自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆人生の決断に「鶏の声」

2017年01月04日 | ⇒トレンド探査

   ことしの干支は酉(とり)、動物に当てれば鶏(にわとり)となる。中国では、鶏は夜明けを知らせる威勢の良い鳴き声から、吉兆をもたらすと言われているそうだ。日本でも、鶏にまつわる有名な神話がある。太陽神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)が、天岩戸(あまのいわと)という洞窟に引きこもり、世が闇夜になってしまう「岩戸隠れ」だ。他の八百万の神々(やおよろずのかみがみ)は天照大御神の気を引いて、洞窟から出そうとする。よく知られている立役者がアメノウズメの踊りだが、闇夜に鳴き声を上げて夜明けを知らせる「常世の長鳴鶏(とこよのながなきどり)」もひと役買った。

  鶏って卵を産むだけでなく、太古から神話にもかかわる貴重な動物だったのだと改めて思いながら、元旦に届いた年賀状(141枚)を読んだ。そして分類してみた。賀状に鶏のイラストで酉年を表現していものが57通、「酉」という文字表現が8通、鶏ではなく鳥類(ツル、トキ、不死鳥、ダチョウなど)で表現しているものが24通、酉とは関係のない「謹賀新年」「富士山」「日の出」「家族」などで表現しているものが51通、残り1通はなぜか豚だった。過半数の89通が酉をイメージした賀状であったことを考えると、干支は今でも賀状に欠かせない年始のあいさつ代わりなのかと思う。

   「鶏」と言えば、実は人生の決断を迫られた思い出がある。50歳のときにテレビ局を辞した。人生の折り返し点で、悩んでいるとき、ある政治家が私にこう言った。「ニワトリのように強制換羽(きょうせいかんう)をしてはいかがですか」と。初めて聞いた言葉だった。

   養鶏業者の間の言葉だ。ニワトリは卵を産み始めてから8ヶ月ほどで卵の質が落ちてくる。この時点で、絶食させる。毛が抜け、衰弱したところでエサを豊富に与えると、また、良質の卵を産むようになる。その政治家は彼なりの解釈を聞かせてくれた。人もまた同じ仕事を続けているといつか周囲が見えなくなったり、アイデアが枯渇したり、その延長線上に嫉妬、やっかみが出てくる。それは人生の劣化の始まりなのだ、と。その年齢が50ごろ。そのとき、「家族が大切…」と言いながら現状を続けるのか、収入減を家族に理解してもらい別の道を歩むのか、それぞれの選択ですよ、と。私の場合、結局後者を選んだ。それから12年、今彼には感謝している。

⇒4日(水)夜・金沢の天気   くもり
   

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