自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★涙の演説、荒れる会見

2017年01月12日 | ⇒メディア時評
  アメリカのオバマ大統領が昨日(11日)在職2期8年の締めくくりの演説を行った。次期大統領のトランプ氏はきょう12日、当選後初めての記者会見を開いた。その二人の様子が余りにも対象的だったので、感想を述べてみたい。

  オバマ氏はイリノイ州シカゴでの退任演説で、リーマンショックとその後の景気回復、キューバとの国交回復、医療保険制度改革(オバマケア)、イランとの核合意など政権の政策の実績を述べ、「Legacy(政治的遺産)」を強調した。

  ちょっと感動したのはこの一節だった。Our Constitution is a remarkable, beautiful gift. But it's really just a piece of parchment. It has no power on its own. We, the people, give it power - with our participation, and the choices we make. Whether or not we stand up for our freedoms. Whether or not we respect and enforce the rule of law. America is no fragile thing. But the gains of our long journey to freedom are not assured. 意訳すると、憲法は美しい贈り物だが、私たちが政治的に参加し責任ある選択をしなければ憲法はただの紙である。  

  本来、大統領の退任演説はホワイトハウスでするのが通例だが、今回オバマ氏の希望で、2008年大統領選で勝利演説をしたシカゴで市民を前に退任演説した。締めくくった言葉は、2008年と同じ「Yes We Can(私たちにはできる)」と、「Yes We Did(私たちは成し遂げた)」だった。この場所設定と締めくくりの言葉でも想像できるように、オバマ氏は「演出家」なのだ。自らのヒロシマ訪問、真珠湾への安倍総理の招へいもそうだ。演説中には涙をぬぐって見せた。役者でもある。

  一方、12日未明にあったトランプ氏の当選後初めての記者会見はテレビのニュースで見る限り荒れ模様だった。自身に不都合な情報を伝えてきたCNNテレビのリポーターからの質問を拒否する一方で、報道に手加減してきたテレビ局や新聞社には謝意を示すなど、メディアの選別を露わにした。このことを逆にCNNはどう伝えたか。12日付のCNNウエッブ版(日本語)は「ニューヨーク市内のトランプ・タワーで行われた記者会見では、メディアや政敵にも容赦ない批判を浴びせ、20日に就任した後も攻撃的なスタイルを変えない姿勢をはっきりさせた。」と記事で応戦している。

  そのほか記者会見では、20日の就任後は即座に医療保険制度改革法(オバマケア)の撤廃に乗り出し、メキシコとの国境を隔てる壁の建設を急ぐことなどが語られたようだ。ツイッターによる攻撃、「ツイ撃」から今度は本人の「口撃」が本格化しそうだ。

⇒12日(木)朝・金沢の天気    くもり時々はれ
  
コメント
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