人も箸を持つようになったとはいえ、この焼き魚料理を食べるまでには手先がついてこないのではないか、などと考えてもみる。

 幼いころ、「魚をきれいに食べる」とほめられたこときっかけで、いまでも丁寧に身をほぐしている。「ネコまたぎ」と言われたこともある。ネコもまたいで通り過ぎるくらいに身を残さず食べる、との意味だ。ほめ言葉ではないが、そう言われても悪い気はしない。この魚の身をほぐす技術は年齢とともに磨かれ、今では、ゆでカニだとズワイガニで1匹5分間で「始末」する。話は随分とサンマからそれたが、カニだとそのくらい集中できるから不思議だ。サンマはカニに次いで2番目、ホッケは3番目ぐらいだろうか、集中できるのは。

 しかし、私などはまだ「甘い」。すでに他界したが、父親はご飯茶碗にその骨を入れ、熱湯を注ぎ、醤油を少したらして、すすっていた。「これが一番うまい」と。いま考えてみると、確かに晩酌をしながら、酒の肴にサンマをつつき、食べ終えて口直しに骨湯をすするというのは理にかなっているかもしれない。そんなことが薄々理解できるということは、父親に近づいたということか・・・。

⇒13日(木)夜・大阪の天気   はれ
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