自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★日本を洗濯-3-

2011年04月26日 | ⇒トピック往来

 節電ムードで夜がこれまでより薄暗くなった東京の街の印象を、知人がこう言った。「ようやくパリ並みになったじゃないか。これまでが明る過ぎたんだ」と。東京やニューヨークしかり、都市は膨張し輝度を競った。文明の象徴だった。今回は電力をテーマに考えてみる。

   、    「全国一斉」という発想を崩して見える可能性      

 石原東京都知事は、「節電」ではなく「無駄」を省けと主張している。そのヤリ玉に上げているのが自動販売機とパンチコ店だ。自動販売機は果たしてどこまで必要だろうかと問いたくなる。先日、能登半島の先端にある大学の施設に、ある飲料メーカーが自販機の設置を打診してきた。結局「近くに店があり、飲みたい人はそこで購入すればよい」との判断で設置を断った。空き缶の放置問題や、自販機そのものが原色で景観上もなじまい。一つ置けば、「当社も」と別の飲料メーカーも来るだろう。都知事の真意は、こうしてわずかな利益を競って不要不急のモノがはびこる日本の社会の悪しき断面を指摘したのだ、と考えている。

 話を「節電」に戻す。蓮舫・節電啓発担当大臣は「節約・倹約」を訴えている。しかし、今回の問題は節電よりむしろ「ピーク崩し」「集中排除」だろう。恐れられている東京のブラックアウト(停電)は、電力消費がピークに達した時であり、いくら節電を訴えても、ピーク時の電力消費量を抑えることができなければ意味がない。つまり、消費量が低い真夜中にあえて冷房を止めて寝苦しい思や、暖房を止めて寒い思いをしてまで節電する必要はない。もちろん節電するに越したことはないが、今回の問題の趣旨とは様相が異なる。

 個々の節電よりむしろ、政策的にどう電力消費のピーク崩しを行うかだろう。たとえば、最近は盆休みやゴールデンウイークの休暇日の選択の幅が広がり分散型となってきた。このため、JRの乗車率や高速道路の混雑も随分と平準化している。これに倣う。電力需要量は土曜と日曜、祝日が少ない。そこで、会社や製造業は週5日間を月曜から金曜の固定ではなく、土曜と日曜を取り込んだ選択制で操業し、電力需要を均(なら)すのである。つまり、「全国一斉」という発想を崩せば、電力消費量を抑えることができるのではないか。

 そもそも、電力需要のピークを生むのは「真夏のエアコン」だろう。そこで、消費電力が少ないエアコンや冷房効果を高めるペアガラス(複層ガラス)を導入する家庭はエコポイントをもらえるようにする。また、短期的には消費電力が少ないLED(発光ダイオード)照明を。長期的には電力網のスマートグリッド化は必要だ。電力の送配電網をIT化して、太陽光や風力発電を家庭や地域で生かしていく。こうした未来型の省エネの発想を政策として進めることだ。

 東西に長い日本では、真夏の電力消費は地域によってタイムラグがある。ところが、静岡県の富士川と新潟県の糸魚川付近を境にして東側は50Hz、西側は60Hzの電気が送られている。そこで、東西の電力を接続し、電力会社がいつでも電力の貸し借りができる体制をつくるべきだろう。もちろん、相当の工事費用はかかることは想像に難くない。

 菅総理は4月1日の記者会見で「すばらしい東北、日本をつくる夢を持った計画を進めたい」と述べ、津波対策のために高台の住居から海沿いの事業所に通勤する都市構想を例示した。被災地だけでなく、この際、日本を再構築する発想と政策を具体的に提示すべきだ。

⇒26日(火)朝・金沢の天気  はれ

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