自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★選挙の世論調査を読む

2012年11月22日 | ⇒メディア時評

 総選挙(12月4日告示、同16日投開票)に向けて、新聞各紙は電話による世論調査の結果を掲載している。20日付のローカル紙では、共同通信社が17、18日の両日で実施した「第1回トレンド調査」が載っていた。比例区の投票先は「自民23%、民主10.8%、維新6.8%、太陽1.0%」という数値だった。同日に同じく電話調査した朝日新聞の結果は「自民22%、民主15%、維新6%、太陽1%(小数点以下は四捨五入)」だった。ところが、これも同日に調査した毎日新聞は「自民17%、民主12%、維新13%、太陽4%(小数点以下は四捨五入)」と維新が民主を上回っているのである。

 3社とも自民が民主を上回る傾向は同じものの、維新の会が1ケタの朝日と共同、2ケタの毎日とでは数字の印象がまったく異なる。たとえば、総選挙でキーワードとなりそうな「第3極」について、朝日と共同では維新と太陽はこれからとのイメージだが、毎日だと維新と太陽は「第3極」として、すでに民主を凌いで自民と肩を並べているとの読み方になる。17日は、「太陽の党」が解党して「日本維新の会」に合流した日なので、調査する側にも多少の混乱はあったかもしれないと察するが、それにしてもこの数値の違いはどこからくるのか。

 この謎を解くカギは「調査の仕方」の違いによる。新聞社の世論調査は、インターネットではなく、電話、面接、郵送の3つの方法のいずれかで実施しているが、内閣支持率や緊急調査の場合は「RDD方式」と呼ばれる電話調査で行う。コンピューターで無作為に数字を組み合わせて番号を作り、電話をかけて調査する方法で、RDDは「Random Digit Dialing」の略。一般世帯が対象で、「○○新聞社ですが、世論調査にご協力いただけますか」と相手の了解を得て行う。「調査の仕方」の違いとは、尋ねる側(新聞社)が「比例代表ではどの政党に投票しますか」と聞いて、答える側(有権者)が「自民」「民主」「維新」「まだ決めていない」などと返事をするのを待つタイプ。もう一つが読み上げタイプで、尋ねる側が「今から政党名を読み上げますので、お答えください」と政党名を読み上げ、「その政党がいい」と返事を誘う。

 もう10年以上も前だが、私自身もテレビ局時代に電話調査を何度か行った経験がある。質問の文言のちょっとした違いや順番、選択肢によって、相手の反応は異なるものだ。たとえば、上記の「比例代表ではどの政党に」と問うた場合、「返事待ちタイプ」では、選択肢が少ない場合は政党名が出てくるが、今回の選挙のように政党が乱立気味の場合は意中の政党名がなかなか出てこないのでは、と察する。たとえば代表の「小沢一郎」という名は浮かんでも、「国民の生活が第一」と即答できるだろうか。あるいは政党名が長い「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」や、よく似た感じの「国民新党」「新党日本」だと迷ってしまう。返事待ちの場合は、やはり与党や野党第一党が数値的に有利ではないだろうか。逆に、返事を誘う読み上げタイプでは新興政党や少数政党には有利かもしれない。これは想像だが、今回の調査では、おそらく朝日と共同は「返事待ちタイプ」、毎日は「返事を誘う読み上げタイプ」ではなかったかと想像する。

 では、「返事待ちタイプ」「返事を誘う読み上げタイプ」の調査の仕方では、どちらの方が民意を引き出す調査方法とよいのだろうか。実際に投票場に足を運び、意中の政党があれば迷うことなく政党名を書くだろうが、投票場に来てでも迷っている有権者は多い。迷いがあると、「投票用紙に書きやすい」政党名を書いてしまうものだ。というふうに考えると、「返事待ちタイプ」の方がリアリティ(現実味)があるのではないだろうか。もちろん、この話は科学的な根拠があるわけではなく、思いをめぐらせただけである。

⇒22日(木)夜・金沢の天気  くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする