自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆大学の存在価値、それは

2018年03月06日 | ⇒キャンパス見聞
    大学に勤めて12年目になる。いろいろな場面でこれまでよく質問された。「地域における大学の存在価値ってなんだと思いますか」と。私はもともと民間のマスメディアにいたので、あえてそのような言葉を投げかけてくれたのだと思っている。最初は正直言って言葉に詰まった。しかし、12年にもなると応えなければならない。

    「そうですね。私は金沢大学で地域連携コーディネーターという役割を担って12年目になります。この石川という地域を一つの価値ある研究フィールド、あるいは教育フィールドとしてとらえ、地域を活用して大学の研究力、教育力を伸ばしていく、そして、それを地域にお返ししていくことで地域の解題解決をはかる、あるいは新たな産業を興す技術を提供する。そのようなことが大学の使命、ミッションだと考えています」と。

    偉そうに聞こえるかもしれないが、地域に大学のリーダーシップというものがなければ、次の時代に地域はなくなるのではないかと考える。大学の研究力や教育力を上げるためにも地域連携や社会貢献が必要なのだと考える。社会は大きく変化してきている。たとえば、地域が人口減少や高齢化という問題に直面して、北陸では多くの市町は「消滅可能性都市」とまで言われている。社会の変化や技術の進歩など時代が大きく変化しているにもかかわらず地域が対応できていなかったということになる。むしろ、さまざまな課題に大学がイニシアティブを発揮できなかったということに等しい。

    地域の未来像を描きながら、大学が真剣に地域とタイアップすることが今ほど求められている時代はない。こんなランキングがある。日経新聞が発行する「日経グローカル」で発表された「大学の地域貢献度ランキング2017」で、国公私立大学の総合1位は大阪大学だった。同大学は文部科学省の「世界トップレベル研究拠点プログラム」(WPI)にも採択された屈指の研究大学だ。その大学が、研究だけでなく地域貢献においても、確実な成果を挙げているのだ。関西における存在価値として、多様な人材養成、世界的な研究そして地域との連携を深めている。見習いたい。ちなみに金沢大学は総合6位だった。
    
    根っ子にもう一つ大きな問題がある。大学の価値は教育力や研究力、専門性なのだが、一般的な評価はまったく異なる。その基準は偏差値が目安になっている。そして学生たちは3年も終わりになれば、就活が始まる。リクルートスーツに身を包んで会社の人事部の門をたたく。4年間の学びがいつの間にか3年間に「短縮」されている。日本の大学の在り様は果たしてこれでよいのかと考え込んでしまう。

⇒6日(火)夜・金沢の天気    くもり
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